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信濃町駅周辺のカフェやレストランも、満席のお店ばかりで、二人はしばらくの間、外苑周辺を彷徨っていた。
「美花さん…………ずっと歩かせたままで、すまない」
「ううん……大丈夫だよ。都内は滅多に来ないし、歩きながら街の風景を見るのも楽しいし。ただ散策するだけでも楽しいって思うの、私、初めてかも……」
美花の言葉と同じような気持ちを抱いていた圭は、クールな目元を微かに見開かせた。
こんな言葉を彼女の口から聞いたら、もしかして美花も…………と思ってしまう圭。
淡い期待を持ちつつ、ようやく空いているカフェを見つけた時は、既に十四時を回っていた。
腰を落ち着かせ、ゆったりとした気持ちでランチを済ませた二人が、カフェを出た時には十五時半になろうとしていた。
「ライトアップ開始まで、あと一時間ほどだな。どうする?」
「また、銀杏並木の下に行きたいなぁ」
「了解。じゃあ、戻ろう」
さり気なく、圭が白皙の手を取ると、美花が、ほんの少しだけ握り返してきた。
(ヤバいな…………。手を握り返されたら……俺……)
彼の中に燻る微量の期待感が加速して、徐々に大きく膨らんでいく。
美花を見下ろすと、陽光に照らされている明るい艶髪に触れたい衝動に駆られてしまった。
既に日は西に傾き、銀杏の木々と周辺のビルが茜色の陽光に照らされ、黄金色に染まっていた。
この時間でも、並木の下は多くの人で賑わい、恐らくライトアップを待っているのだろう。
圭と美花は、スマートフォンのカメラで、日中よりも深みのある色に染まった銀杏並木の写真を撮りつつ、互いに気付かれないように、圭が美花を、彼女は彼の写真を銀杏の木と一緒に切り取っていく。
「なぁ、美花さん」
「ん? おにーさん、どうしたの?」
圭が、撮影した写真を画面で確認している美花に、歩み寄った。
屈託のない笑顔を見せる彼女に、圭は照れ臭い表情を覗かせながらも、ポツリと零す。
「…………せっかくだし、一緒に……撮らないか?」
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