ガチャリと扉が開く。
ダリルは普段の客に対してわざわざいらっしゃいなどとは言わない。それは本来なら自分の客ではないからだ。
だがそのままトコトコと自分の前に現れた人物を見て、そうではないと知る。
「お前が来るとは、な。ずいぶんと久しぶりだな。元気か、とは聞く必要はなさそうだな」
その人物は身長は140cmほどで二重のぱっちりとした目と細い眉、小ぶりな鼻と小さめの口は可愛くハツラツとした印象で、ショートカットで内巻きの髪は銀色の艶を持つ白髪。
山伏のような服装はこの来客が好んで着ているものである。
「うん。そうだね、お久しぶり、ダリルさま。マイは元気だよ。今日はね、お願い、あって来たの」
「お願い? お前の願いなら聞くが、せっかくここまで来たんだ。茶でも淹れよう」
ダリルが自らそう申し出て対応する相手は少ない。それだけこの少女を大切に思っているという事だ。
「ありがと。山のもの、以外は、本当に、久しぶり。マイ、嬉しいな」
山伏姿の少女はあまり話すのは得意ではないようで、一言一言確かめながら話している。その顔は本当に嬉しそうで、少女趣味の疑いのあるビリーならミーナとの間で揺らぎそうなほどだ。
やがてテーブルに置かれたカップには黄金色の華やかな香りの紅茶に一枚の花弁が浮かべられている。
「ありがとう。とても美味しいよ」
少女は口をつけていない。手にも持っていないのに、紅茶はその量を減らしている。
「久しぶりに訪れた友人の頼み事。聞かせてくれ」
その様子を見ていつになく穏やかな表情のダリルは本題に入るよう促す。
「うん。マイね、ヒト拾ったの。でも、置いておけない。だから連れて行って、欲しいの」
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