「手、放して」
「え?」
「シてあげるから」
満月の申し出に、ゴクリ、とわかりやすく生唾を飲む。
俺は素直に彼女のショーツから手を抜いた。
汚れていない方の手で、彼女のコートを腕から抜いた。
満月は振り向くと跪き、俺の緊張を咥えた。
いきなりの快感に、下腹部に力を入れる。
それでも、不意打ちに声が漏れた。
「う……ぅ」
視線を落とすと、俺のモノが彼女の口の中を出たり入ったりする様が飛び込んできて、実際の快感と視覚からの快感が同時に脳も身体も麻痺させる。
「みつ……」
満月が俺のを咥えたまま、視線を上げる。当然、俺と目が合った。
「やば――」
気を緩めると、即座に達してしまいそう。
裏筋に舌を這わせながら吸い付かれると、言葉通り腰砕けになる。
「満月……っ!」
尻から背骨をせり上がり、脳まで突き抜けるような刺激を離し難くて、思わず満月の後頭部に手を添え、自らも腰を振る。
付き合っている時に里奈に拒まれて以来、フェラなんて何年振りか。挿入とは違う快感に、しかもそんなことをしそうには見えない年上の、冷静沈着で近寄りがたい空気を纏った黒髪美人にもたらされる快感であることに、思考が停止する。
ヌチヌチと淫猥な音と共にもたらされる絶頂までのカウントダウン。
このまま、彼女の唇から己の精が溢れる様を見たい衝動と、彼女の胎内の奥深くに注ぎたい欲望と、その後に待ち構える後悔や気まずさなんかが脳内に渦巻く。
「で……るっ――!」
背筋が痺れ、身震いすると同時に、俺は彼女の肩を押し離した。
満月が半裸で、柔らかな絨毯の上に尻をついた。
温かな満月の口内から放り出されたオレは、瞬時にギュッと身を強張らせ、勢いよく発射した。
その瞬間に両手でオレの口を覆うことに成功し、彼女の口も部屋の絨毯も汚さずに済んだ。
「出しても良かったのに」
肩で息をする俺に、満月が言った。
その、飄々とした物言いに、何だか胸の奥がチリッと焼けるような痛みを感じた。
「次は……出す」
俺は大きく息を吸い込み、ベッドサイドのティッシュを引き抜き、手を拭いた。それでも、ベトベトする。
「次……」と、満月が呟いた。
俺は洗面所で手を洗い、彼女の元に戻った。
満月は俺が破いたストッキングを脱ごうと、悪戦苦闘していた。
「仕事は順調?」
敗れた繊維を足から引き抜きながら、満月が聞いた。
「ああ。人手を増やすために保険関係を整えたり、法人化を検討したりで、業務以外の仕事が増えたけど」
「大事なことよ」
満月は脱いだストッキングをゴミ箱に放る。
「個人事業主って言えば響きはいいけど、業界が業界だから信頼されないことも多いでしょう? まだギリギリで現役の年配者には、ちゃんと就職せずにフラフラしていると思われそうだし。実際、うちもフリーランスのエンジニアと契約を交わしたことがあるんだけど、年配者には派遣社員だと思われてたみたい。もしくは下請け? とにかく、いいようにこき使われて、期間満了前に来なくなっちゃったわ。連絡も取れず、それっきり。それから、フリーランスとの契約はご法度になったの。うちの会社が古い体質なのも事実だけど、そういった会社はまだたくさんあるし、そういった会社こそあなたが売り込むべき相手でしょう?」
生足でベッドに腰かけるエロさとは相反して、彼女の表情は真剣そのもの。そのアンバランスさが、下半身にクる。
俺はベッドに上がり、またも背後から彼女を抱き締めた。
「満月の会社って、未だに紙に印字するタイプのタイムカードを使ってたりする?」
耳朶を食み、無遠慮に両手で胸を揉み上げる。さっき乱したシャツの裾から手を忍ばせ、ブラジャーのホックを外す。
「さすがに、それはね。けど、打刻システムはしょっちゅうエラーを起こすし、上層部のおじさんたちはしょっちゅうカードを押し忘れるし。なのに、打刻修正の仕方を一向に覚えなくて、手書きのメモを私の机に置いていくの。ま、覚えないのは打刻修正の仕方だけじゃなく、タブレットの使い方もだけど」
「それは、ご苦労様」
シャツのボタンを外し、彼女の腕から引き抜く。しがらみのなくなったブラジャーは、放っておいてもするりと落ちた。
満月の背中にキスを落とし、身体を抱き込むように腕を回し、硬くなった胸の頂を指で摘まむ。
「社員証を感知して、自動で打刻するセキュリティーゲートを設置するとか?」
「その必要性を説明して、理解させ、承認を得られる頃には、人類の体内には出生時にICチップが埋め込まれてるかもしれないわね」
「そんなに!?」
ははっと笑い、それでも俺の手は彼女への愛撫を止めない。
片手を胸に残し、もう片手で生足を弄る。
「おじさんたちには必要ないもの。タイムカードを押し忘れたら、出勤時刻を書いたメモに自分の判子を押すだけで、誰かが修正しておいてくれる。ゲートに何百万も何千万もかけるくらいなら、打刻修正要員を雇った方がいいって思うような思考回路の持ち主よ。お茶を淹れるのは女の仕事、って未だに本気で信じてる人種だから」
「よく、そんな会社にいるね」
ショーツをずらしてぬかるんだ蜜口に指を差し込む。
彼女の身体が力む。が、指はすんなりと飲み込まれていく。
「社長……は私より少しだけ年上で、古い体質を変えようと頑張って……るの。そういうの……そんけ……いして――っ」
彼女の言葉が途切れ途切れになり、代わりにクチュクチュと水音が響く。
「社長が好きだったとか、言わないよな?」と耳元で囁くと、彼女は大きく頭を振った。
二本の指で膣内を抜き差ししながら擦り上げると、彼女が俺に身体を預けた。シーツを掴んでいた手が、俺のシャツの裾を掴む。
俺は膝を立て、足を彼女の閉じかけた足の間に割り込ませ、彼女の足ごと引き寄せた。
手の自由度が高まり、俺は更に激しく指を動かす。
「あっ――! は……ぁ、んっ!」
満月の腰が浮く。
イキそうなんだろうと、わかる。
さっきは俺一人がイカされたから、仕返しに彼女がねだるまでイカせたい。が、俺にもたれて顎を上げ、目を細めて息を弾ませる満月の恍惚とした表情を見ていたら、挿れずにいる俺こそが我慢を強いられていると思った。
「満月……」
彼女の肩を押し、四つん這いにさせると、手早くコンドームを装着し、一気に貫いた。最奥まで急発進のノンストップ。
「……っ!!」
満月の背が弓なりにしなる。
尻を突き出すような格好になり、俺は彼女の腰を両手で掴むと、ここぞとばかりに激しく腰を振った。
「ひゃ――ぁんっ!」
「満月――!」
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