二人の酒がかなり進んだ頃、アジの炊き込みご飯が炊けた。
涼平はアジの身をほぐしご飯と混ぜ合わせると伊勢海老の味噌汁と共に取り分けてくれた。
「さあどうぞ」
詩帆は目を輝かせて一口食べた。
「凄く美味しい! 涼平いい奥さんになれるわ」
「じゃあお嫁さんにもらって下さい」
涼平がふざけて言ったので詩帆は声を出して笑った。
それから二人は締めの料理を食べてから夜の食事を終えた。
詩帆は後片付けを買って出たが涼平も手伝うと言い結局二人で後片付けをした。
片づけが終わると涼平はコーヒー用のお湯を沸かし始める。そこで詩帆はハッと思い出しガトーショコラを取り出した。
詩帆がケーキを切り分けて皿に載せるのを見た涼平が不思議そうに聞く。
「え? いつ買ったの?」
「ううん、これは作って持ってきたの」
詩帆の言葉に涼平は驚いた顔をしている。
「お菓子も作れるんなら料理が出来ないっていうのは嘘だろう?」
「ううん、料理は本当に苦手なの」
「嘘だろう? ちょっと今度料理させてみよう」
「やだー、勘弁して―」
そこで二人が同時に笑う。
それから二人は淹れたてのコーヒーと美味しいケーキを楽しんだ。
詩帆が作ったケーキが美味しいと言って涼平はおかわりをした。
コーヒーを飲みながら二人はとりとめもない会話をする。
佐野がパーティーで知り合った綾と付き合っているという話を涼平がすると詩帆は驚いていた。
その他にも絵画コンテストの話や涼平が今手掛けている設計についての話等楽しい話は夜更けまで続く。
会話が途切れたらそれはそれで心地良い時間が流れる。
炎を眺めながらパチパチと燃える薪の音を耳にしているだけで心癒される。
小川のせせらぎは耳に優しく響き、だいぶ移動してしまった星座を探すのも楽しい。
そんな静けさの中に身を置いているうつに詩帆は急に眠くなってきた。酒を飲み過ぎたせいだろうか?
マグカップを両手で持ち、残り少なくなったコーヒーに集中しながら詩帆はなんとか眠気を押さえようと頑張っていた。
その様子を可笑しそうに涼平が見ている。
詩帆が漸くコーヒーを飲み終えたので涼平はそろそろ寝ようかと言って歯磨きに向かった。
そんな涼平を慌てて詩帆も追いかける。
涼平は焚火の火を消すとテントの中に入って行った。詩帆も後に続くとラグの上に寝袋が二つ置かれていた。
テントの中には小さなガスストーブが置いてありテント内を程よく暖めてくれていた。
その時涼平が言った。
「この寝袋二つを一つに合体できるんだ。俺は詩帆と一緒に寝たいからくっつけてもいいかな?」
詩帆は一瞬驚いたが覚悟はしていたので勇気を出して、
「うん」
と頷いた。すると涼平はホッとした様子で二つの寝袋を繋ぎ始めた。
そして先に涼平が寝袋の中へ入ると、
「おいで」
と言って詩帆を招き入れた。詩帆は恥ずかしかったけれど頑張って涼平の隣へ収まる。
その時涼平が静かに言った。
「俺は詩帆の嫌がる事はしないから大丈夫だよ。一緒にくっついて眠れるだけで充分だ」
涼平は詩帆に不安を与えないようあえてそう言った。しかし詩帆は涼平が無理して我慢しているのだとわかっていた。
詩帆の相手の心を読み取るセンサーは涼平が詩帆と本当の意味での恋人になる事を望んでいると察知していた。
切なくなった詩帆は勇気を出して言った。
「してもいいから」
詩帆の声がテント内に響いた。
涼平は一瞬「えっ?」という顔をしてから、
「いいの?」
涼平が聞き返すと詩帆はしっかりと頷いた。その瞬間涼平の抑えていた心に火がついた。
涼平は片腕で上半身を起こすと詩帆を上から見つめる。その瞳は愛情に溢れていた。
詩帆は恥ずかしくて思わずうつむく。しかし涼平はそんな詩帆の顎を指でクイと持ち上げるとゆっくりと焦らすようなキスを始めた。
涼平の熱いキスを受けながら詩帆は心臓のドキドキが止まらない。
自分から言っておきながら怖気づいてくる。しかし涼平のキスは徐々に激しさを増し耳、そして首筋へと移動を始めた。
詩帆は今まで経験した事がないぞくぞくした感覚に頭がどうにかなりそうだった。詩帆は涼平に愛されながら虚ろな目をテントの入口へ向けた。
換気の為に少し開いたテントの向こうには無数の星がキラキラと輝いている。その星々は眩しい光を放ちながら二人のテントを照らしていた。
(私はこの星空を一生忘れない)
詩帆は心の中でそう呟くと小さく喘ぎながら涼平による快感の波に静かに飲み込まれて行った。
コメント
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無数の星が煌めく静かな夜✨ テントの隙間からの 星の光に照らされながら、愛し合う二人⛺️🌠 ステキ....💝✨
テントの隙間から差し込む星の輝きを感じながら涼平さんと交わって…また涼平さんと詩帆ちゃんの記念日が増えたね😘👨❤️💋👨💞