テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「………これで、全部終わる」
痩せ細い男子高校生は、マンションのエレベーターの中で呟いた。
大切な友達も家族も失ってしまい、生きる希望なんてどこにもなかった。もう何も残っていない。
男は、エレベーターに乗って屋上へ上がり、飛び降りようと考えていた。
屋上に着く音がして、エレベーターの扉がゆっくり開く。
「えっ………?」
男は驚愕した。
開いた扉の先はマンションの屋上ではなく、薄暗く不気味な森の中だった。慌てて振り返るが、乗っていたはずのエレベーターが綺麗さっぱり無くなっていた。不思議な森に迷い込んだが、考えるのをやめた。
(どうせ消えるつもりだったんだ。もうどうでもいい…)
目の前を視界が遮るほどの大量のカラスが飛んできてそのまま飛び去っていく。
その先には、巨大な黒い屋敷が佇んでいた。どうでもいいと思いながらもいつの間にか屋敷の目の前に来て扉をゆっくり開けた。
「……なんだここ。真っ赤だな…」
赤黒い内装に一瞬びっくりするも、男は考えるのがめんどくさかった。
廊下をふらふらと歩いていると、曲がり角で小さな男の子とぶつかってしまう。
🐦⬛「わっ!?あ、新しいお客さんだ!僕はレイ。僕と一緒に遊んでお茶会もしよう!」
男の子は人懐っこい笑顔で男の手を引っ張った。ダイニングルームには3人の仮面を付けた従者がいた。2人の執事は体がボロボロで1人のメイドはロングネイルを付けていた。そんな不気味な仮面の従者に男は微かに微笑んだ。
(……最後に楽しむのも、悪くないか)
男は男の子に誘われるがまま、ダイニングルームの椅子に腰掛けた。
それから、飽きるまで男の子と遊び、お茶会をした。
しかし、楽しそうに笑いながらも男の子は冷ややかな目でどこか男のことを嫌に見えていた。
(当然だよな…。俺は消えようと考えてるんだし、嫌われたって仕方ない)
そして、屋敷に入ってから1日が経った夕方。
🐦⬛「あーあ。もう飽きちゃった……」
男の子はつまらなさそうにおもちゃを突き放した。熊のぬいぐるみや可愛らしい女の子の人形は壁に強く当たり、ボロボロになっていた。
男の前に温かい飲み物を差し出した。
🐦⬛「今日のおもてなし。このミントティーを飲んで」
「えっ…?」
🐦⬛「早く!!」
男の子の強く言った言葉で男は震え、急いで飲む。不思議な程に優しくて爽やかな香りが体中に広がり、ドロドロとしたものが無くなっていく感じがした。
「凄く、落ち着くな……」
最後の一滴まで飲み干し、心が安堵した瞬間。
「………っ、あれ、急に眠たく…」
視界がぐにゃりと歪み、男は床に倒れて瞳を閉じた。きっとあのミントティーに何か睡眠薬でも入れていたのかもしれない。
(まぁいいや。これでやっと…消える)
意識が消える寸前、男の子の冷たい表情と冷たいため息が聞こえた気がした。
従者が眠った男の元へ行こうとした瞬間。
🐦⬛「部屋へは運ばずここに置いといて」
冷徹なレイの発言で従者3人はピタッと動きが止まり、長い廊下へと歩き出す。
男の寝息だけが聞こえるダイニングルームでレイはポツリと呟いた。
🐦⬛「ゆりかごのミントティー…これで君は最後だね。つまんないな」
レイはそう呟き、男を見下ろす。部屋に入れる予定だった白い扉は赤く染まらず黒いモヤも出なかった。
レイはダイニングルームから出ていき、1つの部屋に入る。部屋の中にはルナがいた。
🦇「おかえり。どうだった?」
🐦⬛「ハズレ。今日は僕たちは変わらないみたい」
🦇「そっか…。じゃああの男に何か渡したの?」
🐦⬛「あのミントティーをね。ちゃんとぴったりだったみたい。つまんないの」
レイは唇を尖らせたが、不気味な笑みを浮かべたルナは言った。
🦇「でも、それも私達の役目。また新しい魂は来るから」
🐦⬛「けけけっ!それもそうだね。次はどっちなのかな?」
2人は楽しそうに目を細め、怪しく微笑みながら静かに言った。
🦇🐦⬛「──さぁ、始めよう」
To be continued
コメント
3件
うわあ、この不気味で美しい世界観…!エレベーターから異世界の森へ繋がる導入が一気に引き込まれました。絶望しきった主人公が「どうでもいい」と流されるまま屋敷に入っていく流れ、逆に不気味さが際立ちますね。レイの無邪気な笑顔の裏にある冷たい視線、「ゆりかごのミントティー」という名前の意味深さ…設定の細部に惹かれました。もう少し主人公の内面の揺れ動きが読みたい気もしますが、続きがすごく気になります!
ruruha
501
64