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(放課後、空き教室の一角。3人がそれぞれテストの紙を持っている)
蓮司(テストをヒラヒラさせながら)
「は〜い、本日も平常運転。赤点じゃないだけで天才って呼ばれる系男子です」
日下部(机に座って黙々と見直している)
「数学、平均より10点上……でもケアレスミスあったな」
蓮司
「真面目〜。ケアレスミスに気づけるのがケアフルな証拠ってやつか。
ていうかお前、“計算できる”顔してるよな。損得じゃなくて、ガチの数学の方の」
日下部
「褒めてるのか馬鹿にしてるのか、よくわからん」
蓮司(にやにやしながら)
「褒めてるに決まってんじゃん。
お前がたまに“x=誰かの苦しみ”とか解き始めるから見てて飽きねぇんだよ」
(遥、黙って自分の答案用紙を折りたたんでカバンに突っ込む)
蓮司(すぐに気づいて)
「お、遥くん、早っ。
それ、点数見たくなさすぎて一秒で封印するやつ?」
遥
「……数字って、嘘つかないよな」
日下部
「だから、信じられるじゃん」
遥
「違う。“正しい”から、逃げられないってこと」
(少し空気が重くなる)
蓮司(口笛を吹きながら)
「出たよ、“現実だけが真実”モード。
……ちなみに俺は国語が今回ヤバかった。漢字で“感情”って書くところに“混沌”って書いたらバツだった。
意味合い的に正解じゃね? 俺の中では完全に合ってたけど」
日下部(思わず笑う)
「そりゃバツだろ」
遥(ぼそり)
「……でも、わかるかも。“感情”って、混沌みたいなもんだし」
蓮司
「お、同志いた。ほら、こうやって俺らは点取れなくても“通じ合う”わけよ。芸術肌ってやつ?」
遥
「通じ合ってないけどな」
日下部(苦笑)
「全員、方向バラバラで通じてねえよ」
(3人の笑いが少しだけ重なって、静かな空気に戻る)
蓮司(ふと)
「でもさ、通知表のコメントって妙に偏ってない?
俺、ほぼ毎回“ムラがある”って書かれてんの。あれテンプレだろ絶対」
日下部
「俺は“真面目で努力家”だって」
蓮司
「でた、それ。
それもう“お前は言うこと聞くから将来も歯車な”って言われてんだよ、やんわり」
(遥は何も言わない。目線を落としたまま)
蓮司(遥をちらっと見て、あえて軽く)
「遥んとこ、“他者との協調に難あり”とかじゃね? もしくは“個性的な視点”」
遥(無表情で)
「“人を不快にさせる態度が多い。見直しを求める”……だった」
日下部(小声で)
「それ……教師が書くか、普通」
蓮司(声のトーンが少しだけ落ちる)
「わっる。
“人の痛み”って教えないとわからない教師が、偉そうに“態度”書いてんの、皮肉だね」
(遥は無言のまま、答案の端を指で千切り始めている)
日下部
「……でも、お前の“態度”って、俺は不快じゃない」
遥(ちぎってた紙を止めて)
「……それ、教師に言ってやって」
蓮司(微笑して)
「ていうか、お前の“態度”が不快だったら、俺たぶん今こうして話してないし。
俺、退屈が一番嫌いだからさ」
遥(少しだけ笑う)
「……なにそれ。褒められた気しねぇ」
日下部(ほっとしたように)
「褒めてないだろ、あいつは」