テラーノベル
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侑の自宅は、東新宿のエストスクエアのすぐ近くにある、箱型の大きな一軒家だった。
玄関を入ると広めの廊下が伸び、突き当たりにリビング、両サイドにはシャワールームと洗面所、トイレなどの水回り。
玄関ホールは瑠衣のかつての自室と同じくらいの広さだった。
「まぁ古い家ではあるが。とりあえず上がれ」
「おっ……お邪魔します……」
「手洗いとうがいは、そこの洗面所でやってくれ」
「はい」
侑が案内してくれ、二人で手洗いとうがいを済ませた。
リビングはキッチンも含めたら三十畳以上の広さになるのだろうか。
L字型の大きなソファーセットに、大型の液晶テレビ、六人掛けのダイニングテーブル、左手奥にカウンターキッチンが見える。
右手には重厚なドアがあり、恐らく防音室になるのだろう。その近くに階段があり、ここから二階へ行けるらしい。
侑がエアコンとテレビをつけると、ちょうど娼館の火事のニュースが取り上げられていた。
まだ鎮火していないようで、現場にいるリポーターが忙しない口調で実況している。
リビングの入り口に佇んだままの瑠衣がテレビ画面を見ると、顔が一瞬にして強張った。
「…………消すか」
侑は瑠衣を気遣い、テレビを消す。
「九條。そんな所に突っ立っていないで、中に入ったらどうだ?」
「はい。失礼……しま……す」
瑠衣は大きなソファーの隅に、ちょこんと腰を下ろした。
「とりあえず大分汚れたから、風呂にでも入るか。沸かしてくる」
リビングを出てバスルームへ向かった侑を見やり、一気に静けさに覆われたリビングルーム。
憔悴しきった瑠衣は、やたら広い空間を、ただ見渡す事しかできなかった。
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