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六月末、期末テスト前。誰からともなく「一緒にやった方が気が楽じゃね?」と声が上がり、結局いつもの五人が涼の家に集合した。
 リビングのテーブルは参考書と菓子袋で埋まり、柊がスイーツ巡りで仕入れたマカロンを誇らしげに並べる。
 「糖分補給は脳の栄養だから!」
 萌絵が頷きつつも、隼人のノートを覗き込み「その計算式、王子の暗号?」と冷静にツッコむ。
 「暗号じゃない、歴史のまとめだ!」
 隼人は眉を吊り上げる。
 一方、大地はというと——。
 「英単語って、顔で覚えられねぇかな」
 「無理」
 即答する柊。
 「顔?」
 と涼が首をかしげ、萌絵がニヤリと笑った。
 「じゃあハヤトの顔で覚えれば? love=隼人、とか」
 「やめろや!」
 隼人が真っ赤になり、柊が
 「え、likeは?」
 と悪ノリする。
 BLネタが火を噴いたのはそこからだ。
萌絵と涼はひそひそ声で実況を始め、
 「おおっと大地、プリンス隼人のノートを奪取!」
 「隼人大ピンチ、視線が甘いぞ!」
 二人の掛け合いはまるで腐女子ラジオ。
 夜が更けてもテンションは落ちず、数学の問題より笑い声が部屋を占領する。
柊が甘いココアを配り、隼人はため息をつきながらも、大地の解答に赤ペンを入れてやる。
 気づけば窓の外は薄明かり。
涼が「徹夜しちゃったね」と笑い、萌絵が「あれ? 何ページ進んだ?」と呟くと、
全員が同時に無言になり、次の瞬間どっと笑った。
 勉強の成果は怪しいが、
机に広がった落書きと笑い疲れた顔は、
たしかに青春そのものだった。