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体育祭の作戦会議も終わり、授業を受けて――ランチターイム!
今日は俺特製《ピルク丼》。……まぁ牛丼みたいなもんだけど、ワニ肉だからワニ丼?
それを作って……って、
「あ!?」
「どうしたのじゃ!?」
「ごめん……家に忘れてきちゃったみたい、お弁当……」
作ったのに!? 俺、なにやってんの!? ばかやろー俺!!
「な、なんじゃと……」
ルカがあからさまに肩を落とす。いや、ごめんて……
「うん、ごめんね? 今日は食堂にいこ?」
「……そうするのじゃ」
落ち込んでるルカをなだめつつ、久しぶりの食堂へ。
相変わらずの賑わいで、コックたちも忙しそうにしていた。
うんうん、俺も食堂嫌いじゃないよ? ただ……
「相変わらず視線を感じるのじゃ」
「そう……だね」
なんか、普段よりもずっとすごい視線を感じる……気のせいじゃないレベルで。
「取り敢えず早く済ませるのじゃ」
ルカは食券を押して、スタスタと行ってしまった。
俺も早く終わらせよ。えーっと今日は……
「やぁ、久しぶりだね」
「へ?」
背後から声をかけられて振り返ると――誰だっけ、この人?
「え、えっと久しぶり……です」
とりあえず合わせておくと、その人は嬉しそうに微笑んで、
「覚えてくれてて光栄だよ。もうひとつ、覚えててくれたらよかったけど……」
「えーっと……?」
「次の日からずっと待ってたんだ。ついに来てくれた」
あっ!
思い出した――!
俺に“初日ステーキ”をオススメしてきた人だ!!
……あーーー!! そういえば!
《アリスト科》の食事に誘われてたんだった――!
完全に忘れてた――!!
「あ、あの、ごめんなさい……」
「いいさ。だから今日は、いいね?」
う……俺が完全に忘れてたし、今さら断るのも申し訳ないし……ぐぬぬ……
「わ、わかった。友達に話してくるね?」
「うん。あの白い扉、あそこで待ってるさ」
「はい……」
取りあえず、人だかりを作ってピルク定食を食べているルカのもとへ。
状況を説明すると、ルカは小さくうなずいてくれた。
食べ終わったら先に教室に戻っておくそうだ。
そして、白い扉の前で待っていた“ステーキの人”のもとへ。
「よ、よろしくお願いします」
「うん、よろしく。ようこそ、《アリスト科》食堂へ」
ステーキの人が白い扉を開けてくれる。
二人で中に入ると、そこは小さな部屋。床には魔法陣、壁には魔皮紙が貼られていた。
その魔皮紙には《2名》と書かれていて、ステーキの人がそこへ魔力を通す。
「さぁ、此方へどうぞ」
「え、あ、はい」
キザったらしく手を差し出してきたので、俺も反射的に握り返す。
……いやいやいや、良いのかお前!?
中身男だぞ!? なんか……なんかこっちが恥ずかしいんだけど!!なんかごめんね!!
そのまま二人で魔法陣の上に立つと――
光があふれて、視界が真っ白になった。
【転移魔法】だ。
そして、視界が開けてくると――そこは、学校ではなかった。
まるでどこかの城の一室。
目の前には豪華な丸テーブル。そして対面に置かれた2脚の椅子。
どこからともなく、クラシックな音楽まで流れてきていた。
「では、どうぞ」
「あ……ありがとう」
ステーキの人が目の前の椅子を引いてくれたので、俺はおとなしく座る。
向かいには彼も座り、向き合うかたちに。
広い部屋。流れる音楽。二人きり。
男と女。
……いや、男と男。
なんじゃこの状況……!!
「まずは、乾杯からだ」
ステーキの人がテーブルに魔力を流すと、シュンと音を立ててグラスが2つ現れる。
中には、赤い液体。
なるほど、料理は【転送魔法】で来るのか。っていうか、これ……まさか……!?
「い、いいの? これって……お酒じゃないの?」
「学校には様々な年齢の生徒がいるからね。
もちろん、そのまま授業を受けてはいけない。
だからこの薬を飲んで、酔いを打ち消す。
――《アリスト科》だけに許された特別な薬だよ」
そそそそそそそそ……そういうことなら良いかな!?
飲んでも……いいよね!?
だって魔法の薬あるし!? 合法だし!? いいよね!? 飲んでも!!
(※アオイの大好きなもの:お酒)
「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ頂こうかな?」
「えぇ。乾杯」
「か、かんぱーい……!」
カチンとグラスが鳴り、唇をつけて――喉に流し込む。
まろやかで、フルーティー。
ジュースと思うほど飲みやすいのに、喉を通る頃にはフワッと広がる――アルコールの香り。
なにこれ……うまっ……!
うめええぇ……悪魔的だぁ……!!
「おいしい……」
「そして君のために、コースは僕が頼んでおきました。
まずは前菜――《サーズドグレンサラダ》。君のお口に合うといいのですが」
「い、いえ……こんなに高そうなもの、本当にいいのかな?」
目の前の皿には、キャベツとレタスをベースにエビ、カニ、そして何か赤い魚のお刺身が盛られていて、上から艶やかなソースがかけられていた。
……なんというか、すごくオシャレなサラダだ。
もちろん、この世界の素材だから正確な名前は違うんだろうけど――
例えるなら、“異世界版の高級シーフードサラダ”。
正直――うまそう。
てか多分これだけでめっちゃ高い。
「あなたのために、ですよ」
ステーキの人はニコッと優しい笑顔を向けながら、自然にすすめてくる。
……くっ、なんか、ずるいな。
「それじゃあ……いただきます」
もうここまで来たら――楽しんでやる!
そのまま、俺はランチのフルコースをいただきました!
おいしかったです!!(満点笑顔)
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■アリスト科専用食堂について
モルノスクールには複数の学科が存在するが、その中でも《アリスト科》は格式の高い育成機関として知られ、上流階級の子弟や特権を持つ者が多く在籍している。
そのため、彼らの生活環境も特別なものが多く――その代表が《アリスト科専用食堂》である。
通常の食堂とは異なり、この施設は**“転移魔法”を利用して場所を移動**し、別空間で提供される構造となっている。
この空間は、魔法陣と魔皮紙の連動によって任意の人数・時間を指定して開かれるプライベートルーム形式で、使用時には招待者と人数制限が自動的に記録される。
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■食事形式と料理の提供
《アリスト科食堂》では、料理の大半は【転送魔法】により提供される。
これは厨房から直接プレートに供給される形となり、席を離れる必要がない“貴族式フルコース”として提供される。
また、同席者が未成年であっても、酩酊を防ぐ特殊な薬(※アリスト科独自調合)が存在し、これによりアルコールの提供も許可されている。
このような一連の形式は、「魔法貴族社会における上流マナー」の一環として扱われており、アリスト科の生徒はここで立ち居振る舞いや会話術も学んでいるとされる。
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■補足:アリスト科への招待
アリスト科専用食堂は招待制であり、他科の生徒が使用するには、アリスト科の在籍者からの「同伴登録」が必要となる。
ただし、あくまで“もてなし”の一環であるため、階級差を感じさせるような発言や無礼はタブーとされる。
これを破った場合、アリスト科内での評価が下がるだけでなく、今後の招待権を失うこともあるという。(ただしアオイの場合は誰もが魅了される絶対美なので何をされても可愛く写り許される)