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クラス全員が残った放課後、俺はまた呼び出された。誰かが床に小さなコインを落としたと言って、探せと命じられる。無視したくても、視線が痛くて逃げられない。手が床に触れるたび、誰かの足が俺の背中を蹴る。
「おい、もっと必死に探せよ」と笑いながら手を出してくるやつもいる。
コインはすぐ見つかるはずなのに、指先が震えて、拾うのが遅れる。するとクラスの奴らは声を上げて笑う。
「こいつ、ほんとダメだな」
「見てるだけで面白い」
――笑い声が床に反射し、俺の耳の奥まで突き刺さる。拾って差し出しても、手をはじかれたり、わざと床に落とされたりする。俺は必死で拾い続けるしかない。
「お前、ほんと空気読めねえな」
「なにしても意味ねえだろ」
声が飛ぶたび、体が硬直する。何も言い返せない。言葉に出したら、さらに笑いものにされるだけだとわかっている。膝をついたまま、床に落ちたものを探し、拾い、差し出す。それを見てクラス全員が笑う。手の震えも背中の痛みも無視され、存在そのものが遊びの標的だ。
途中で、誰かが俺の肩を掴んで強く押す。倒れそうになりながらも、コインを握りしめる手を緩められない。さらに、手首や腕を軽く叩く、蹴る、肩を押さえつける――小さな暴力が繰り返され、笑い声が俺を包む。痛みと羞恥が混ざり合い、体が反応する。でも声には出せない。声を出したら、もっと酷いことになることを知っている。
「もっと早く拾えよ、役立たず」
「お前、なんでこんなに必死なの?」
言葉の刃が突き刺さり、頭がぐらつく。息が詰まる。必死に手を動かすけど、笑い声の圧力に押されて何度も止まる。動きが遅れれば、さらに手や足で突かれる。教室全体が俺を追い詰める一体となり、誰も手を貸さない。笑い声と足音に囲まれて、存在そのものが否定される感覚だけが残る。
最後に、誰かが「いい加減にしろよ」と言ったが、笑いの余韻は消えない。俺は膝をついたまま、拾い残したコインを見つめ、肩を震わせるしかなかった。必死で手を伸ばす行為すら、クラス全員の娯楽になっていた。存在を踏みにじられる痛みが、体の奥まで染み込んで離れない。