TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「言ったでしょ? 失恋したけど健気に仕事頑張る女です」

まったくわからん。いや、失恋したどうこう関係なく、仕事はがんばるものなのでは?

「僕から言うのもあれなんですけど」

「うん」

「藤原さんは、普通に仕事がんばってます」

「はぁ……」

唐突に褒められて、ぽかんとする。

「みんなも藤原さんを頼りにしてるし、仕事も丁寧です」

「……あ、ありがと」

「そのままで大丈夫です。何も心配しないでいつも通り仕事してください。ほんの少し、失恋した悲しみを雰囲気にのせるだけでいいと思います」「雰囲気に乗せる?」

「別れたかどうか、誰かに聞かれたら、『はい、そうなんです。ショックでしたけど……その分仕事がんばります。ニッコリ!』みたいな」

「うわー……あざとい」

「そんなに普段の藤原さんと変わらないと思いますけど。自覚なかったんですね」

「えっ?」

「いえ、何も」

しばらくはこの調子で。と言われて小さく頷く。

「そのうち噂の矛先が、風見さんと美濃さんに向くと思います。美濃さんにイライラがつのって、風見さんとギクシャクし始めたら次の段階です」

「つ、つぎ?」

「はい」

「それはどんな……」

「まだ内緒です。そのときにまた話しますね」

き、気になる。何度か彼に教えてとせっついたけど、頑として教えてくれなかった。

話をしながらも、いつもの倍はビールを煽った。久しぶりに飲んだせいか、だんだん目がとろんとして眠気に襲われてローテーブルに突っ伏した。

「藤原さん、ここで寝ないでください」

ゆさゆさと肩を揺すられる。大きな永井くんの手が温かい。

「……ねぇ、永井くん」

「はい」

「あのね、お願いがあるの」

「なんですか?」

霞んで朧げな彼の瞳を見つめると、吸い込まれそう。受けとめてくれると勘違いしてしまう。

「どうしても辛いときは、弱音吐いてもいい?」

「……いいですよ」

「美味しいごはん、食べたい」

「いつでもどうぞ」

溜めていた涙がぽろんとこぼれる。

伊吹と付き合っていたときは、とにかく自分ががんばらなくちゃいけなかった。

仕事で疲れていても、彼が遊びにくるとなれば慌てて夕食を用意して彼をもてなした。

休みたいとか、ゆっくりしたいとか、自分の思いがうまく伝えられないことがほとんど。

それでも幸せだと思っていた。彼に何かしてあげられることが喜びだったから。

今思えば、それもすべて自己満足だったように思える。

伊吹にとっては重たかったのかもしれないな。燎子はあっけらかんとしているから、その方が良かったのかもしれない。

「花音?」

唐突にそう呼ばれて顔を上げたら、永井くんの顔がすごく近くにあった。

思わず身をひこうとした私の腕を引っ張って、彼がぐっと口づけてくる。 長いまつ毛に、端正な顔。

蜜音の花が開くとき~復讐のためにイケメン後輩と夜のサブスク契約結びました!?~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

6

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚