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#オリジナルストーリー
ナルト大好き👑🤲
最近、私の主人が変わられた。
私、アンナ・ブラウンは主人であるイヴィル・ヴィルサレム様に仕えている。
そんな私の主のイヴィル様が大きく変わられた。
特にここ半年間はずっと努力をされている。
朝は魔法。
昼は剣術。
夜は読書。
全ての時間を一定のリズム通りにこなしている。
まるで、当主様の誕生祭に流れる綺麗な音楽のように。
しかも、ただでさえイヴィル様は頑張っているのに、努力をしている素振りを一切見せない。
それどころか、私のようなメイドに対しても気を遣って下さる。
かつてのご主人からでは考えられない。
私と大して年齢は変わらないはずなのに、立ち振る舞いは紳士そのものだった。
そんなイヴィル様に仕えられることを一人のメイドとして誇りに思う。
少し前のイヴィル様はとにかく人を見下す方だった。
なにかにかけて、私にお仕置きをしようときた。
大貴族のご子息だから、それが普通なのかと思っていた。
でも文句はない。私が今まで過ごしてきたところよりも明らかに快適な場所だったから。
そもそも私には行き場がない。
かつて、私は闇市という場所で生まれ育った。
闇市には私と同い年くらいの子が何人もいた。
そこではお茶の淹れ方から人の殺し方まで色々学んだ。
完璧じゃなければ、ご飯は減らされる。
できないお友達はどんどんいなくなる。
ベッドは硬い岩肌が当たり前。
そんなある時、私は失敗した。
人を殺しきれなかったのだ。
悪い子だから捨てられた。
大きなモンスター達がうじゃうじゃいる森の奥に……私は怖くてずっと逃げていた。
痛くて、辛くて、苦しくて……本当につらかった。
歩いている最中、限界を迎えて倒れた。
そんな私を拾って下さったのが、イヴィル様だった。
捨てられた場所はヴィルサレム公爵の領地だったらしい。
それが私とイヴィル様の出会い。
結果として、私はメイドとして置いてくださることになった。
不幸中の幸いだったのは闇市で学んだことをメイドになって活かせること。
だから、イヴィル様がどんなお仕置きをしようとも私の命の恩人であることには変わりない。
もしも何かがあったなら全力でお守りしなければならない。
私の命はとっくにあの森の中でとっくに息絶えていたのだから。
故に、報われるなんて思わない。
私の肉体が……命が……イヴィル様を守る肉の盾として砕け散るまでは。
そう思っていた。
それがある日突然、
「アンナ。俺は今から修錬場に向かう。ついてこい」
なんてことを言ったのだ。
聞き間違いかと思った。
それにイヴィル様は誰よりも魔法を馬鹿にしていた。
野蛮で、粗暴で、品がないと。
それなのに、急に修練所に向かったのだ。
しかも、あまつさえ魔法をいくつも展開して。
あまり魔法に詳しくない私でも、複数魔法を展開できるのはすごい魔法使いということくらいは知っている。
事実、公爵家で魔法の顧問をして下さっているフラム様も大層驚いていた。
イヴィル様は闇魔法の才能を隠しておられたのだ。
一般的に闇魔法は最弱と言わている。
私からしたら、魔法が使えるだけでもすごい。
それなのにキングストン家の執事であるサバトは、あろうことか私の主であるイヴィル様は馬鹿にした。
最弱の闇魔法しか使えないと。
それでもなお、イヴィル様はサバトを完膚なきまでに。
最弱と罵った魔法の前に、サバトの魔法は届かなかった。
それにサバトはとびきりの悪夢を見たらしい。
それも我が主人の魔法の力で。
でも夢はいつか醒めてしまう。
夢は醒めてしまえば、忘れてしまうもの。
だから、こっそり殺しておいた。
これ以上、イヴィル様へ冒涜を働かないように。
イヴィル様にバレないように、逃げるように公爵家の屋敷を出た先にある森の中で、淡々と。
死ぬ前に悪かったなんて言っていたけれど、赦されるはずがない。
だって私のご主人を馬鹿にしたのだ。
それくらいは当然の報いだと思っている。
サバトを殺した後、屋敷に戻った私を見てイヴィル様は溜息を吐いた。
失望……というよりは、仕方ないか。みたいな感じの溜息だった。
きっと私がやったことに気づいたのかもしれない。
ただ、その後は何も言わないからきっとお許しになられたのだろう。
それにおとぎ話に出てくるドラゴンと遭遇した時も不思議と何故か恐怖を感じなかった。
むしろイヴィル様が戦いに行った際に、イヴィル様が負けるとは思えなかった。
そのせいか安心感まであった。
蓋を開けてみたら、イヴィル様の圧勝だった。
戦いといっていいのか分からない。蹂躙とかの方がまだ合っている気がした。
ただ、おとぎ話に出てくるドラゴンを倒した後に杖を手に入れたからは、イヴィル様の機嫌はすごく良かった。
やっぱり、主人が嬉しい気持ちだと私も嬉しい。
いつも切羽詰まったようにしているように見えたから。
その後、イヴィル様は魔法だけじゃなくて剣も習い始めた。
綺麗な剣筋だった。
それなのにイヴィル様は初めてと仰っていた。
やっぱりイヴィル様は天才だ。
なんて思っていたら、気が付くと王国最強と名高いリーン様と手合わせを始めた。
少し離れたところで見ていたけれど、イヴィル様もリーン様も人間と呼べる戦いではなかった。
私が戦ったら……なんてことを考えることすらおこがましい。
結果として、イヴィル様が一本取られた形になった。
もしも、あの人がイヴィル様の敵だったなら、私はどれだけの時間を稼げていたのだろう。
むしろ、私は足でまといになっていたかもしれない。
悔しい。なんの力もない私自身が恥ずかしい。
だけど……今はイヴィル様の汗を服を持って行かなければ……そう思い私は歩きなれたはずの屋敷を歩く。
足取りはとても重たかった。
「あ! もしかしてアンナちゃん!?」
なんてことを思っていたら、リーン様に声をかけられた。
「どうして私の名前を……?」
私はリーン様に尋ねる。
思わず身に力が入る。
今の私では敵うことはない。
だけど、たった一撃を込めるだけなら……、
「いや! ちょっと殺気出さないでよ!」
「あ、申し訳ありません……私に何か御用でしょうか?」
やってしまった。今のリーン様は来賓なのだ。
「いやね。モリアから君のことを聞いてさ? なんでもドラゴンを前にしてお茶を淹れてたんだって?」
「イヴィル様がもてなせとのご命令でしたので」
「怖くなかったのかい?」
「いえ、特には」
だって、私にはイヴィル様がいたから。
「ふーん。なるほどね」
この人が何故そんなことを聞くのか分からない。
イヴィル様が窮地に追い込まれない限り、私は命を賭す必要はない。
故にイヴィル様に余裕があるならば、私にも余裕があるということだ。
……とはいえ、今の私ではイヴィル様よりも弱いことは事実だけれども。
「明日からアンナちゃんにも教えるから、ちゃんと来てね!」
「は……?」
本当にこの人は何を言っているのか分からない。
「それじゃあね!!」
リーン様はそう言って、私の元を去っていった。
そんなこんなで、ここ半年間は私も剣術を教えて貰っている。
イヴィル様も私が剣術を教えてもらうことを許可してくれた。
有難いことにイヴィル様にも筋がいいと言ってくれた。
恐れ多いとは思ったけれど、褒められたことは素直に嬉しい。
今まで褒めてもらったことがなかったから、今でもとても照れくさい。
それに、できなくても体罰はないし……こんな環境で私も混ざっていいのか不思議だった。
「あのイヴィル様……一つ聞いてもいいでしょうか?」
修練所の一角。
休憩中のイヴィル様に私は尋ねた。
「構わん」
イヴィル様はぶっきらぼうに言うけれど、優しく受け入れて下さる。
「あの……どうして、そこまで努力されているんですか? イヴィル様はもう十分以
上に頑張りすぎなのではないでしょうか?」
「ふむ……」
本来では出過ぎた真似。
一介のメイドごときが主人に対して良い質問ではない。
だけど、イヴィル様は私の愚かな質問に笑みを浮かべて答える。
「アンナよ。効率は大事だが、俺には闇魔法しか使えない。だが……そんな最弱の属性で頂点取ったら面白いと思わないか?」
その言葉を笑って答えた時、もしかしたらイヴィル様を獣のような笑みという人もいるかもしれない。
だけど、私には年相応の少年の笑顔にも見えた。
あぁ……私はこの人に仕えることができて本当に良かった。
「はい、仰るとおりです」
私はイヴィル様を全力でサポートするだけ。
そのために、私もできることをやる。
「私も……頑張らないと」
心の中で私は一人決意するのだった。
一人で戦っておられるイヴィル様が安寧を取り戻すときまで。
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★あとがき★
いつもご覧頂きまして誠にありがとうございます。
本話で第1章が終わりとなります。
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よろしくお願いします。