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「いい物件ないかなぁ…」
パソコンとかれこれ2時間にらめっこを続けて、そろそろ疲れてきた。
目頭を抑えていると、いとこの恭介がコーヒーを私にくれた。
「物件って、フリースクールの?」
「うん。なるべく広くて、自然に近いところがいいと思ってるんだけどね…」
恭介は物件探しって難しいよねぇと言いながら、私の横に来てパソコンをいじる。
公認心理師としての資格を得た今、私はフリースクールを開こうと思っている。それが長年の夢だったからだ。しかし、思っていたよりも道は果てしなく、課題がどんどん山積みになっていった。
「予算はどのぐらいあるの?」
「両親の遺産と貯蓄で大体3000万。これからのこと考えたら2000万で留めたいところなんだけどねぇ」
「思ったより予算あるね」
恭介の言葉を聞き、考え直す。
この予算なら、今から土地を買って家を建てるという手もあったのだ。しかし、それだと家を建てただけで終わってしまう。子供たちのためのいい環境を作るには…。
「空き家を買ってリフォームしたらある程度は残すこともできるかなって思ってるんどけど」
私の言葉を聞いてなるほどと言いながら恭介はまたパソコンをいじる。どうやら真剣に考えてくれるようだ。
最近問題になっている空き家。子供の頃から何軒も見てきたから目星は付いている。でも、今の年齢になって考えると土地が足りないのだ。
「やっぱりもう1個土地を買った方がいいのかなぁ…」
「それだと結構な値段にならない? 」
「そうだよねぇ…」
私と恭介はまた頭を抱える。そして、私の考えている夢は簡単なものではないのだとも思い知らされる。
いや、覚悟していたことだ。フリースクール自体、最近ポジティブな考え方になってきたというのに。そこからもっともっと、と欲を重ねては夢を始めることすらもできなくなってしまう。
「知り合いが不動産屋やってたから話してみようか?」
「本当に!?」
恭介の思いがけない提案に私は目を輝かせる。その様子に少し戸惑っているようで、私は我に返った。
「でも、迷惑じゃないかな?全然見つからなかったら…」
「相手は専門だし、空き家も多く扱ってるから心配ないさ」
たしかにそうだ。恭介の言葉に納得する。
少しでも専門の人に頼らないとこの先へは進めない。まだまだ課題は山積みなのだから。
意を決めて恭介に向き直る。
「うん。話してみようかな」
「よし、それじゃあ今から電話かけてみるよ。その間にしおりは、出れる支度して」
「ありがとう」
これから、柚木しおりの夢が始まる
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