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私は個人で絵のモデルをやっている。今日のお仕事は、ちょっと変わった場所で行うことになった。ボクシングジムを借り切って、そこでデッサンするみたい。私、ボクシングやったことないけど、ポーズをとるだけだから別にいいのかな。
「ここのジムは、本格的なボクシングというより、ボクササイズとか、そういうのがメインだそうですよ。ちっちゃい子どもなんかも通っているそうです」
と、絵画教室の先生が教えてくれた。
「あれ、先生、画材道具とか、まだ来てませんか?」
「えっ、来てないよ。行き違っちゃったのかな? しょうがないなぁ、モデルさんの準備はもうできているのに」
私はすでに服を脱ぎ、裸で両手にグローブをつけてもらっていた。裸で一部だけ何かを身につけているのって、真っ裸より恥ずかしい気がする……。おまけにこのグローブ、一人では外せないやつなのだ。
「小鳥遊さん、すいません、ちょっと見て来るので、しばらく待っていてください」
「あっ、はい……」
ちょっと不安だけど、しかたない。先生は行ってしまった。私はその恰好のままで待つことにした。……しばらくすると、ガチャリ、とドアの鍵が開く音がした。誰か来たみたい! 先生たちが帰ってきたのかな? でもなんだか様子がおかしい。
扉が開いた瞬間、私は思わず叫んでしまった。だってそこに立っていたのは、数人の男の子たちだったんだもん。な、なんで? このジム、貸きりのはずじゃ!?
「こんにちはー!」
「失礼しま~す!」
「はじめましてぇ!」
「よろしくお願いしますぅ!」
と、元気よく挨拶してくる。ど、どうしよう……。みんな私の方を見ている。うわああああん!! 体を隠すために思わずしゃがんじゃったけど、ばっちり見られちゃったと思う。ああ、顔が熱い。きっと赤くなってるだろうな……。こんな姿を見られるなんて……。しかも今日ここにいるのは、小学生以下の子どもたちばかりだ。
「あのぉ、もしかしてあなたが、ぼくたちの相手をしてくれる人ですか?」
一人の子が質問してきた。相手って何のこと?
「ぼくたち、体験入学にきたんですけど……」
ああ、そういうことか。この子たち、間違えて入ってきちゃったんだ。私がそのことを伝えようとすると、
「すっごい、プロレスのマットだ!」
「おおー!」
「ここでやるのか!」
きゃあきゃあと騒ぎながら部屋に入って来てしまった。そして、一斉に私の周りに集まってくる。ひぃいい! こわいこわいこわい! みんな興奮している。ここはプロレスのマットじゃなくて、ボクシングの……、いやいや、それどころじゃなくて。(続く)