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穏やかな海でその男は長い棒に糸のついた物をもって方角を探っている。
糸の先端には大きな釣り針が付いている。ただし、大きく曲がったその釣り針は針と呼ぶには先端が丸く平べったい。
そばにはきつね耳とうさ耳が砂で山を作っている。うさ耳が高く作った山にきつね耳がトンネルを開通させてハイタッチをしている。
それを微笑ましく見る黒髪少女。普段の服装とは違い、露出の多い水着姿だ。
そして少し離れたところに別の意味で微笑みが止まらない青年が剣を地べたに置いてケモ耳2人を眺めていた。
男は「私も海が見たいっす」と言ううさ耳の突然のお願いにすぐさま準備をしてここにきた。
うさ耳はときどき知り合いのすんごいエルフとなんらかの自慢合戦をしてたりするが、どうやらその中に海というのがあったようだ。
ねだられるままに海を訪れた男だが、実際には旧友に会いに来たのだ。
男は目標を見定め、キャスティングした。その釣り針には餌もなにもついてないが、釣りとは思えないスピードと角度で飛んでいき、リールと呼んでいる魔道具からはどんどんと糸がでていく。
しばらくして男は一気に釣り竿を立てて引っ張る。ググッと、しかし動かない。リールは巻けない。不思議に思い首を傾げるが、獲物は手強い。
うさ耳が「大物っすか⁉︎ 私はマグロが食べたいっす」と、どこかで聞いたようなセリフを言っている。
きつね耳は、「今回はえらくしぶといねーっ!」なんて言って笑う。
黒髪と青年は何が起きるのかと注目している。
男と獲物との闘いは長いものだったが、やがてぐんっと何かが外れるような手応えを受けて、そこからはリールをただ巻きにする。
巻く、巻く、リールが焼けるのではないかと思うほど巻く。
そんなに糸があるのかと言うほどに巻き続ける。
うさ耳はワクワクが止まらない。両手を握りしめて飛び跳ねながら応援している。
青年はうさ耳の元気な動きに釘付けだ。
きつね耳はあくびしている。
黒髪少女は興味半分、得体の知れないことの不安半分でハラハラ。
やがて男の「ダァラッシャアァァッ!」という気合いの言葉とともに水面から飛び出したそれは、うさ耳の期待するものではなく、大きな水しぶきをあげて弧を描き砂の山に軟着陸した。心なしか飛沫には黄色が映えていた。
きつね耳は鼻で笑った。