テラーノベル
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2番目に遭遇した人? がゴブリンとはね。
いや、待てよ。耳と鼻は尖っているものの、見た目は普通の人間だ。
耳と鼻を引っこ抜けば、美少女の部類に入りそうだ。
いいじゃないかゴブリンでも。
まずはお礼を言わなきゃだよね……。
「ねえ、ゴブーリン」
「私は、あのカバみたいにポッチャリしていませんよ!」
カウガールスタイルの少女は、確かにスレンダー体型だ。
ぷくりと頬をふくらませた顔は幼く見える。十四歳くらいか。
短めのスカートから伸びた白く細い脚にウエスタンブーツ。
テンガロンハットを首からぶら下げている。
「やっぱりゴブリンだよね?」
「正確には『ボブリン』です。ヘアスタイルがボブなので」
ウルフボブというのだろう。
レイヤーをたっぷり仕込んだボリュームのあるトップと長めの襟足が特徴の髪型だ。
ゴブリン少女は緑色をしたサラサラの髪に触れながら、もう一方の手で自身の鼻を引っこ抜いた。接着剤が多かったらしい。ちょっと涙目になっている。
「これは付け鼻です。ゴブリンっぽく見えるんで」
「ゴブリンにしては白くない?」
「緑のゴブリンとは種類が違います。私は『ホワイトゴブリン』なので。緑色をしたゴブリンの上位互換です」
ゲーム機ですか?
「上位と下位の違いは?」
「ホワイトゴブリンは賢いです。緑のゴブリンはアホです。いつか遭遇するかもしれません。そのときに確かめてみてください。アホなんで」
そんなにアホなら一度会ってみたい気がする。
ボロボロの腰巻をつけて棒的なものを振り回すんだろうな。
そんな姿を想像しながら、レンタロウは上位互換と言い張る少女を見やった。
「ねえ、ボブリン」
「だからね……。私には『アシュリン』という立派な名前があります!」
「ここでスライムを栽培してるのってボシュリンのこと?」
「おい! ボブリンとアシュリンを混ぜたろ!」
ホワイトゴブリンの少女は、今にも奇声をあげそうな表情だ。
眠そうな目をしているせいか、あまり怖さを感じない。
「ボブ子がいいか?」
「なんでもいいです。死ねばいいのに。はいはい。そうですよ。山に生えている、あれ全部栽培しています」
ボブ子が見据える先の小高い山の斜面には、奇妙な物体を実らせた木が植えられている。
ぶりぶりとした大きな実がスライムらしい。
あまりの重さに、枝がだらりと弧を描いている。
「ひとりで栽培してるの?」
「ボッチなんで。木は1000本近くありますが、ひとりで収穫もしています」
「大変そうだね。手伝おうか? 報酬と休憩はキッチリ取るけど」
「楽ですよ。完熟したスライムは木から勝手に落ちるんで。収穫も一段落したので、手伝いは不要です」
木から落ちたスライムは、山の斜面を伝って平地まで転がってくる。
その先には落とし穴が待ち構え、スライムが次々となだれ込んでくる仕組みになっている。
ボブ子が穴に落ちたスライムを回収するという寸法だ。
落とし穴にはネットが仕込んであり、スライムが定量に達したとき一気に引き上げる。この合理的なシステムを考案したのはボブ子らしい。
「さっき僕が遭遇したのって、落とし穴に向かってたスライムってこと?」
「そうですよ。レンタロウがスライムに追われて爆走している姿を、死ねばいのにと思いながら見てました」
「そうなんだ……。ところで、ボブ子はスライム栽培で生計を立ててるの?」
「そうですよ。大半は、ハミデール王国に出荷しています。あとは飲食店などに卸しています。街はあっちです。もう暗いので気をつけて。じゃ、私はこれで」
「あのさ、“男子校あるある”の続きなんだけど……」
「どんな流れでそんな話になるのですか?」
「これはきっと共感してくれると思うんだよね。それじゃ、いきますよ。女子が居ないから授業中でもウ〇コに行きやすい!」
って、あれ? やめて。
どつかないで。
悪かったって。
ボブ子に蹴飛ばされたレンタロウは、ふたたび落とし穴に落ちてしまった。
スライムの効果がきれてしまったレンタロウの脚。
自力での脱出はムリっぽいし、ボブ子は助けてくれないよね。
試してみようかな、例のアレで……。
「いでよ! 空気嫁のカタクリ子さ~んぬっ!」
草原に置きっぱだった空気嫁を、レンタロウは再召喚する。
期待通り、超高速で飛んできた。
くの字に曲げた体を高速回転させる空気嫁のカタクリ子は、もはやブーメラン。
クリ子ブーメランは、落とし穴の入口をガッツリと塞いでしまった。
「ぁ……完全に詰まっちゃったね……カタクリ子さん……」
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