今日は、俺と明梨、玲、 菜々葉の4人で
町で遊ぶことになっている。
が、
遥
…明梨遅いな
菜々葉
もう10分も遅刻
してる
してる
玲
明梨が遅れるのって
珍しくね?
珍しくね?
集合時間になっても、
明梨は現れなかった。
玲
メールに既読も
つかないしな
つかないしな
遥
………
遥
俺、ちょっと
探してくる
探してくる
菜々葉
分かった
菜々葉
見つけたり、
何かあったりしたら
何かあったりしたら
菜々葉
連絡してね
玲
俺も遥と反対方向
探してくるわ
探してくるわ
菜々葉
私は、明梨が来るかも
だから
だから
菜々葉
ここで明梨を
待ってる
待ってる
俺と玲はそれぞれで、 明梨を探し始めた。
遥
明梨どこなんだよ…
遥
(何かに、巻きこまれ
てるんじゃないか?)
てるんじゃないか?)
遥
(いや、考えてたって
しょうがない)
しょうがない)
遥
(今はとにかく
明梨を探そう)
明梨を探そう)
明梨の家の方向に向かって、 町中を走っていった。
と、その時
路地裏の方から、明梨の声が 聞こえた。
明梨
離して下さい!
明梨
これから友達と
遊びに行くんです!
遊びに行くんです!
男たち
じゃーその友達も
連れて来てよ
連れて来てよ
男たち
可愛い子たくさん
いんのー?
いんのー?
明梨は、男たちに腕を掴まれ
動けない状況だった。
明梨は、男たちに怯えていた。
遥
(助けなきゃ)
遥
おい!やめろよ!
路地裏に飛び出した。
明梨
遥っ!?
男たち
何だよお前
男たち
この子の友達ー?
男たち
なーんだ、男かよ
遥
嫌がってるだろ
その子
その子
遥
離してくれよ!
男たち
ちょー生意気
男たち
うざ
男は、俺の腹を殴った。
遥
っ!!
明梨
遥!!
大丈夫!?
大丈夫!?
明梨
やめて下さい!
殴るだなんてひどい!
殴るだなんてひどい!
男たち
大丈夫だよー
男たち
軽ーく殴った
だけだからっ、
だけだからっ、
男たち
って、いった!
男たち
何すんだよお前!
俺は男を後ろから殴った。
遥
その子を離してくれ!
男たち
お前、どんだけボコボコ
にして欲しいのー?
にして欲しいのー?
男たち
お前がやる気なら、
俺らもやってやるよ!
俺らもやってやるよ!
男たちは俺を一斉に殴り始めた。
俺も、殴り返すが、
やっぱり力の差と人数の差は 大きかった。
どれくらい殴られただろう。
俺が全身アザだらけになった頃。
男たち
なんかもういいや
男たち
こいつめっちゃ
粘るし
粘るし
男たち
飽きたわー
男たち
この子は返すよー
男たち
ま、久しぶりに
殴れて楽しかったわ
殴れて楽しかったわ
そう言って明梨は解放され、
男たちは町中へ消えていった。
明梨
遥、くん
明梨
ごめん、
明梨
ごめんね
明梨
今警察と救急車、
呼んだ…から、
呼んだ…から、
明梨の声は震えていた。
遥
大丈夫、だよ
俺は仰向けになったまま、 口を動かす。
明梨
何て、言ってるの…?
明梨の目から流れた、大粒の涙が
俺の頬に落ちて、流れる。
遥
(そっか、明梨には)
遥
(俺の声は、聞こえ
ないんだ)
ないんだ)
もう、メモ帳に書いてあげられる 気力も残っていない。
遥
(大丈夫だよって…)
遥
(そう、伝えて、)
遥
(明梨を安心させて
あげたいのに)
あげたいのに)
明梨
ねぇ、遥くん
明梨
なんで、私を
助けてくれたの…?
助けてくれたの…?
俺は、ゆっくりと体を起こして
明梨を、ぎゅっと抱きしめた。
遥
明梨のこと、
遥
好きだから
聞こえないことなんて、
分かっているけれど。
いつからだっただろう。
俺の声が、明梨に聞こえなく なったのは。
いや、違う。
本当は覚えてる。
明梨が、俺の声を聞くことが 出来なくなったのは
まだ、小学6年生だった、 あの日。







