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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

担任

今日は転入生を紹介します

優人

風見 優人です

優人

東京から引っ越してきました。

優人

よろしくお願いします

担任

じゃあ、風見は一番後ろの

担任

窓際の席に座ってくれ

優人

はい

明海(あけみ)

風見くん、隣だね

明海(あけみ)

よろしくね

優人

君の、名前は?

明海(あけみ)

明海だよ。何でも聞いて

優人

ありがとう。

優人

よろしく、

優人

明海さん

休み時間

明海(あけみ)

風見君は、どこに引っ越してきたの?

優人

駅前の、パン屋さんの向かいだよ

明海(あけみ)

へぇ〜…

明海(あけみ)

明海(あけみ)

…もしかして、新築の建物?

優人

そうだよ

明海(あけみ)

壁がアイボリー色で、素敵だよね…あそこ

優人

そうかな?

優人

でも、俺、戸建てに住むのはじめてなんだ!

明海(あけみ)

そうだったんだ

優人

だから、ちょっと嬉しいんだ。

優人

親の仕事の都合で、はじめてこっちに来て…

優人

まだ、学校と駅の場所しか覚えてないんだ

明海(あけみ)

明海(あけみ)

…そっか

優人

優人

明海さん、どうかした?

明海(あけみ)

明海(あけみ)

…なんでもない

明海(あけみ)

風見君

優人

ん?

明海(あけみ)

…火の元には

明海(あけみ)

十分、気をつけてね

優人

優人

わかった…

優人

(いきなり、火の元の話なんかして…どうしたんだろう?)

他のクラス 休み時間

陽太

2組に転校生が来たって話、本当なのか?

みのる

ああ、いるらしいね

みのる

しかもその転校生、「黒い家」に引っ越してきたらしいぞ

陽太

えっ?!

陽太

マジか…

みのる

親が知らないで、物件買っちゃったんじゃないか?

陽太

外から来た人なら、知らなくて当然だもんな

陽太

何も起きないといいけど…

みのる

そうだな…

放課後

優人の自宅

優人

ただいま〜

母親

………………………………………

優人

母さん?

母親

母親

………………………あ、

母親

優人、おかえり

優人

母さん、どうしたの?

優人

顔色悪いよ

母親

ちょっと、ね

母親

ごめん、二階で休んでくるわ

優人

わかった

優人

夕飯は俺が作るから

優人

ゆっくりしてね

母親

…ありがとう

優人

あ、父さんおかえり

父親

………………………………

父親

ただいま

優人

父さんも、体調悪いの?

父親

…え?

優人

実は母さん、体調悪くて寝てるんだ

父親

…そうか

優人

父さんも顔色悪いから…

父親

ああ、ちょっと色々あってな

優人

早めに寝たら?

優人

夕飯はあるけど

優人

明日食べても、大丈夫だよ

父親

…悪いな

父親

お前の言うとおり

父親

ちょっと疲れてるみたいだ。

父親

作ってくれた夕飯は、明日食べるからな

優人

うん

優人

無理しないで…

父親

ごめんな

優人

気にしないでいいよ

優人

(やっぱり、変だな)

優人

(引っ越してきてから、二人とも様子がおかしい)

優人

(町の人と、仲良くなれないのかな?)

父親

母さんが心配だから、様子見てから寝ることにする

優人

わかった

優人

おやすみなさい

優人 自室

優人

やっぱり気になる

優人

スマホで

優人

この町のこと調べてみるか

〇〇県△△市◇◇町

優人

優人

な…

優人

なんだ、これ

◇◇町 オカルトスレ No.115

名無しさん1: ◇◇町5-8-1で、 また火災発生した!

優人

優人

え…?

優人

ここの、住所じゃないか…!?

名無しさん2: え、また火災? あそこ3件目だよな?

優人

3件目…?!

名無しさん1: そう。3件目。 今回も燃え方が激しい 放火?事故?

優人

………マジかよ

優人

優人

そういえば

優人

同じクラスの明海さんが、

優人

火の元には気をつけろ、って言ってた…

優人

もっと、詳しいこと

優人

何か知ってるかな…?

翌日

優人

おはよう

優人

明海さん、一つ質問していい?

明海(あけみ)

風見君、おはよう

明海(あけみ)

…どうかした?

優人

あの、俺が住んでる場所について

優人

詳しいこと、知っていたら

優人

教えてほしいんだ

明海(あけみ)

いきなり、どうしたの?

明海(あけみ)

誰かに、何か言われた?

優人

いや

優人

昨日、両親の様子がおかしくて

優人

調べてみたんだ

優人

そしたら、こんな掲示板が見つかって…

明海(あけみ)

明海(あけみ)

こんな掲示板あるんだ

明海(あけみ)

知らなかった

優人

両親とも、普段は明るくて

優人

優しいんだ。

優人

でも、こっちに越してきてから

優人

二人とも、ふさぎこんでるんだ

明海(あけみ)

…そうなんだ

優人

掲示板に書いてないこと、

優人

何か、知らない?

明海(あけみ)

…私が言って、いいのかな

明海(あけみ)

聞いて、後悔しない?

優人

優人

うん、覚悟はしたから

優人

教えてほしいんだ

明海(あけみ)

明海(あけみ)

分かった

授業開始のチャイムが鳴る。

明海(あけみ)

放課後、話そう

明海(あけみ)

時間、くれる?

優人

わかった

放課後 屋上

優人

学校の屋上なんて、はじめて来たよ

明海(あけみ)

私、サイエンスクラブだから、屋上の鍵はいつでも借りられるんだ

優人

へぇ〜

優人

4階建てだと、結構高さあるよなぁ…

優人

俺の家も、

優人

ここから見えるかな?

明海(あけみ)

明海(あけみ)

…風見君、私

明海(あけみ)

あの家のこと、

明海(あけみ)

どこから話したらいいかな…?

優人

知ってること、

優人

すべて教えて欲しい

明海(あけみ)

………

優人

簡単に引っ越せないし、

優人

両親にも、これから聞く話は、できないかもしれない。

優人

でも、聞かないほうが怖いんだ。

優人

対策できるのなら、対策したい…

優人

火災が多いなら、火災警報器を増やしたり、消火器を用意したり、

優人

できること、あるはずだから…

明海(あけみ)

明海(あけみ)

うん、わかった

明海(あけみ)

この話を、

明海(あけみ)

ご両親にするか、しないかの判断は、風見君に任せるね

優人

…分かった

明海(あけみ)

あそこが「黒い家」と呼ばれるようになったのは、4年前…

優人

黒い、家?

明海(あけみ)

そう。「黒い家」の由縁(ゆえん)は…

明海(あけみ)

優人

数日後

自宅 優人の部屋

優人

大変な話を聞いちゃったな…

優人

体が弱い母さんには、

優人

話せない…

コンコン

優人

…はい

父親

…優人、入ってもいいか?

優人

父さん?

優人

いいよ

父親

二人きりで、話したいことがあるんだ

優人

(この家のことかな)

優人

わかった

優人

どこか行く?

父親

この近くに喫茶店があるから、

父親

一緒に来てくれないか?

優人

…分かった

優人

母さんは、まだ体調悪いのかな

父親

ああ

父親

しばらく、寝かせてあげよう

優人

分かった

近くの喫茶店

父親

ごめんな、いきなり

父親

宿題でもしてたんじゃないか?

優人

大丈夫だよ

父親

…高校は、どうだ?

優人

クラスメイトも、先生も

優人

皆優しいよ

父親

それなら良かった

優人

父さんは?

優人

異動したばっかりだけど、支店はどう?

父親

…そうだなぁ

父親

やっぱり、東京にいた時とは

父親

仕事の仕方が全然違うな

優人

そうなんだ

優人

同じ会社なのに、不思議だね

父親

顧客の求めるものも全然違うから、また1から勉強させてもらってるよ

優人

大変そうだね

父親

慣れれば大したことない、大丈夫さ

優人

そっか

父親

…それでな、

父親

本題に入ろうと思う

優人

引っ越してきた、あの家のこと?

父親

父親

優人、どこかで何か聞いたか?

優人

いや

優人

ちょっと小耳に挟んだだけ

優人

父さんの口から、直接聞きたい

父親

…分かった

父親

あの家を買う時、不動産会社から、

父親

新築で駅近だが、電車の音がしょっちゅう聞こえるので、値段が通常より安い、と言われたんだ

優人

うん

父親

その言葉を信じて、内覧もして、

父親

いざ引っ越してきたら

父親

近所の人たちから言われたんだ

「あんな家買ったのかい?!」

「…何で、家を買う前にワシらに相談してくれなかったんだ?もし引っ越し前に声かけてくれたら、話したのに…」

いますぐ引っ越せ!

優人

ひどい…!

父親

正直、ショックだったよ

父親

せっかく、東京で頑張って働いて来て、

父親

頭金ができたから、ローンを組んだばかりだったのに…。

父親

地元の人は、皆俺が引っ越してきたことを反対するんだ

優人

…うん

父親

その理由も、詳しく言ってくれない

父親

だから、単純にヨソ者が来たことが気に入らないだけかと思ってた

優人

…うん

父親

でも、違った。

父親

同じ班の、宮川さんが教えてくれたんだ

優人

宮川さん?

父親

うちから、3件離れた緑色の屋根の家に住んでる

父親

親切なおばあさんだよ。

優人

良い人も、いるんだね

優人

そこは、良かった

父親

…宮川さんは自宅に俺を入れてくれて、

父親

話してくれたんだ

優人

あそこに住んだら、いけない理由?

父親

そう

父親

あそこは、4年前から火災ばかり起きているらしい

優人

…黒い家、って呼ばれてるんでしょ?

父親

父親

そう、らしいな…

優人

高校のクラスメイトが教えてくれたんだ

父親

…そうか

優人

…何回建て直しても、

優人

毎回火災が起きる。

優人

必ず家が真っ黒に燃えてしまうから、

優人

あの住所のことを「黒い家」って

優人

地元の皆から、そう呼ばれているらしいね…

父親

父親

…その通りだ

父親

俺が、もっと調べてから

父親

家を買えばよかった…

優人

父さんの、せいじゃないよ

父親

不動産会社も、言ってくれたら…

父親

悔しい…

優人

そうだね…

優人

あ、そうだ

優人

俺、一応、火災警報器をつけ足したんだ

父親

え?

父親

いつの間に?

優人

2〜3日前、父さんと、母さんが寝ている間に。

優人

寝室には法令どおり火災警報器が最初から付いていたけど、

優人

台所と階段と俺の部屋には

優人

付いてなかったから。

父親

そうか

父親

気を使わせてすまないな

優人

大丈夫

優人

こういうの得意だから任せて

優人

むしろ、勝手に壁に穴あけしちゃったから

優人

ごめんね

父親

それは大丈夫だ

父親

賃貸じゃないからな。

父親

消火器も、帰りに買っておくか

優人

それも、ホームセンターで買ってあるよ

優人

とりあえず、できることは全部したつもり

父親

…分かった

父親

ありがとな。優人

優人

ううん

優人

俺には、それしかできないから

父親

いや、助かるよ

父親

母さんには、まだ言わないでおこうと思う

優人

うん、その方がいいね

優人

新しい環境に、まだ慣れて無いみたいだから。

父親

そうだよな

父親

母さんも、嫌な思いをしてなければいいんだが…

優人

そうだね

父親

…もう5時か

父親

そろそろいい時間だし、帰ろうか

優人

うん

自宅

父親

ただいま〜

優人

母さん、まだ寝てるのかな?

優人

1階の電気、消えたままだね

父親

…なぁ、優人

優人

何?

父親

父親

何だか、

父親

こげ臭く…ないか?!

ピューッ!

ピューッ!

父親

何だ?!

優人

これ、火災警報器の音だ!

父親

母さん!!二階か?!

父親

火事だ!!

優人

俺も行くッ!

父親

いや、お前は外にいろ!!!

優人

でも…っ!

父親

いいから!

父親

頼むから、外にいてくれ!!

優人

分かった!

優人

(まさか、こんなに早く)

優人

(火事が起きるなんて…!)

父親

優人、無事だな

優人

父さん!!

優人

よかった…助かって!

母親

優人、良かった…

母親

何ともないのね?

優人

俺は大丈夫

優人

母さん、怪我ない?

母親

父さんがすぐ助けてくれたから

母親

大丈夫よ

父親

…火災警報器を増やしてなかったら

父親

一体どうなっていたか…

母親

優人が、つけ足してくれたのよね?

優人

うん、そうだよ

優人

2〜3日前に、つけたばっかり

母親

ありがとう…!

父親

あ、消防車も来てくれたぞ!

優人

(どうか全焼前に、炎を消せますように…)

その後、火は全焼前に消され、

延焼もなく済んだ。

父親

優人、本当にありがとう

優人

…どういたしまして

優人

本当は、俺じゃなくて、

優人

明海さんにお礼した方がいいよ

父親

火事の話をしてくれた子か?

優人

そうだよ

父親

今度、ご挨拶にお伺いさせてもらおうか

今回の火災の原因は、

消防からは「火の消し忘れ」と言われたが、

火災の起きた日は、誰も料理をしていないので、

はっきりとした原因は分からない。

前日夜に火の元を確認して寝たから、

前日から火がついていた訳もない。

母親

そうそう、今のままじゃあの家に住めないから、

母親

私の叔母が、家が直るまで一緒に住んでもいいって言ってくれたの

母親

あなた達が、嫌じゃなければだけどね

優人

…その叔母さんって

優人

どこに住んでるの?

母親

車で10分くらいの、隣町にいるわよ

優人

そうなんだ。

優人

隣町からなら、学校には通えるから、俺は叔母さんの家に暮らすの

優人

賛成するよ。

父親

俺も、その家から通勤できる

父親

正直、ホテルにずっと泊まる訳にはいかないから、ありがたいしな

母親

分かったわ

母親

叔母に、連絡してくるわね

優人

とりあえず、どうにかなって良かった…

これから、家を直したら

また「黒い家」に俺たちは住むだろう。

また何か、起きるかもしれない。

でも、引っ越すことはしない。

優人

家直したら、また火災警報器付けなくちゃ

優人

消火器も、買い直しだ…

父親

優人は働き者だなぁ

父親

俺も見習わなきゃいけないな

優人

そうかな?

神様、

俺たちを助けてくれて、ありがとう。

これからも、どうか

ここに住ませて下さい。

ー素敵な人が、沢山この町にいるから。

黒い家

-fin-

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