閑散とした教室、閑散とした街...
ここは面倒な友達も親もいない場所。
この暮らしはとても満足“していた”。
水鏡
水鏡
あー...つまらん...
水鏡
つまらんぞーッ‼︎
???
どうしたの?そんな大声出して。
返答の主は私をこの世界に送り込んだ人物。
当初はそのことに感謝し彼のことを“神さま”と呼んでいた。
だが現実はとても違かった。
水鏡
この生活に飽きたー‼︎
水鏡
人がいないっていうのは聞いたけど隅から隅までいないじゃん‼︎
神さま
だってそれは君が望んだことだよ?
水鏡
それはそうだけどさ...流石に限度ってモンがあるよ?
水鏡
やることないし、少しぐらい違う人とコミュニケーションとりたい‼︎
神さま
おやおや、君は気が変わりやすい性格なのかな?
水鏡
それでお願いなんだけど、誰でもいいから話をしたりできる機会くれない?
水鏡
はぁ...やっぱりダメだよねー...
神さま
できるよ。
水鏡
水鏡
へっ?
水鏡
で、できるの⁉︎
神さま
でもそれ相応の条件はつくよ?
水鏡
例えばどんな?
神さま
神さま
人間の悩みを解決すること。
水鏡
水鏡
えっ、それだけ?
水鏡
なーんだ、変に身構えて損したよ‼︎
水鏡
でも何でお悩み相談室みたいなのをするの?
神さま
それはね、君は人間の心が分かっていないからだよ。
水鏡
は?
神さま
君は1人が好きだという理由だけで友達や親を悪く言っている。
神さま
それに君は飽きっぽくて、大変身勝手な発言や言動が多く見られる。
神さま
だからせっかくの機会だし、それを改善してみたらどうかなって笑
水鏡
要するに私に対する嫌味か。
神さま
捉え方は人それぞれだけどね。
水鏡
その笑顔捻り潰してやりたいなー。
“神さま”からの嫌味をたくさん聞いた私は、即座に転送を求めた。
神さま
じゃあ、行くよ?
そう言って“神さま”は前と同じように指を鳴らした。
パチンッ
ストンッ
水鏡
水鏡
あれ?
見回すとそこは屋上だった。
水鏡
ねえ、転送先ミスってない?
神さま
いや?ちゃんと君の言うとおりにしてあげたよ。
そういう彼を置いて、私は教室に行ってみることにした。
教室
ガヤガヤ
水鏡
おっ‼︎本当に人がいる‼︎
するとそこには見慣れた顔がいた。
水鏡
あ、A奈とB乃だ‼︎
私はすぐさま2人に駆け寄り、話を始めた。
水鏡
もう、A奈久しぶりー‼︎
A奈
えっ?違うよー‼︎
水鏡
私がいなくて寂しかったかい?
A奈
いやいや、あそこのタピオカ凄く美味しいんだって‼︎
水鏡
おーい、無視?それはいくら何でも傷付くよー?
だがA奈は私の問い掛けには答えず、B乃との会話に夢中になっていた。
水鏡
ねぇ、B乃‼︎A奈が無視してくるんだけどー‼︎
B乃
大体、タピオカの何が美味しいの?
B乃
ただ飲み物に餅を丸めたヤツが入ってるだけでしょ?
A奈
違うよ‼︎餅とタピオカを一緒に考えるの私のおばあちゃんと同じだよ‼︎
水鏡
B乃...?ねぇ、聞こえてるよね...?
しかしA奈とB乃は私には目もくれずに、話をしていた。
水鏡
ねぇ...ねぇってば‼︎
私は思わずA奈の肩を揺らした。
A奈
えっ?今、B乃肩揺さぶった?
B乃
はあ?タピオカの食べ過ぎで頭おかしくなったんじゃないの?
A奈
だからタピオカをバカにするなー‼︎
水鏡
えっ...何で...?何で私を無視するの...?
神さま
君が望んだことだからだよ。
私がその場で立ち尽くしていると、教室の前には“神さま”が立っていた。
神さま
君は自分でこの世界を望んだんだよ?
水鏡
違う...私は軽い気持ちで言っただけで...
神さま
軽い気持ちね...
神さま
でもその軽い気持ちは、ときに人生を狂わせるものになるんだよ?
水鏡
....
神さま
まあ、でも良かったじゃないか。またひとつ大人になったね笑
私は嘲笑う彼を睨みつけた。
神さま
おお、怖い怖い。
神さま
でもね、そんな君に朗報があるんだよ。
水鏡
...朗報?
神さま
それはね...
神さま
神さま
まだ人間と話すチャンスがあるってことだよ。
水鏡
水鏡
えっ?
水鏡
どんなの⁉︎
神さま
さっき言った、人間の悩みを解決することだよ。
水鏡
でも、私は今誰にも認識されないけど?
神さま
確かに今君は『透明人間』だ。
神さま
でもね、悩みを解決している期間だけ、君は相談者だけに認識される。
水鏡
何その訳分からないルール。
神さま
君がたまに人と話したいっていうから、そういう設定にしたんだよ。
水鏡
うーん...まあ、人と話せるだけまだマシか...
水鏡
水鏡
分かった。そういうことならOK。
神さま
理解が早くて助かるよ。
神さま
それじゃあ早速、始めようか。
水鏡
えっ?始めるって何を?
神さま
神さま
お悩み相談だよ。
水鏡
ええっ⁉︎もう依頼が来てるの⁉︎早くない⁉︎
神さま
まあ、一応七不思議や都市伝説の要領で噂は流しておいたからさ。
水鏡
準備がいいな〜...
神さま
それじゃあ、人目に触れるのもアレだし屋上に行こうか。