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「なあ、聞いてんの?」
「何か喋れよ」
クラスのいじめっ子たちの 声が後ろから聞こえてくる
でも、私は振り向かなかった
振り向いたら、 余計に何か言われるから
私、花園 花(はなぞの はな)は 小さい頃からいじめを受けていた
花という名前なのに、 私はずっと下を向いてきた
学校の教室は 息ができない場所だった
笑い声がすると、よく肩が跳ねた
特に
男の人の声になると、 心臓が早くなる
声も出なくなり、身体が硬直する
私は逃げることも、 言い返すこともできず
ただ──耐えていた
そして私はいつしか
男の人が怖くなった
20XX年4月
群馬県・K市
父
母
母
花
母
父
母
父
父
母
父
母
母
花
花
花
花
花
花
花
父
母
花
これから先、 どん底だった日々は終わって
新しい出会いが私を待っている
その時はまだ──
何も疑っていなかった
1年2組
周りはざわざわと 騒いでる中
私はひとり、机で 蹲っていた
花
花
花
男の人しかいないの?
周りの人はみんなリボンじゃなく ネクタイを締めていて
下はズボンを履いていた
私だけが赤いリボンで 膝丈のスカートだった
花
花
私は机の中から受験時にもらった 高校のパンフレットを取り出す
そして私はあることに気づき 手が震えた
花
花
初年度……!?
私は大きな思い違いを していたらしい
パンフレットには 共学化初年度と書いてあり
その上には 今年から女子受け入れ と書かれていた
私は「女子受け入れ」の部分しか 見ておらず
「女子受け入れ」=「女子校」 という勘違いをしていたらしい
入学式当日にこれを知った私は 一気に天から地へ突き落とされた 気分だった
花
花
花
私は自分の頬をつねる
しかし、当然 現実は変わらない
花
花
視界が歪んでいく
男の人の笑い声、低い声、 そして視線……
息ができなかった
私の高校生活は
完全に詰んだ。
先生
「はーい」
「開式の辞。これより、 群馬県立蒼紡高等学校 入学式を執り行います」
「新入生の入場です。 拍手でお迎えください」
母
父
新入生が入場してくる
まずは1組だ
母
母
父
父
母
1組は入場し終える。 1組は全員男子だ
母
「続きまして、2組の入場です」
父
母
母
父
花
母
母
校長先生
校長先生
校長先生の言葉なんて 耳に入ってこなかった
男の人の匂いが漂ってきて 今すぐにでも帰りたい気分だ
校長先生
校長先生
花
校長先生
入学式が終わり、私は 教室に戻った
そしてすぐに 机に顔を伏す
花
今すぐにでもここから 逃げたい気分だった
先生
先生
自己紹介して もらいましょう
花
花
自己紹介……
それは「私」という存在を 晒すのと同義だ
男性恐怖症の私からしたら それは地獄のようなもの
花
伊集院瑛二
丸山元
炎城寺大
蓮
藤井直人
先生
花
私は教壇の上に立つ
クラスのみんなは物珍しいのか 一斉に私を見る
あぁ……この視線
昔のトラウマが蘇って来る
花
先生
花
花
花
私は聞こえるぐらいの小声、 そして早口で自己紹介を終えた
先生
先生
先生
先生
先生
花
花
花
1対1の会話は みんなの前で自己紹介よりも 地獄だ
周りを見ていると みんな気軽に 話しかけている様子
知り合い同士なのか、それとも 男の人というのは初対面でも 気軽に声をかけれる生き物なのか
私はチラッと横を見る
水色の髪、むすっとした横顔、 着崩した胸元のネクタイ
明らかに不良だ
でも私はこのままだと 前に進めないと思い 声をかけることにした
花
花
蓮
花
花
花
花
蓮
蓮
蓮は軽く挨拶すると すぐに前を向いた
花
花
その帰りの車内にて……
父
母
花
花
母
花
父
花
父
父
母
父
母
花
花
花
母
母
花
花
花
花
これからの学校生活 どん底な未来しか見えない
入学初日に退学したい気分だ
……でも
父と母には 心配かけたくない
そのためにも私は……
あの学校に慣れるしかない。 そう思った──