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短編

第41話 - 【ハロウィン短編】君が本物の天使に見えるまで

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2023年10月31日

#短編

#一次創作

orange

ここは、｢死から離れた国｣

国民全員が吸血鬼という特殊な大陸である

そんな大陸の3代目主、クルト

窮地を乗り越え、束の間の休息を楽しんでいた彼だったが……

クルト

……なに？これ

アベリア

むしろ、僕も聞きたい

アベリア

……なに？これ

ベリアル

国民全員の願いみたいなものです

ベリアル

今朝玄関に置いてありました

クルト

ねぇやっぱりうちの国民全員頭おかしいって

ウピル

しかも、よくこれほどの署名を集めましたね

ウピル

さてさて、その内容は……？

目の前のこの大量の署名

これのせいで大切な休日を1日、失うことになるのだった

ウピル

……仮装？

ウピル

……ん？なになに？

ウピル

｢我らの姫様に、ぜひ仮装をして欲しい｣

ウピル

｢人間達は今日という日をハロウィンと呼ぶらしい｣

ウピル

｢年に一度の妖魔達が人間に混ざれる日であり、その日は人間も仮装をすると聞いた｣

ウピル

｢ならば、人間をより知りたいであろう姫様ならぜひ仮装と言うのを自ら行って我らに見せてくださるだろう｣

ウピル

｢故に、姫様の仮装が見たいかと国民達に聞き、賛成する人達に署名を書いてもらった｣

ウピル

｢これは、国民全員の意見である｣

ウピル

｢姫様の慈悲を、信じています｣

ウピル

……燃やします？

ベリアル

決断早くない？

ウピル

書いてあることがまずめちゃくちゃだろうが

ウピル

主様は人間を知っている

ウピル

今更なにを……

アベリア

……でもさ

アベリア

これに僕達が賛成してシュガーの逃げ道を無くせばシュガーは仮装してくれるんでしょ？

アベリア

僕、シュガーの仮装みたいな

ウピル

……確かに、言われてみればそうですね

ウピル

主様いつも買った服着てくれませんし…

クルト

それとこれとは話が別だよウピル

ウピル

おや、そうですか

ベリアル

まぁ大天使様の言う通りだと俺も思います

ベリアル

ってことで主様、仮装しますか

クルト

そんなお茶飲も的なノリで！？

クルト

え？なに？これ……

アベリア

ほらほら、もう逃げ道は無いよ？

クルト

アベリアお前な……

ウピル

私も見たいです！主様！

ベリアル

俺も結構気になります

クルト

……お前ら

アベリア

ね？お願いシュガー

クルト

…………………分かったよ

クルト

やればいいんだろ！？やれば！！

こうして、クルトの貴重な休みは

｢ハロウィン｣という謎の行事に潰され事になったのであった

クルト

と、張り切ったのはいいけど

クルト

仮装ってなにするの？

アベリア

要はいつもより妖魔に似た服着ればいいんでしょ？

ウピル

いえ、そういう訳でもないそうです

ウピル

｢何かいつもとは違う種族などに化ける｣と書いてあります

ベリアル

…へぇ、面白そう

クルト

じゃあ、悩んでも仕方ないし時間決めてまたここに集まる？

アベリア

さんせ〜

ウピル

私はメイド姿が仮装みたいなものなのでここで待機します

ベリアル

俺はなにか探してきます

クルト

ん〜じゃあ……

クルト

夜、またここで

ウピル

……おや？一番乗りは……

ウピル

……誰？

ベリアル

……いや俺です

ウピル

いや分かるけど

ウピル

首筋の眷属の証で分かるけど

ウピル

……ねぇ、なんで

ウピル

よりによって｢女装｣なの！？

ウピル

しかも結構似合ってる……

ベリアル

……悩んでいる途中で主様に見つかって

ベリアル

やむを得なくこの姿に……

ウピル

……だけど

ウピル

元々美形なだけあって見た目だけは綺麗だな

ウピル

どこぞの令嬢かと思ったぞ

ベリアル

まじくっそ失礼だね！？

ベリアル

俺男だよ！？

ベリアル

なんにも嬉しくないよ！？

ウピル

あっそ

ベリアル

つわ冷たい……

アベリア

あれ？僕が1番だと思ったんだけどね

アベリア

ベリアルに先を越されちゃったか

ベリアル

大天使……様…？

アベリア

ん？そうだよ？

ウピル

……何故、吸血鬼に？

アベリア

仮装だけど

ウピル

いや分かってはいますが……

ウピル

何故それを……？

アベリア

気分？

ベリアル

……な、なるほど…

クルト

……あれ？ボク最後？

クルト

結構早く来たつもりだったんだけど

クルト

ごめん、待たせた？

クルト

……？

クルト

なんで皆黙ってるの…？

ウピル

あ…あ…

ウピル

主様……もしやそれは……っ

ベリアル

いや……何故それを！？

クルト

え？いやなんとなく

クルト

気分で

ベリアル

……いつもと真反対過ぎませんか？

クルト

そう？

アベリア

シュ……シュガー……

クルト

ん？なに？

アベリア

かっ…

クルト

かっ？

アベリア

かっこいい〜！！！

アベリア

え！？初めて見た！！

アベリア

シュガー思っていたよりかっこいい路線が似合うね！！

クルト

は？はぁ？

そう、実はクルト

適当に見つけた｢天使｣の仮装に身を包んでいた

透き通るような白髪に

その白さの中輝く赤い目

普段も確かに白っぽい服を着てはいるが

それとこれとは話が別である

いつもの柔らかい雰囲気はどこへ消えたのか

そこには凛々しい表情をした天使｢クルト｣が居た

まるで、本物の天使のような

アベリア

シュガー、やっぱり君天使だよ

クルト

ボクは吸血姫だよ

アベリア

えぇ？嘘じゃないそれ？

アベリア

どっからどう見ても天使だよ今の君は

アベリア

見た目的にも、威圧的にも

アベリア

君に天使の素質があったら確実に大天使になれてるね

クルト

お前それ褒めてんの？

アベリア

べた褒めだけど？

クルト

つかなんでお前も吸血鬼なんだよ

クルト

お前こそ天使で良かっただろ

アベリア

だってそれじゃいつも通りじゃん？

クルト

確かにそうだけど……

クルト

……まぁいいや

クルト

これを国民全員に見せるのが目的でしょ？

クルト

さっさと終わらせるよ

尚、国民達は普段見ないクルトの姿に惚れ込み

来年もぜひ！と言われたがアベリアが即却下していた

アベリア

あれ？シュガー？

クルト

……アベリア

アベリア

なんでここに？

クルト

いや、なんとなく？

クルト

せっかくいつもと違う格好してるからな

クルト

ちょっと浮かれてる

アベリア

らしいね、シュガー

クルト

……

アベリア

……

クルト

……ねぇ

アベリア

ん？

クルト

なんで仮装を吸血鬼にしたの？

クルト

｢普段とは違う種族になる｣っていうルール無視してない？

アベリア

失礼な、普段は｢大天使｣だよ？

クルト

…まぁ、そうだけど……

クルト

でも……

アベリア

それに

アベリア

これを知るのは君だけでしょ？シュガー

クルト

……それは、そうだけど

アベリア

なに？そんなに嫌？

クルト

いや、違う

クルト

ただ、なんとなく……ね？

アベリア

ん〜今日のシュガーは昔みたいだ

アベリア

そっちはそっちで好きだけど

クルト

お前なぁ……

クルト

……あ、そうだ

アベリア

ん？今度は何？

クルト

ハロウィンってね、子供がお菓子をねだりにくるらしいんだよ

アベリア

へぇ、可愛いじゃん

クルト

ということでアベリア

アベリア

……ん？

クルト

お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ〜

アベリア

え……

アベリア

？？？？？？？？？？？

クルト

……え

アベリア

いや持ってないよ？

クルト

え？

アベリア

だから持ってないってば

クルト

いや……え？嘘でしょ？

アベリア

ほんとほんと

アベリア

はい、じゃあこれ

そういい手首を出してくるアベリア

アベリア

｢イタズラ｣、してみてよシュガー

クルト

えぇ……？本気？

アベリア

僕はいつだって本気だよ？

クルト

え？ほんとにいいの？

にこっと笑うアベリア

しょうがないかと少し笑い、アベリアの手首を容赦なく噛むクルト

まるで、過去のひとつの記憶を再現しているように

流れるように事は行われる

そもそも、何故吸血鬼は血を吸うのか

諸説あるが、この世界では｢術の発動に必要な力を補う為｣である

高貴になればなるほどその術に必要な力を吸血以外でも得られるようになる

故に、低級な吸血鬼ほどよく吸血をする

ちなみに、眷属にもこれは発動する

眷属も元と主が弱ければ低級の吸血鬼と同じことをしなければならない

むしろ逆に元々素質があり高貴な人を用意して最上位にいる吸血鬼が眷属とすれば

吸血などしなくても術を発動出来るのだ

故に高貴な吸血鬼ほど人間への擬態が上手くなる

ちなみに、別に術を発動しなければいい話なのでほぼ術を使えない眷属は吸血の意味が無いのである

極稀に眷属化しても術を発動出来るしその力の威力が増す奴もいるが

それは本当に素質としか言いようがない

そして

吸血する血に善し悪しは少なからず存在する

それはその個体の素質としか言いようがない

素質が高く生まれやすいのが人間というだけ

他のでも一向に構わないが、眷属化した元人間のみは不可能である

自分の血を飲んでも美味しくないし力など貰えない

それは眷属も同じである

要は、同族の血は美味しくないし利用価値もないという訳である

……では、天使の血は？

天使とは吸血鬼と対になる存在で、もちろんその血など飲もうとすればこちらが死ぬだけである

なのに、クルトは容赦なく大天使であるアベリアの手首を噛んだ

天使の血は、禁忌である

吸血鬼でも触れるだけで相当凄い

それを口に含んでも、ましては飲み込んでも大丈夫なのはクルトが世界に愛されているとしか言い様がない

クルト

……アベリア、お前わざとだな？

アベリア

あれ、バレた？

クルト

分からないとでも？

アベリア

流石、シュガーだね

クルト

昔のボクみたいだからってあれまで真似させるのはちょっとじゃない？

アベリア

でもやってくれたじゃん

アベリア

どうよ、久しぶりの感覚は

クルト

……悪くなかった

アベリア

素直じゃないなぁシュガーは

アベリア

そんなところも好きだけど

アベリア

ってことではい、これ

クルト

おっ！！

目の前に置かれるいちご系のお菓子達

そう、実はアベリア

お菓子を持っていたのにも関わらずクルトが何をするのか、自分が強請ったらやってくれるのか気になってわざとお菓子を隠したのである

クルト

あ、これ美味い

アベリア

ねぇシュガー

クルト

ん？

アベリア

来年はさ、皆巻き込んでやりたいよね

クルト

さぁ？来年までに間に合うか分からないよ

クルト

物語は序章をすぎて、まだ第1章しか終わってない

クルト

その時までに世界がどうなっているかはボクにすら想像出来ない

アベリア

まぁ、もし間に合ったらみんなでやろう

アベリア

今度はもっと盛大に

クルト

……いいね、賛成

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国民天才すぎん？？クルトさんが仮装するのを拒否しないようにするために国民が協力し合って署名するとかさ！署名の力恐るべし……🫢💦 アベリアさんとクルトさん、2人だけのあそこの場面では2人だけだからこそ許される行動なのかな、とかお互いがお互いを信じ合ってる絆を感じた後にコメント読んだらもううわああ……！！！って感情が一気に溢れた😂😂