幼い頃に亡くなってしまったおばあちゃんの忘れ形見…
朱里
はー!も!まじ疲れた!

お母さん
じゅり!ちょっと脱いだものは洗濯カゴ!

朱里
はいはい…

お母さん
もう。食べたら食器ぐらい片付けなさいよ!

朱里
っるさいなー!

妹
そうよ。もうお姉ちゃん高校生でしょ?

妹
私でさえ食器洗ったりしてるのに…

朱里
ってめぇは関係ねぇだろうが!!

妹
うっわ。反抗期ー

朱里
ざけんなや!!!

お母さん
じゅり!!!

朱里
…っ!

お母さん
お父さんもですよ!

お母さん
私ばっかり注意して、あなたも何か言ってやって下さいよ!!

お父さん
私も、会社で疲れてんだ。

お父さん
そういうのはお前に任せてんだろ。

朱里
母さんも親父みたく他人事でいればいいでしょ

お母さん
何を言うのあんたは!

お母さん
私はあんたのためを思って…

妹
ね、お母さんおかわりー

口うるさいし嫌味ったらしいし自由にさせちゃくんない…
朱里
(あれ?

朱里
(昔のプリ帳どこやったっけ?

朱里
(確かここ…

朱里
あっ。

朱里
やー!懐かしい!!

ダンボールに詰め込んだままにしてあった3匹のテディベアが見つかった。
朱里
やだwめっちゃ埃被ってるじゃんw

朱里
(…おばあちゃん…

朱里
飾ったら可愛いしこれも出しておこっ

おばあちゃん
これがお母さんテディベア、これがお父さんのテディベア、これは子供のテディベアよ。

朱里
んわぁ!かわいい!

朱里
じゅり大切にするね!

妹
えー!いいなー!いいなー!私もそれ作ってみたい!

おばあちゃん
はいはい。わかりましたよぉ

おばあちゃんの家でいつもご飯を食べたり、裁縫を教えてもらったり。
お母さん
じゅり!

お母さん
ちょっとこっちに来なさい!!

朱里
え、なに?

お母さん
私達からお話があります。

朱里
は?なんだっつーの

お父さん
いいから座りなさい…

朱里
…。

お母さん
あのね、じゅり。

お母さん
この頃のあなたの態度には目にあまるものがあります。片付けもしない、勉強もしない、学校も休みがち、お金も無駄遣い。

お母さん
あなたには自己管理力がないのよ。

お母さん
だからあなたには一人暮らしをしてもらいます。

朱里
は?!

朱里
なんでいきなり!!

お父さん
お前ももう高校生だ。

お母さん
佐藤さん家の娘さんも遠くの学校通うためにちゃんと一人暮らしとアルバイトしてるのよ

朱里
え!意味わかんね!人は人だろ!関係ねぇし!!

お父さん
家賃だけはだしてやる。

お父さん
あとは自分で生活してみなさい。

朱里
は?意味不だわ!

朱里
育児放棄だろそれ!

朱里
勝手に産むだけ産んで面倒になったら捨てるとか親のすることかよ!!

お母さん
じゅり!私達はあんたの事を思って!

朱里
そういうのが押し付けがましいんだよ!!!

朱里
あー!!もう!!イライラして寝付けねぇ!!

朱里
ぁんだよ!今まで散々放置してきていきなりしっかりしろだなんて勝手すぎんだろ!!

朱里
はぁ…

朱里
…。

朱里
まじむかつく!むかつく!こうしてやる!!!

私は自分のストレスをぶつけるためにカッターでテディベアの手や足を切り倒した。
朱里
むかつくむかつくむかつく!!

朱里
しね!しね!しね!!

朱里
お母さんも!お父さんも!!

朱里
なんで分かってくんないの!!

朱里
私も…私もなんでこんな駄目なやつになっちゃったんだろう…

朱里
くそおっ!!

子供のテディベアの腹にカッターを突き付けようとした瞬間だった。
妹
きゃぁぁぁぁぁぁあ!!!!!

朱里
なに!!どうしたの!?

妹
あ、あれ…お母さん?

妹
お父さんな、の?

目の前には首や手足の千切れ真っ赤に染まった両親の姿があった…
朱里
う、嘘…

朱里
そ、そんな…

妹
な、なんなのこれ…お姉ちゃん?

朱里
も、もしかして、…

朱里
このテディベアが…?

妹
お、お姉ちゃ…

妹
く、首が…

朱里
っ、え。

ほつれたテディベアの首と一緒に、私は地面へ落っこちた。
妹
いやああああああああ!!!!!

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お母さん
じゅり!

お母さん
起きなさい!じゅり!

朱里
ん…あれ。

朱里
え。私、生きてる!生きてる!!

お母さん
なに言ってるのあんたは…

朱里
お母さん!お母さん!!

朱里
ごめんなさい!ごめんなさい!!

お母さん
やだよぉ。なにいきなり…どぉしたの…

朱里
んーんなんでもない。

朱里
でもよかった…。ほんとよかった!!

お母さん
ほら、学校いく用意しなさい。

朱里
うん!

お父さん
なんだ。騒がしい…

朱里
お父さん!

朱里
よかった!お父さんも無事だったんだね…

お父さん
なにを寝ぼけてるんだ…

朱里
んーん。ほんとよかった。

朱里
お母さん、お父さん。ほんと今までごめんなさい…。

朱里
私、お父さんもお母さんも大事…

朱里
だからもうちょっと頑張ってみる!!

お母さん
あらあら変な夢でも見たのかしらね?

お父さん
お母さん、ネクタイ選んでくれ

お母さん
はいはい

朱里
(そっか、よかった。

朱里
(あれは悪い夢だったんだ…きっと…。

朱里
…。

朱里
そういえば…あのテディベア達はどうなってるんだろう…

妹
あ、お姉ちゃん起きたんだ?

机の上には4匹のテディベアが綺麗に並べられていた。
妹
感謝してよねー。

朱里
へ?

妹
私が裁縫できなきゃお姉ちゃんまじ死んでたんだからw

朱里
う、嘘!あれ本当だったの!

妹
まじまじ

妹
あの後もしかしたらって思ってさ、おばあちゃんから貰った裁縫道具で縫い直してみたの。

妹
そしたらみんな元に戻って眠ってたんだからw

朱里
う、うそぉぉ…

朱里
うわっあ

妹
ちょ泣くなよー!

朱里
ありがとおおおおおお

妹
やだもー!気持ち悪いーっw

朱里
あんたがいてくれてよかった、本当ごめんね!ごめんね!

妹
いいようwあ、でもラーメン奢ってよね?w

朱里
うぐっ、うぐっ、三杯でも大盛りでもなんでも食べてぇ…

妹
はいはいw泣き止め泣き止めw

でもどんなに文句を言われようと、どんなに憎まれ口を言われようとも。
朱里
そういえばこのテディベアは?

妹
それ私が昔自分で作ったやつw

朱里
へーあんた以外に器用なんだね。
