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#ドラマ
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家全体が静まり返った夜。
電気が消え、廊下の気配も止むと、
凪はようやく息ができる気がした。
だけど——
安心なんて、どこにもなかった。
布団に潜り込んだ凪は、
目だけが暗闇に向かって開いている。
胸の奥が、じんじん痛かった。
雨宮 凪
学校の笑顔も、
昼間の声も、
この暗い部屋の中では全部遠くなる。
代わりに浮かんでくるのは、 兄姉の声。
「気持ち悪い」
「カス」
「泣き虫菌」
どれも耳から離れない。
言葉なのに、 体のどこかが本当に痛くなる。
凪は枕に顔を押しつけ、 声を出さないように息を震わせた。
涙が溢れて止まらない。
泣くと、また怒られる。
また笑われる。
だから絶対に声は出せない。
でも、泣くのは止められなかった。
雨宮 凪
家族なのに。
同じ屋根の下なのに。
どうしてこんなに怖いのか、 凪には分からなかった。
それでも凪は、 誰にも言えない。
言ったら、
もっと怖いことが 起きる気がして。
布団の中は暗くて狭いはずなのに、
凪にはひとりの世界みたいに 広く感じた。
涙が静かに枕へ落ちていくたび、
胸が少しずつ熱くなっていく。
雨宮 凪
小さな声でつぶやいた。
誰にも届かない声で。
凪がやっと目を閉じたのは、 涙が尽きた頃。
そのまま眠りに落ちていく瞬間、
胸の奥に、 小さな傷みだけが残っていた。
——誰にも言えないまま。