呪讐の館

私は床に落ちたスマホを呆然と 見つめていた。

画面は血で汚れているが、そこに写っているのは紛れもなくちひろだった。

奈々美は何かに気づいたように、 ハッとした表情になった

怯え切った奈々美に突き飛ばされ、 私は後ろに倒れた。

そう叫ぶと、奈々美は走っていった。

家を飛び出し、無我夢中で走る 後ろ姿を必死で追いかけた。

外は暗く、冷たい雨が降っていた。

奈々美がいた場所の真上では、 建物の解体作業が行われていた。

嫌な予感がして、思わず叫んだ。

ガランガラン！！

作業員が運んでいた鉄骨の束が、突然 空中で解けて落下した。

ドスッ

鉄骨の一本が、奈々美の腹部を 貫いていた。

鉄骨の刺さった腹部からは止めどなく 血が流れている。

私はしばらくの間、腰を抜かして その場に座り込むしか出来なかった。

その時、不意に着信音が鳴った。

それは、通行人の誰かの電話だった。

しかし、私は恐怖に負けて耳を塞ぎながらその場を逃げ出してしまった……

泣きながら闇雲に走り回り、 気づけば真夜中になっていた。

夜の街を彷徨っているうちに、私は タチの悪い男に目をつけられてしまったようだった。

物陰から現れた冬原さんは、 男に催涙スプレーを浴びせると 私の手を引いて走り出した。

私は冬原さんに手を引かれながら夜の道を歩いた。

優しい口調に、自然と心が緩んだ。

私は堪えきれなくなって、冬原さんに呪いのことを全て打ち明けた。

冬原さんは、私の手を握る力を強め、さっきより早足で歩き始めた。

手を引かれてたどり着いたのは、 あの呪われた館の門の前だった。