エリス
これで見苦しいとは誰も言うことは出来ないでしょう
エリス
鏡を見てごらんなさい
太田豊太郎
………………
エリス
なぜそんな不機嫌な顔をしているの?
エリス
私も一緒に行きたいところだけど……
太田豊太郎
と、エリスは少し様子を改めて、
エリス
いやだわ、
エリス
こんなふうに服装を改めたら、なんとなく私の豊太郎じゃないみたい
太田豊太郎
また少し考えて、
エリス
ねえ、トヨ、
エリス
たとえお金持ちになったとしても、私を見捨てないでね
エリス
私の病気が母の言うようなものじゃなかったとしても
太田豊太郎
えっ、お金持ちだって?
太田豊太郎
俺は微笑した。
太田豊太郎
政治の世界などに打って出ようという望みは捨ててからもう何年もなるのに
太田豊太郎
大臣には会いたくもない
太田豊太郎
ただ、ずいぶん前に分かれた友人に会いに行くんだ
太田豊太郎
エリスの母が呼んだ一等辻馬車は、車輪をきしませながら雪道の中を窓の下まで来た。
太田豊太郎
俺は手袋をはめ、少し汚れた外套をはおって、
太田豊太郎
帽子を取ってエリスにキスをして、階段を下りた。
太田豊太郎
彼女は凍った窓を開け、乱れる髪を逆風に吹かれるまま、俺が乗った車を見送った。
エリス
………………
太田豊太郎
俺が車を降りたのは高級ホテル・カイザーホーフの入口だった。
太田豊太郎
門番に秘書官相沢の部屋の番号を聞いて、
太田豊太郎
長い間踏んでいなかった大理石の階段をのぼり、
太田豊太郎
中央の柱にビロードをかぶせたソファを置いて、正面に鏡をたてている広間に入った。
太田豊太郎
外套はここで脱ぎ、廊下を通って部屋の前まで行ったが、
太田豊太郎
……俺は少しためらった。
太田豊太郎
同じ大学にいた頃、
太田豊太郎
俺が品行方正なのをとてもほめていた相沢が、
太田豊太郎
今日はどんな顔をして出迎えるだろうか……
相沢と再会のときが来た。続く。






