テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#執着
猫とろ
754
桃下結衣
491
#ロマンスファンタジー
Jasmine
903
#狂愛
柏木さくら
1,928
早坂
早坂
遥
遥
遥
早坂
遥
ビール缶を叩きつけるようにテーブルに置く。
悔しいけど早坂の言うことはもっともだ。
でも不満をぶちまけたくて、一旦気を落ち着かせてから口を開く。
遥
早坂
早坂
遥
早坂
早坂
遥
早坂
早坂の態度は素っ気ない。
呆れ顔でビールに口をつけ、それでも私の愚痴に耳を傾けてくれる。
――半年前まで付き合っていた人。
青木 忍(あおきしのぶ)さん。
一人飲みバーでお酒を嗜んでいた時、彼から話しかけられたのが交際のキッカケだった。
私よりも3つ上で、大手企業の営業社員。 不動産業界のブランドと謳われる、有名な大企業に勤めている。
ただ惹かれたのは、キャリアや年収の面じゃない。彼の内面だ。
丁重な態度を崩さず、常に紳士的で上品な対応で。 学歴や収入、羽振りの良さを鼻にかけない、性格も温和で穏やかな人柄。 そんな彼の立ち振る舞いに好感を覚えた。
バーで顔を合わせる度に、2人で話す機会も増えた。
次第に連絡を取り合う仲になり、店以外で会う機会も増えた。
交際が始まってからは、私の部屋で一緒に宅飲みする日も多かったように思う。
多忙な彼とのデートは指折り数える程度だったけど、それでも私は彼との交際に、不満なんてなかった。
青木さんはいつだって優しかったし、会えない日はメールや電話を欠かさないでくれた。 その細やかな配慮に何度舞い上がったことだろう。
多忙の身でありながら、それでも僅かな時間を削って会いに来てくれる彼に不満なんてあるわけがない。
むしろ感謝していたし、将来結婚するならこの人だろうなって、そう信じて疑わなかった。
――実は既に結婚していて、現在妻と子と一緒に暮らしてるって自己申告されるまでは。
早坂
遥
早坂
早坂
遥
きっぱりと答えれば、早坂は面食らったような顔をした。
遥
遥
すごいよね人間って。 あんなに燃え上がるような恋をしてたのに、熱が冷めるのは一瞬だったもん。
遥
遥
早坂
遥
遥
そして話は振り出しに戻る。 ムカムカとした怒りがまた湧き上がってきた。
遥
遥
早坂
遥
遥
遥
早坂
遥
遥
早坂
遥
私がどんなにヒートアップしても、早坂はいつも冷静沈着だから助かります。
遥
早坂
遥
遥
早坂
空気が重くならないように茶化してみたけど空振りした。どうやら裏目に出たらしい。
とはいえ、早坂に不機嫌な様子はなかった。
突然こんな話を延々と聞かされて、面倒だと思われても仕方ないのに。
でも早坂は何も言わない。 否定したり、一方的に説教することもなく、まず私の主張を優先的に聞いてくれる。
そのお陰で私はストレスを感じることもなく、心の奥に溜まっていた鬱憤を晴らすことができた。 早坂の神対応に感謝するしかない。
遥
遥
青木さんに会える日はほぼ限られていた。
それは平日の深夜帯。
週末に会えることはほとんどなかった。
思えば自宅に呼ばれたことすらない。
4年も交際しておきながら、その淡白すぎる付き合い方は誰がどう考えてもおかしいのに。 そんな疑問すら抱かずに過ごしていた私は間抜け以外の何者でもない。
彼の中では基本、家族優先。 私はただの暇潰し程度でしかなかった。
言わなければバレないと思われていた時点で、ただの都合のいい女でしかなかったんだ。
でも、これは私視点の話。
彼の奥さんの立場から見れば、青木さんのしたことは立派な浮気。
そして私達がしていたことは不倫行為。 その事実は変わらない。
知らなかったで済ませていい問題じゃない。早坂の言う通り、不倫は不倫でしかないのだから。
もし私が奥さんの立場だったら、絶対に相手の女を責めるだろうし、旦那にいたっては半殺しにするかもしれない。
不倫は美徳じゃない。 誰かを傷つける行為だから。
遥
遥
遥
その決断に至るまで、結構な時間を有した。
全く葛藤がなかったわけじゃない。
百年の恋も冷めるとは言っても、彼とは4年も交際を続けてきたんだ。
あの人への想いを簡単に断ちきれるほど、私の気持ちは軽くはない。
それは口に出さずとも、早坂には伝わっていたようだ。 だから私を責めなかったのだと思う。
その当人は今、空になった缶ビールをゴミ袋にまとめている。
これでお開きにするつもりらしい。
遥
終電の時間は既に過ぎている。 タクシーで帰るつもりなのかもしれない。
早坂
遥
遥
早坂
何気なく発した提案に彼の動きが止まる。
私を凝視しているその顔は、信じられない、と言いたげな表情が読み取れて。
遥
早坂
遥
早坂
遥
早坂
深くため息をつく早坂は呆れ顔だ。
早坂が何を言いたいのか、それくらいはわかるけど。
遥
早坂
遥
遥
カラカラと軽快に笑い飛ばす。 早坂とどうこうなる展開なんて、正直想像もできない。
根強い仲間意識がある上に、それなりに長い期間、友人関係を築いてきた相手に、今更どう危機感を抱けというのか。
早坂の発言を一笑し、私は残り僅かになった量のビールを飲み干した。
遥
早坂
遥
早坂
早坂
遥
早坂
遥
早坂
しつこさに定評のある私が勝利をもぎ取りました。先に折れてくれたのは早坂の方だった。
それからの流れは早かった。
時間は既に深夜1時。 順番に入浴してから、私はベッドの中に潜り込んだ。
早坂には来客用の毛布を渡してある。
ソファーで寝るとか言い出したから、隣で添い寝はいかがでしょうかと冗談交じりに誘ってみた。めっちゃ嫌そうな顔された。 そこまで嫌がることないのに。
遥
遥
恋愛感情を持たない男女が、ひとつのベッドで一緒に寝ること。
最近はソフレなんて言葉が流行ってるけど、倫理的にどうなんだろう。 私にはわからない。
それでもひとつ、ハッキリと言えること。
もし早坂と一緒のベッドで寝たとしても、絶対に何も起こらない。 その自信だけはある。
過ちなんてありえない。 男女の関係になんて絶対にならない。
そう断言できるほど、私は早坂を信頼していた。
彼とこれまで築き上げてきた友情は決して揺らがないと、そう信じて疑わなかった。
コメント
3件

うわ、しつこ でもめっちゃおもろい

めちゃくちゃ良かったっす
第2話、読みました。遥の「知らなかった」という後ろめたさと、「でも未練はない」という割り切りがすごくリアルで、胸がぎゅっとなりました。早坂が「危機感とかねぇのかよ」って呆れながらも結局泊まる流れ、絶対に何も起こらないと信じきってる遥の自信が逆に微笑ましくて…。この2人の距離感、すごく好きです。続きが気になります🕊️