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早坂
早坂
遥
遥
遥
早坂
遥
ビール缶を叩きつけるようにテーブルに置く。
悔しいけど早坂の言うことはもっともだ。
でも不満をぶちまけたくて、一旦気を落ち着かせてから口を開く。
遥
早坂
早坂
遥
早坂
早坂
遥
早坂
早坂の態度は素っ気ない。
呆れ顔でビールに口をつけ、それでも私の愚痴に耳を傾けてくれる。
――半年前まで付き合っていた人。
青木 忍(あおきしのぶ)さん。
一人飲みバーでお酒を嗜んでいた時、彼から話しかけられたのが交際のキッカケだった。
私よりも3つ上で、大手企業の営業社員。
不動産業界のブランドと謳われる、有名な大企業に勤めている。
ただ惹かれたのは、キャリアや年収の面じゃない。彼の内面だ。
丁重な態度を崩さず、常に紳士的で上品な対応で。 学歴や収入、羽振りの良さを鼻にかけない、性格も温和で穏やかな人柄。
そんな彼の立ち振る舞いに好感を覚えた。
バーで顔を合わせる度に、2人で話す機会も増えた。
次第に連絡を取り合う仲になり、店以外で会う機会も増えた。
交際が始まってからは、私の部屋で一緒に宅飲みする日も多かったように思う。
多忙な彼とのデートは指折り数える程度だったけど、それでも私は彼との交際に、不満なんてなかった。
青木さんはいつも優しかったし、会えない日は電話やメールを欠かさないでくれた。
その細やかな配慮に、何度舞い上がったことだろう。
多忙の身でありながら、それでも僅かな時間を削ってまで会いに来てくれる彼に、不満なんてあるわけがない。
むしろ感謝していたし、将来結婚するならこの人だろうなって、そう信じて疑わなかった。
・ ・ ・
・ ・ ・
――実は既に結婚していて、妻と子と一緒に暮らしてる、って自己申告されるまでは。
早坂
遥
早坂
早坂
遥
きっぱりと答えれば、早坂は面食らったような顔をした。
遥
遥
すごいよね、人間って。 あんなに燃え上がるような恋をしてたのに、熱が冷めるのは一瞬だったもん。
遥
遥
早坂
遥
遥
そして話は振り出しに戻る。
ムカムカとした怒りがまた湧き上がってきた。
遥
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早坂
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早坂
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早坂
遥
私がどんなにヒートアップしても、早坂はいつも冷静沈着だから助かります。
遥
早坂
遥
遥
早坂
空気が重くならないように茶化してみたけど空振りした。どうやら裏目に出たらしい。
とはいえ、早坂に不機嫌な様子はなかった。
突然こんな話を延々と聞かされて、面倒だと思われても仕方ないのに。
でも早坂は何も言わない。 否定したり、一方的に説教することもなく、まず私の主張を優先的に聞いてくれる。
そのお陰で、私はストレスを感じることもなく、鬱憤を晴らすことができた。
早坂の神対応に感謝するしかない。
遥
遥
青木さんに会える日は限られていた。
それは平日の早朝や深夜帯。
週末に会えることはほとんどなかった。
思えば自宅に呼ばれたこともない。
4年も交際しておきながら、その淡白すぎる付き合い方はどう考えてもおかしいのに。
そんな疑問すら抱かずに過ごしていた私は、間抜け以外の何者でもない。
――彼の中では基本、家族優先。
私はただの暇潰しでしかなかった。
言わなければバレないと思われていた時点で、都合のいい女でしかなかったんだ。
でも、これは私視点の話。
奥さんの視点から見れば、青木さんのしたことは立派な浮気。
そして私達がしていたことは不倫行為。
その事実は変わらない。
だから、「知らなかった」で済ませていい問題じゃないんだ。
早坂の言う通り、不倫は不倫でしかないのだから。
遥
遥
そうだ、不倫恋愛は美徳じゃない。
多くの人を傷つける、最低な行為だ。
遥
遥
遥
その決断に至るまで、結構な時間を有した。
全く葛藤がなかったわけじゃない。
百年の恋も冷めるとは言っても、彼とは4年も交際を続けてきたんだ。
あの人への想いを簡単に断ちきれるほど、私の気持ちは軽くはない。
……それは口に出さずとも、早坂にはちゃんと伝わっていたようで。
だから私を一方的に責めなかったのだと思う。
その当人は今、空になった缶ビールをゴミ袋にまとめている。
これでお開きにするつもりらしい。
遥
終電の時間は既に過ぎている。
タクシーで帰るつもりなのかもしれない。
早坂
遥
遥
早坂
何気なく発した提案に、彼の動きが止まった。
私を凝視しているその顔は、信じられない、と言いたげな表情が読み取れて。
遥
早坂
遥
早坂
遥
早坂
深くため息をつく早坂は呆れ顔だ。
彼が何を言いたいのか、それくらいはわかるけど。
遥
早坂
遥
遥
カラカラと軽快に笑い飛ばす。
早坂とどうこうなる展開なんて、正直、想像もできない。
根強い仲間意識がある上に、それなりに長い期間、友人関係を築いてきた相手だ。
そんな相手に今更、どう危機感を抱けというのか。
早坂の発言を一笑し、私は残り僅かになったビールをグイっと飲み干した。
遥
早坂
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早坂
早坂
遥
早坂
遥
早坂
しつこさに定評のある私が勝利をもぎ取りました。 先に折れてくれたのは早坂の方だった。
それからの流れは早かった。
時間は既に深夜1時。 順番に入浴してから、私はベッドの中に潜り込んだ。
早坂には来客用の毛布を渡してある。
ソファーで寝るとか言い出したから、一緒に添い寝はいかがでしょうかと冗談交じりに誘ってみた。めっちゃ嫌そうな顔された。
そこまで嫌がることないのに。
遥
遥
恋愛感情を持たない男女が、ひとつのベッドで一緒に寝ること。
最近はソフレなんて言葉が流行ってるけど、倫理的にどうなんだろう。私にはわからない。
それでもひとつ、ハッキリと言えること。
もし早坂と一緒のベッドで寝たとしても、絶対に何も起こらない。その自信だけはある。
――過ちなんてありえない。
男女の関係には絶対にならない。
そう断言できるほど、私は早坂を信頼していた。
彼と築き上げてきた友情は決して揺らがないと、そう信じて疑わなかった。
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