ふぅ、と一呼吸置いてから、 辺りを見回す。
眠気でぼんやりしていた頭は、 もうすっかり冴えてしまっていた。
周りの景色を確認すると、
もう一度深呼吸をし心を落ち着けて から、またぐるりと周囲を見渡した。
知らない路地裏の風景が広がっているのを確認し、私はため息を吐く。
この現実を受け入れたくなくて、私は先程から何度も同じ行為を繰り返していたのだった。
私はまぶたを閉じ、朝の出来事を 思い出していた。
朝、といっても、つい先程のことなの だけれど。
今日は珍しく、雪が降った日だった。
冬の寒さと布団の誘惑に負けた私は 案の定寝坊してしまう。
急いで鞄に教科書やら財布やらを 詰め込み、家を飛び出したが
途中で赤信号に捕まってしまった。
そこで、信号がもう少しで青に 変わる、という時だったと思う。
横切ったトラックのミラーが、太陽を映し強くった。
次の瞬間、私の視界は真っ白になる。
最初はただの反射だろうと思ったが
再び目を開けると、この場所にいた。
今は夜なのだろうか。
家を出てから時間は経っていない はずだが、何だか暗い。
空を見上げると、金色に輝く月が あった。
ふと、肩の負担が感じられないことに気づいた。
急いで詰め込んだはずの教科書も 家の鍵も、財布も
肩にかけていた鞄丸ごと なくなっていた。
警察官
警察官
遠くから警官と女の人の声が聞こえた
自分の置かれている状況を思い出し、額からじわりと汗が吹き出す。
離れよう)
私は明かりが見える方向に向かって 駆け出した。
狭い路地裏を抜け出した先に、 車通りの多い交差点が見えた。
しかし、何だろう。
交差点を前にして、どうしようもない 違和感に襲われる。
何か、が違う気がする。
やめよう)
今はとにかく体を動かしていないと、頭がおかしくなりそうだった。
信号の青が見えたため、私は 走るスピードを上げた。
誰かに腕を掴まれ、
私の体は横断歩道の前で急停止する。
その直後、スピードを出した車が 目の前を通り過ぎていった。
学生ちゃん
恐る恐る後ろを振り返ると、微笑んだ 男性と目が合った。
こういうのを、〝パズルのピースが合わさった〟というのだろうか。
その時私は唐突に理解した。
きっと、ここは
鏡の中の世界なのだ、と。