消える前に。
俺は実験に使われた
従業員
従業員
部屋の中に放り投げられ冷たい言葉を浴びせられた
もう慣れているはずなのに胸がチクリと痛む
いるまくん
いるまくん
いるまくん
すちくん
いるまくん
すちくん
いるまくん
こいつはすち。俺が11の時、ルームメイト相手に選ばれた
すちくん
サーッ
すちが俺に触れるとみるみるうちに俺の身体から傷が消えていく
すちは回復魔法の実験体になったから
俺が実験に使われたあと、回復魔法を使い治してくれるのだ
すちくん
いるまくん
すちくん
いるまくん
すちくん
いるまくん
すちは一瞬顔を酷く歪めたが
楽しそうに
すちくん
いるまくん
すちくん
すちの表情は恐怖の欠片もなく、むしろ穏やかな笑みだった
いるまくん
すちくん
すちくん
千年。
すちくん
いるまくん
すちくん
すちくん
五千年だよ
隣がどんな子だったか脳内の記憶を探る
黄土色の髪に薔薇の様な綺麗な赤色の瞳。
透明感のある水色の髪に透き通るような肌。
そう。神田菜月と愛蔵こさめだ
いるまくん
つい最近といっても二百年前にここに二人が来て以来、
毎日のように実験に使われているのを見ている。
すちくん
すちくん
??
??
??
??
隣で泣き声が聞こえた。
声を聞く限り、前回のルームメイトだったらんだろう。
いるまくん
すちくん
みことは前回、すちのルームメイトだった
黄色の髪にひまわりのような元気のいい瞳の色が特徴的な
いつでも笑顔を絶やさない変な奴。
すちくん
すちくん
すちがうっすら涙を浮かべた
いるまくん
すちくん
眉を下げるすちを見ると毎回胸が酷く痛む
みことくん
??
らんの肩がわざとらしいくらいに跳ねた
みことくん
??
??
みことくん
従業員
みことくん
従業員に腕を掴まれ二人は奥の実験室へと姿を消した
すちくん
すちは俯き、一言も喋らないまま涙を流していた
いるまくん
俺は微かに震えているすちの肩をそっと抱いた
すちの肩は一瞬ピクリ跳ねたが俺を抱き返してくれた
どのくらい寝ていただろうか。気付けば先程の研究者が戻ってきていた
従業員
すちくん
いるまくん
すちが俺の腕の中へ倒れ込んだ。
嗚咽を零しながら必死に声を押し殺している
すちは俺よりずっと前にここに居れられているから何千人もの死を見ている
すちくん
いるまくん
すちくん
すちくん
すちくん
すちの顔は怒りで狂ったように引きつっている
従業員
従業員
従業員
あぁ。ここで俺達は終わるんだと思った。理解した
その瞬間。殺意と不甲斐なさ、苦しさが心を満たした
すちくん
いるまくん
俺は恐怖で上手く喋れなかった
すちくん
いるまくん
俺達はここで終わるのは凄く悔しかったから脱獄することを決意した。
意外と施設から出るのは簡単だった。
すちは一目散に一点だけを見つめ走っている。
もう何年も外に出ていなかっただろうか。
外の空気が凄く心地よい
すちくん
どれほど走ったのだろうか。
気づけば月が大きく見える丘についていた。
すちくん
いるまくん
すちくん
鮮やかな緑色に赤い瞳。 すちの綺麗な顔が月明かりで優しく照らされる
従業員
すちくん
いるまくん
バァンッ!!
耳を引き裂くような銃声とともにすちが倒れ込んだ。
すちくん
いるまくん
すちくん
すちがなにか呟いたがそわなこと考えてる暇はなく
俺はすちを抱き抱えて森に姿を消した
気づけば次は俺が一目散に走っていた
すちくん
いるまくん
俺はすちがいなくなっちゃいそうで凄く怖かった
すちくん
いるまくん
すちくん
いるまくん
すちの下には血の水たまりができている。
すちくん
いるまくん
すちくん
すちくん
いるまくん
すちくん
すちくん
すちくん
すちくん
すちくん
すちくん
淡々と話を進めるすちの顔はどこか苦しそうな顔をしていた
すちくん
すちくん
すちくん
すちくん
すちは唇を噛み締めて酷く辛そうな顔をした。
すちくん
すちくん
いるまくん
いるまくん
いるまくん
すちくん
すちは嬉しそうにふにゃっ、と頬を緩め俺の口に優しいくちづけをした
すちくん
いるまくん
好き。今までありがとう。
いるまくん
すちくん
すちは俺の腕の中で息を引き取った
すちの顔はさっきと同じきれいな肌にほんのりピンクの唇。
さっきまで一緒に話してたのに。キスをしていたのに。
すちと過ごした七年間のことを思い出して涙が出た。
いるまくん
いるまくん
いるまくん
俺はすちを抱き抱えてすちの手にそっとキスをした。
脳に直接呼びかけるような声だ。
すちくん
消える前に。
… 𝗍𝗁𝖾 𝖾𝗇𝖽
コメント
44件
最後まで読ませて頂きました。 めちゃくちゃ感動して泣いてしましました……自分もこんな風に書けるよう頑張ります!こんな神作品を作って頂き、ありがとうございました
ふぁ……、、すげ……泣ける……