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消える前に。

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消える前に。

1 - 消える前に。

♥

465

2023年05月20日

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消える前に。

俺は実験に使われた

従業員

入れ。

従業員

お前の取り柄は実験に使いやすいことだけだなw

部屋の中に放り投げられ冷たい言葉を浴びせられた

もう慣れているはずなのに胸がチクリと痛む

いるまくん

ぅぐッ…

いるまくん

ゲホッゴホッ

いるまくん

はぁッ…はぁッ…

すちくん

いるまちゃんッ、!!

いるまくん

す、ち?

すちくん

また、実験に使われちゃったんだね、

いるまくん

うん

こいつはすち。俺が11の時、ルームメイト相手に選ばれた

すちくん

今治すからね、

サーッ

すちが俺に触れるとみるみるうちに俺の身体から傷が消えていく

すちは回復魔法の実験体になったから

俺が実験に使われたあと、回復魔法を使い治してくれるのだ

すちくん

よし…

いるまくん

ありがと…

すちくん

いえいえ。

いるまくん

ねぇっ…

すちくん

ん〜?

いるまくん

俺達、使われなくなったらどうなるの…

すちは一瞬顔を酷く歪めたが

楽しそうに

すちくん

捨てられて死ぬよ

いるまくん

へっ…?

すちくん

使わないんだもん。煮るなり焼くなりして殺すさ。

すちの表情は恐怖の欠片もなく、むしろ穏やかな笑みだった

いるまくん

俺はいつ頃かな…?

すちくん

そうだねぇ〜…いるまちゃんは

すちくん

あと

千年。

すちくん

くらいかな?

いるまくん

そんなに…?

すちくん

どちらかと言えば少ない方だよ。

すちくん

隣の部屋の子の使用期間

五千年だよ

隣がどんな子だったか脳内の記憶を探る

黄土色の髪に薔薇の様な綺麗な赤色の瞳。

透明感のある水色の髪に透き通るような肌。

そう。神田菜月と愛蔵こさめだ

いるまくん

なつきと、こさめ…?

つい最近といっても二百年前にここに二人が来て以来、

毎日のように実験に使われているのを見ている。

すちくん

そうそう。

すちくん

昔の俺みたい。

??

嫌だッ!!

??

離してくださいッ…

??

今日はッ…今日だけはッ…辞めてくださいッ…!

??

みことがッ…餓死状態で…治さなきゃいけないんです、!

隣で泣き声が聞こえた。

声を聞く限り、前回のルームメイトだったらんだろう。

いるまくん

みこと。実験に使われるんだな…

すちくん

そうみたいだね…

みことは前回、すちのルームメイトだった

黄色の髪にひまわりのような元気のいい瞳の色が特徴的な

いつでも笑顔を絶やさない変な奴。

すちくん

みことちゃん。最近弱ってきてるもんね…

すちくん

そろそろなのかな…?

すちがうっすら涙を浮かべた

いるまくん

すち…寂しい…?

すちくん

うん、

眉を下げるすちを見ると毎回胸が酷く痛む

みことくん

らんらんッ!!

??

…ビクッ

らんの肩がわざとらしいくらいに跳ねた

みことくん

俺っ…大丈夫だから…!!

??

そうなのッ…?

??

みことっ…今にも死にそうじゃん、

みことくん

大丈夫やって!

従業員

もういい。二人で来い。

みことくん

なんでらんらんまでッ…

従業員に腕を掴まれ二人は奥の実験室へと姿を消した

すちくん

すちは俯き、一言も喋らないまま涙を流していた

いるまくん

すち、

俺は微かに震えているすちの肩をそっと抱いた

すちの肩は一瞬ピクリ跳ねたが俺を抱き返してくれた

どのくらい寝ていただろうか。気付けば先程の研究者が戻ってきていた

従業員

はい。実験体418含め4942体、処理いたしました。

すちくん

うぁッ…

いるまくん

すちッ…、

すちが俺の腕の中へ倒れ込んだ。

嗚咽を零しながら必死に声を押し殺している

すちは俺よりずっと前にここに居れられているから何千人もの死を見ている

すちくん

もうッ…見たくないッ…!!

いるまくん

うん…うん…

すちくん

俺ら以外…みんなッ居なくなった…みんな
みんな好き勝手使われてッ…結局殺されるッ…

すちくん

そんなのッ…不公平だ!!

すちくん

ここにいた、実験体のみんなに失礼だッ、!!
消えて地獄に落ちてしまえっ、…!!

すちの顔は怒りで狂ったように引きつっている

従業員

最後は。

従業員

はい。最後は…実験体220と実験体1218です

従業員

了解。夜飯食ったら処刑開始だ。

あぁ。ここで俺達は終わるんだと思った。理解した

その瞬間。殺意と不甲斐なさ、苦しさが心を満たした

すちくん

いるまちゃん。

いるまくん

なっなに…?

俺は恐怖で上手く喋れなかった

すちくん

ここから逃げようッ…?

いるまくん

ぅっ…うん!

俺達はここで終わるのは凄く悔しかったから脱獄することを決意した。

意外と施設から出るのは簡単だった。

すちは一目散に一点だけを見つめ走っている。

もう何年も外に出ていなかっただろうか。

外の空気が凄く心地よい

すちくん

はぁッ…はぁッ…もっとっ、もっと遠くへッ、…!

どれほど走ったのだろうか。

気づけば月が大きく見える丘についていた。

すちくん

はぁ~っ…

いるまくん

きれーだな…

すちくん

ふふっ笑うん

鮮やかな緑色に赤い瞳。 すちの綺麗な顔が月明かりで優しく照らされる

従業員

いたぞ!!あそこだ!

すちくん

もうここまでっ…!!

いるまくん

逃げようっ!

バァンッ!!

耳を引き裂くような銃声とともにすちが倒れ込んだ。

すちくん

ぅッ、…

いるまくん

ッ…!すち!

すちくん

作戦成功ッ…

すちがなにか呟いたがそわなこと考えてる暇はなく

俺はすちを抱き抱えて森に姿を消した

気づけば次は俺が一目散に走っていた

すちくん

はぁっ、…はぁっ、…

いるまくん

今、止血するからな!

俺はすちがいなくなっちゃいそうで凄く怖かった

すちくん

もういいよ。

いるまくん

…え?

すちくん

俺はもう確実に死ぬ。

いるまくん

嫌だッ…!嫌だよっ…

すちの下には血の水たまりができている。

すちくん

だからさ。最後に喋りたくて笑

いるまくん

これを最後になんてッ…したくないよっ…!

すちくん

ううん。死は平等に訪れるからさー?

すちくん

いるまちゃん。

いるまくん

なに、?

すちくん

いつもいつも一緒に居てくれてありがとう

すちくん

一緒に過ごせた7年間。毎日がいるまちゃんでいっぱい

すちくん

俺とルームメイトになった時、ずっと警戒されてた時は困ったな笑

すちくん

俺が辛くて泣き出した時、いるまちゃんは優しく撫でてくれたよね。

すちくん

大丈夫だ。っていつまでもそばにいてやるってさ

すちくん

ほんと、いるまちゃんは
全てが愛しくて全てが儚くて全てが愛らしいや。

淡々と話を進めるすちの顔はどこか苦しそうな顔をしていた

すちくん

まだ一緒に居たかったなっ、…

すちくん

平凡な時間を俺らだけで送りたかったなぁっ…

すちくん

なんで神様は俺達を味方にしてくれないのかな。

すちくん

不公平だなぁ…悔しいなぁッ…

すちは唇を噛み締めて酷く辛そうな顔をした。

すちくん

いるまちゃん。

すちくん

ずっと前から好きでした。

いるまくん

なんでっ今告白するのッ…

いるまくん

もっと前からしてくれてればさっ…

いるまくん

俺もっ…すちが好きだよっ…

すちくん

ほんと?

すちは嬉しそうにふにゃっ、と頬を緩め俺の口に優しいくちづけをした

すちくん

いるまちゃん。

いるまくん

はい…?

好き。今までありがとう。

いるまくん

うんっ…うんっ…

すちくん

………

すちは俺の腕の中で息を引き取った

すちの顔はさっきと同じきれいな肌にほんのりピンクの唇。

さっきまで一緒に話してたのに。キスをしていたのに。

すちと過ごした七年間のことを思い出して涙が出た。

いるまくん

うぅっ…

いるまくん

ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ッ…!!

いるまくん

う"っ…ひぐっ…

俺はすちを抱き抱えてすちの手にそっとキスをした。

脳に直接呼びかけるような声だ。

すちくん

いるまちゃんの目では見えなくたって
俺はいつでもいるまちゃんのそばに居るよ

消える前に。

… 𝗍𝗁𝖾 𝖾𝗇𝖽

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コメント

44

ユーザー

最後まで読ませて頂きました。 めちゃくちゃ感動して泣いてしましました……自分もこんな風に書けるよう頑張ります!こんな神作品を作って頂き、ありがとうございました

ユーザー

ふぁ……、、すげ……泣ける……

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