健也
(西山公園…地図によると、この辺りのはずだけど…)
みーちゃん
ねーおにいちゃん
健也
ん?
健也
(お、女の子?)
みーちゃん
西山公園ってこっち?
健也
そ、そうだと思うけど…
健也
お家の人は?
みーちゃん
みーちゃん、ひとりで来たの!
みーちゃん
デートのしたみに来たんだよ!
みーちゃん
でも、迷子になっちゃって…
健也
(近くに交番は…なさそうだな)
健也
(とりあえず、連れて行ってあげるか)
健也
わかった。それじゃあ、お兄ちゃんと一緒に行こうか
みーちゃん
うん!
少女は自分のことを「みーちゃん」と名乗った
家族のこと、学校のこと…みーちゃんは俺に色々と話してくれた
みーちゃん
それでね、その男の子がすごくかっこいいの!
みーちゃん
席がとなりになったときから、かっこいいなーって思ってたんだけど…
みーちゃん
いつもはおとなしいんだけど、とってもやさしくて…
みーちゃん
それに、笑った顔がかわいいの!
健也
今度のデートは、その子と行くの?
みーちゃん
…わかんない
みーちゃん
だってまだ、やくそくしてないの
健也
一緒に行こうって誘わないの?
みーちゃん
だって…女の子がさそうのって、変じゃない?
健也
…そんなことないよ
健也
その男の子もきっと、みーちゃんが誘ってくれるのを待っているんじゃない?
みーちゃん
そうなの?
健也
うん。きっとそう思う
健也
…お兄ちゃんも、好きな子をデートに誘うことができなかったから
みーちゃん
えー?かっこわるーい
健也
あはは…ホント、かっこ悪いよね…
健也
だからね、みーちゃん
健也
好きな人には、ちゃんと自分の気持ちを伝えるんだよ
健也
そうしないと…いつか後悔するかもしれないからね
みーちゃん
んー…よくわかんないけど…わかった!
健也
(…もしも過去に戻れたら、こんな風に助言ができたのかな)
健也
(そうすれば俺も…)
みーちゃん
あ、ついた!
そこには、色鮮やかなつつじが視界を埋め尽くすほどに広がっていた
俺とみーちゃんは少しの間、黙ってつつじを眺めていた
健也
これは…すごいな…
みーちゃん
ねー!すごいでしょー?
みーちゃん
おにいちゃんもデートのとき、ここに来てもいーよ!
健也
…そうだね。今度は彼女と一緒に来たいね
みーちゃん
…ねえ、おにいちゃん
健也
ん?
みーちゃん
…さっき言ってた好きな子のこと、まだ好き?
その時のみーちゃんは、なぜか俺と同い年くらいの女の子のように見えた
健也
……うん。大好きだよ。今もね
みーちゃん
…えへへっ
みーちゃんは繋いでいた手を離すと、数歩前に歩き出す
みーちゃん
その女の子、ぜったいおにいちゃんのこと好きだったと思うよ!
健也
えっ?
みーちゃん
なんでもない!じゃあね!おにいちゃん!
健也
うわっ!?
いきなり吹きつけた風で、思わず目を閉じる
するといつの間にか、みーちゃんが姿を消していた
健也
みーちゃん?
先ほどまで握っていた手を見ると、一輪の花がそこにあった
健也
これって…つつじだよな?