田丸
…懺悔って
田丸
教会の神父さんに話したりする
田丸
あの感じ…?
佐藤
そんな仰々しくはないですけど
佐藤
目的地までまだまだ時間掛かるし
佐藤
その間に聞いてもらえたらなって
佐藤
あ、迷惑ですか?
佐藤
俺うるさい…?
田丸
いえ
田丸
私で良ければ…
佐藤
本当ですか?
佐藤
良かったー、ありがとうございます!
佐藤
じゃあ早速聞いてください
佐藤
あれは今から16年前——
田丸
(結構遡るんだ…)
佐藤
俺、6歳になる年の春に
佐藤
今住んでいる町に越して来たんです
田丸
はい
佐藤
昔っから人見知りしなかったんで
佐藤
新しい幼稚園にもすぐ馴染めて
佐藤
友達も出来て
佐藤
自由時間は園庭にあったお城の遊具で
佐藤
みんなとよく遊んでいました
田丸
お城の遊具…
佐藤
田丸さん?
田丸
あ、私が通っていた幼稚園にも
田丸
同じような遊具があったなって
田丸
小さな塔が左右にあって
田丸
真正面は滑り台になっていて…
佐藤
俺が遊んでいた遊具もそんな感じでした
田丸
そうなんですね…
田丸
田丸
あ、ごめんなさい
田丸
話を遮ってしまいました
佐藤
大丈夫です
佐藤
気になることがあれば
佐藤
何でも言ってください
佐藤
で、その遊具なんですが
佐藤
めちゃくちゃ人気で
佐藤
塔も滑り台も
佐藤
毎日みんなで取り合っていました
田丸
私の幼稚園でもそんな感じでした
佐藤
楽しい遊具でしたもんね
佐藤
けど1人だけ
佐藤
お城では遊ばずに
佐藤
絵を描いている女の子がいたんです
田丸
絵を?
佐藤
はい
佐藤
部屋でいつも絵を描いていました
佐藤
で、俺
佐藤
その子のこと
佐藤
とんでもなく気になってしまって
佐藤
何を描いているんだろう
佐藤
お城では遊ばないのかなって
佐藤
気になったら止まらなくなって
佐藤
ある日、その子に話しかけたんです
16年前——
佐藤樹
ねえ
佐藤樹
何かいてるの?
咲良
お空
佐藤樹
そら?
佐藤樹
好きなの?
咲良
うん
佐藤樹
お城行かないの?
佐藤樹
楽しいよ
咲良
お絵かきしたいから
佐藤樹
ふーん
佐藤樹
名前は?
佐藤樹
おれ、いつき!
咲良
さくら
佐藤樹
(全然こっち見てくれない…)
佐藤樹
佐藤樹
あ、そうだ!
佐藤樹
うちにね、空の色したえんぴつあるんだよ
佐藤樹
あおぞらとか、ゆうひとか、星とか
佐藤樹
咲良
空の色?
佐藤樹
!
佐藤樹
(こっち見た)
佐藤樹
うん、キレイだよ
咲良
いいな…
佐藤樹
佐藤樹
あした、持ってくるから
佐藤樹
あげるよ
咲良
ほんとう?
佐藤樹
うん、いっぱいあるから!
佐藤樹
その代わり——
佐藤
ヒーローの絵を描いてくれって
佐藤
頼んだんです
田丸
ヒーローの?
佐藤
その頃、大好きなヒーローがいて
佐藤
…鉛筆そのまま譲らずに
佐藤
交換条件ってとこがもう
佐藤
ホント我ながらアレなんですけど
田丸
きっかけが欲しかったんですよね?
田丸
仲良くなる
佐藤
そうなんです!
佐藤
どうにか興味を引きたくて
佐藤
こっちを見て話してくれたのも嬉しかったですし
佐藤
まあ、それも鉛筆で釣ったわけですけど
田丸
可愛らしいです
田丸
(でも)
田丸
(これがどう懺悔に繋がるんだろう…)
佐藤
ヒーローを描くにも見本がいるねって話になって
佐藤
その子と初めて話せたことも
佐藤
大好きなヒーローを描いてもらえることも
佐藤
俺、めちゃくちゃ嬉しくて
佐藤
次の日超張り切って
佐藤
両手いっぱいに持って行ったんです
佐藤
佐藤
毛虫を
田丸
え?
佐藤
毛の長い
佐藤
デカイやつを
佐藤
何十匹も——








