鏡裏の世界

ハルさんの家に来てから、一週間と 二日経った。

未だに元の世界への戻り方は 分からないままだが

…ついさっき、ある物を見つけて しまった。

私の視線の先にあるのは

ゴミ箱の奥底に入っていたのを偶然 見つけてしまったのだ。

ハルさんの性格や見た目からして

勝手に自分の中で近所の高校生 お兄さん的存在に位置付けてしまって いたから

たばこを吸っているという衝撃が 思いの外強かった…。

今日は日曜日なのでハルさんは家に いる。

そんなことをしていたのか。

そこまで吸いたいなら、別に私に 隠さなくても良いと思うのだが。

高校生お兄さんのイメージが、 バラバラと音を立てて崩れていく。

ハルさんはお酒も飲むのか…

次々と明かされる衝撃の事実に、 まるで鈍器で殴られたような気分だ。

ハルさんは大袈裟に目をしょぼしょぼとさせ、涙を浮かべている。

ハルさんは、先週の姪作戦で私に おじさんと呼ばれたことを根に持って いるのか

「おじさん」という言葉を 連発している。

ハルさんはハッとした表情になると、 その後あからさまに嬉しそうな 顔になって

にこにこと笑い出した。

ほんとはの意味がよく分からないが、ハルさんは嬉しそうにくるくると 回り出した。

元の世界への戻り方や、この鏡の世界のことではなく

ハルさんの扱い方や性質について 詳しくなっていく休日だった。