TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

9時まであとどんぐらい?

30分ぐらい

残り時間はあと僅かだ。

さよならなんて冗談みたいだな

こんなに近くにいるのにね

彼はもうすぐ消えてしまう。

20XX年。

世界平和の脅威となる人間は、 ある特定の遺伝子を持つ。

そんな説が 広く世の中に 受け入れられていた。

そしてついに

危険な人間に共通する 遺伝子が特定され、

『因子の根絶が平和を実現する最大にして唯一の手段である』

その危険遺伝子は 『因子X』 と名付けられた。

だっけ?

…乱暴すぎるよ

なー

でも俺、昔は賛成してたんだよなー

それは

みんな賛成してたよ

反対するほうが変だと
思われてたんだから

世界政府が 発表を行ったのは20年前らしい。

そして今、ようやく 『因子X』を持つ最初の人間を

過去の膨大な数の祖先を さかのぼり、発見したのだ

その祖先は

『始祖』

と呼ばれるようになった。

まさか
自分が因子Xの遺伝子を
持ってるなんてさ

…知ったときは
ショックだったな

私は今でも
納得いかないよ

颯は絶対
悪人なんかじゃないのに

おかしいよ…

みんな怖いんだよ

因子Xを根絶やしにするために
過去まで改変するんだから

過去の時代へ干渉し、 『始祖』を抹殺すること。

『始祖』を殺害すれば

その子孫全てが

つまり、 因子Xを持つ子孫が全て

消滅すると言われている。

それが、因子X排除計画

そして

本日8月31日 午後9時が

計画実行の時なのだ。

それで世界が平和になるなんて

なんの保証もないんだよ?

そのせいで颯が

誰かの大切な人が

この世から消え去る。

なぁ律

最後は明るく終わろう
って話しただろ?

今、一緒にいてくれて
本当に嬉しいんだ

ついでに笑ってる顔なら
もっと嬉しい

なんてね

颯…

だって私、怖いんだよ

颯の方が怖いに決まってるよね

でもさ私はさ

颯がいなくなった世界で これからも生きていくのかな?

すごくすごく怖いよ…

颯がこの世界にいた証が

何もかもなくなってしまう。

初めて行った映画も

ふたりで分けたクレープも

泣きながら眠った夜も

仲直りの日のキスも

颯の

私の

私たちの

大事なものが

全部

全部

失われてしまう

(泣いちゃだめだ…!)

あの日さ

律がクレープ食べたいって言ったのに

もうお腹いっぱいとか言ってさ〜

仕方ないじゃん!
あんなに重たいと
思わなかったんだもん

俺甘いの得意じゃないのにさ

でも、全部食べたよね

9時まではあと5分を切った

律が幸せそうで

頑張って食べた甲斐はあった

ふふ…

なぁ律

…うん

本当に今までありがとう

私こそありがとうだよ

颯のこれまでの全部に
ありがとうって言いたい

本当は大声を上げて泣きたかった

泣いて泣いて悲しみに浸りたかった

でも

最後は笑った顔を 覚えていてほしかった

そして

私も 覚えていたかった

私 こんなふうに笑ってたんだって

あなたのとなりで。

絶対、離れないから

私も離さない

風の音がびゅうびゅうとうなり

私の耳を塞ごうとする

ねえやめて

最後まで颯の声を聴かせてよ

大好きだよ

私も颯が

大好きだよ、

大好きだよ、

世界で一番

大好きだよ…!

颯の手がそっと触れる

私たちはそのままゆっくり手を繋いだ

絶対絶対離れないように

離さないように

見つめ合ったまま

まるで これから心中でもするみたいに

強く手を握った。

SFっぽいシリーズ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

220

コメント

1

ユーザー

いつか続編を書きたいです。

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚