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3年前

潤間朝日

なぁ!母さん!

潤間朝日

もうさ・・・

潤間朝日

あんなヤツとは
別れた方がいいって!

朝日は母である 潤間芙蓉(うるまふよう)に 不安な眼差しで語りかける

潤間芙蓉

え?あんなヤツ?

潤間朝日

父さんだよ!

潤間朝日

昔専務だったとか
それっぽい理由
並べてるけど

潤間朝日

要はただ働きたく
無いだけだろ?

潤間芙蓉

・・・・・

潤間朝日

これ以上母さんが
苦しむ姿は見たく無い

潤間芙蓉

だめよ・・朝日

潤間朝日

何で!?

潤間朝日

このまま
働き続けたら

潤間朝日

母さん・・マジで
死んじゃうって!

潤間朝日

あんな奴のために
母さんがその身を
犠牲にする必要ないだろ?

潤間芙蓉

確かに、あの人は
出会った頃とは随分
変わってしまった

潤間朝日

・・・・・

潤間芙蓉

誠実だった面影は
今のあの人からは
全く感じられない

潤間朝日

でしょ?だから──

潤間芙蓉

でも若葉は
どうなるの?

潤間朝日

!!!!!!

潤間朝日

若葉・・・

潤間芙蓉

私が別れたら

潤間芙蓉

若葉はあの人と
2人で生きてかなきゃ
いけなくなるわ

潤間朝日

だったら若葉も
一緒に連れて
行けば良いだろ!

潤間朝日

なんなやつ
のたれ死んだって──

潤間芙蓉

大丈夫よ・・・

潤間芙蓉

若葉が成人するまでは
私・・頑張るから

潤間朝日

か、母さん・・・

潤間芙蓉

でも私にもしもの
事があったら

潤間芙蓉

若葉を守ってあげてね

潤間朝日

何縁起でもない事
言ってんだよ!

潤間芙蓉

冗談よ

潤間朝日

母さん・・・

潤間芙蓉

それに朝日なら
若葉を任せられるわ

潤間朝日

ど、どういう意味?

潤間芙蓉

あんた──

潤間芙蓉

若葉の事好きでしょ?

潤間朝日

は?何言ってんだよ
妹好きになる訳──

潤間芙蓉

何年朝日の母親
やってると
思ってんのよ

潤間芙蓉

それくらい分かるわ

潤間朝日

母さん・・・

潤間芙蓉

若葉をお願いね・・朝日

潤間朝日

(でも俺が逃げたら)

潤間朝日

(若葉はどうなる?)

潤間朝日

(あのクズの事だ)

潤間朝日

(若葉に何するか
分かったもんじゃない)

潤間朝日

(俺が若葉を
護るしかないんだ)

朝日が思い悩みながら 廊下を歩いていると

潤間朝日

(若葉・・・)

前から若葉がクラスメイトと 楽しげに談笑しながら歩いてくる

桃山明日香

きゃはは!確かに

灰島ひかり

何で世界史の
森須(もりす)先生って

灰島ひかり

あんな筆圧強い訳?

潤間若葉

ホントだよね

潤間若葉

一文字ごとに
チョークの粉が
パラパラ舞うから

潤間若葉

もう笑い堪えるの
大変だよ

桃山明日香

しかも自分で
片付けないしね

灰島ひかり

それな!

潤間若葉

さっきも椿先生が
掃除してたし

桃山明日香

自分でやれっつーの

潤間若葉

あ!お兄ちゃん

潤間朝日

お、おぅ・・・

桃山明日香

やっぱカッコいい

明日香は頬を赤く染めて 朝日に近づく

潤間朝日

(ああ、この子か)

潤間朝日

(この前若葉が
言ってた子か)

灰島ひかり

はいはい!
盛らない盛らない

灰島ひかり

すいませんね
お兄さん

潤間朝日

あ、いや、別に

桃山明日香

お兄さんは彼女さんとか
いらっしゃるんですか?

静止するひかりを振り解き 明日香が朝日に詰め寄る

潤間若葉

ちょっと!明日香!

潤間朝日

まぁ、居ねーけど

桃山明日香

居ないの!?

桃山明日香

なら私立候補──

潤間朝日

女はめんどくさいから
昔から嫌いなんだよ

潤間朝日

じゃーな

朝日はそっけない返事をして その場から立ち去る

桃山明日香

・・・・・

潤間朝日

(ああ言えば
嫌いになるだろ)

桃山明日香

かっ──

桃山明日香

かっこいい❤︎

潤間朝日

(え?なんで?)

桃山明日香

女にうつつを抜かさない
硬派な感じ!たまんない!

潤間朝日

(何でそうなるんだよ)

潤間朝日

(まぁ、人の好みは
色々だからな)

しばらく歩いた朝日は 目についた茶道部の部室に入り

畳の上に横たわる

潤間朝日

はぁ〜・・・

潤間朝日

何で俺の周りに居る
人たちみんな

潤間朝日

良い人ばかりなんだよ

潤間朝日

俺の事なんて
放っておけば
いいのに・・・

潤間朝日

なんでこうも・・・

敷島雅

それは潤間の人の良さに

敷島雅

みんなが自然と
集まってんじゃない?

潤間朝日

え!?

急に声が聞こえてきて 朝日は驚いた様に飛び起きる

潤間朝日

え、敷島さ・・・

そこには雅の姿があった

潤間朝日

何でここに?

敷島雅

いや、それは
こっちのセリフだし

敷島雅

いきなり
入ってきたかと思えば

敷島雅

自分の部屋みたいに
横になってさ

潤間朝日

でも何で敷島が?

敷島雅

ここ茶道部だよ?

敷島雅

私・・部員だからさ

潤間朝日

ああ、そういう事か・・

潤間朝日

邪魔したな・・・

朝日は起き上がり 部室から出ようとする

敷島雅

待ちなよ

潤間朝日

なんだよ?

敷島雅

お茶でも飲んでけば?

敷島雅

茶菓子もあるよ?

雅はくりまんじゅうや モナカが入れられた 菓子器を朝日に見せつける

敷島雅

ウチで出してる
和菓子だから
味は保証するよ

潤間朝日

ウチ?ああ、確か
お前の家って
和菓子屋だったな

敷島雅

そう!美味しいから
食べなよ!ほら!

潤間朝日

いや、いいよ

敷島雅

いーじゃん!

敷島雅

付き合いなさいよ

敷島雅

ほら!ほら!

雅は座布団を置き ポンポンと叩いて 朝日に座る様に促す

潤間朝日

わ、わかったよ・・・

朝日は言われた通り しぶしぶ座布団の上に腰を下ろす

それからしばらく 朝日と雅は言葉を交わす事なく

ただひたすらに お茶をすすっていた

敷島雅

ね?潤間?

潤間朝日

あ?なんだよ

敷島雅

何をそんなに
耐えてるの?

潤間朝日

はぁ?なんだよ急に

潤間朝日

何も耐えてねーよ

敷島雅

嘘!

潤間朝日

何が嘘なんだよ!

潤間朝日

つーか、お前が俺の
何を知ってる
っつーんだよ!

敷島雅

分かるよ?

潤間朝日

え?

敷島雅

確かに私は七星みたいに

敷島雅

潤間と小学校の頃から
付き合いがある
訳じゃないよ?

潤間朝日

・・・・・

敷島雅

でも潤間が誰かの為に
自分を犠牲にする人
って事くらいは分かる

潤間朝日

・・・・・

敷島雅

自分の事を
後回しにして

敷島雅

誰かの為に動ける人
って事くらいは分かる

潤間朝日

・・・・・

敷島雅

どうせ若葉ちゃんの
為なんでしょ?

潤間朝日

いや、別に・・・

敷島雅

それにさ・・・

雅は朝日の手を掴む

潤間朝日

な、なんだよ・・・

敷島雅

本当に喧嘩してるの?
こんな綺麗な手で?

潤間朝日

え?

雅が掴んだ朝日の手は 傷ひとつ無い綺麗な手をしていた

敷島雅

喧嘩してるんならさ
当然潤間も人の事
殴ってるんだよね?

潤間朝日

ああ、当たり前だろ

潤間朝日

もうボッコボコに──

敷島雅

にしては潤間の手──

敷島雅

全然傷がないよね?

潤間朝日

え?

敷島雅

喧嘩してる人の手ってさ

敷島雅

ちゃんと見なきゃ
分からないくらいに

敷島雅

小さな傷が無数に
あるんだよね

潤間朝日

傷・・・

潤間朝日

つーか何でお前が
そんな事知ってんだよ

潤間朝日

テキトーな事──

敷島雅

私の叔父さんがね?
昔相当やんちゃ
してたらしくて

敷島雅

暴走族の総長
やってたんだって

潤間朝日

暴走族?

敷島雅

そう!暴走族!

敷島雅

結構有名な暴走族で

敷島雅

喧嘩では敵なし
だったんだってさ

潤間朝日

・・・・・

敷島雅

そんな叔父さんの手は
ゴツゴツしてて

敷島雅

傷がいっぱいあるの

潤間朝日

・・・・・

敷島雅

人によっては
殴った衝撃で

敷島雅

自分の手の骨が
粉々に砕けちゃう人とか

敷島雅

手の皮が剥けちゃう人が
居るんだってよ?

敷島雅

信じらんないよね

潤間朝日

・・・・・

敷島雅

人を殴るってね
手には相当な
ダメージなんだって

潤間朝日

だ、だから何だよ!

朝日は勢いよく立ち上がる

潤間朝日

俺が喧嘩してるって
言ったらしてんだよ!

敷島雅

だったら何で
そんなに手が綺麗なの?

敷島雅

そんな綺麗な手で
人を殴ってるなんて
到底思えない!

敷島雅

何か隠してるんでしょ?

潤間朝日

・・・・・

敷島雅

もしかして虐──

潤間朝日

うるせーよ!

潤間朝日

関係ねーだろ!

朝日は声を張り上げて その場から立ち去る

敷島雅

潤間・・・

潤間朝日

(何でみんな俺の事
気にしてくれるんだよ)

潤間朝日

(放っておいてくれよ)

潤間朝日

(頼むから・・・)

潤間朝日

(俺の決心を
鈍らせないでくれよ)

Mask of the Delinquent

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