リエは最初から、少し変わった子だった
リエ
リエ
リエ
アイ
アイ
リエ
リエ
私にはわからない趣味だったけど
リエが楽しそうだから、それでいいと思ってた
なのに
リエ
アイ
リエが持っていたのは、気味の悪い日本画の掛け軸だった
アイ
リエ
リエ
リエ
リエ
リエはとっても興奮していたけど、とてもそんな気にはなれない
処刑人が罪人の首を斬っている絵だ
しかもその首は跳ね上がって、こちらに飛び出してきそうな勢いがある
なによりその首の表情は
今にも怨み言を言いたそうに
私を睨み付けていた
足首から頭の先まで
なにかが一気に這い上がるような
そんな気味の悪さを感じた
アイ
アイ
リエ
リエ
アイ
アイ
吐き気とめまいが止まらない
やっとの思いで保健室にたどり着いた私を見て
先生は慌てて ベッドに寝かせてくれた
いつのまにか眠ってしまったみたい
目が覚めたのは、もう3時間目が終わる頃だった
アイ
アイ
養護教諭
養護教諭
養護教諭
アイ
アイ
ユリ
アイ
アイ
ユリ
アイ
アイ
アイ
ユリ
ユリ
ユリ
私が保健室に行ったあと
リエは掛け軸を先生に見つかって
取り上げられそうになったらしい
そうしたら
リエ
リエ
リエ
とても普段のリエとは思えないほど
すさまじい剣幕だったらしい
親が迎えに来て、引きずられるように帰っていったと聞いた
ただ
あの掛け軸だけは
リエがしがみつくように抱えていたせいで
没収されることもなく
家に持ち帰られたらしい
その日私は夢を見た
夢の中のリエは
あの掛け軸を部屋に飾り
そこから片時も離れず
絵を見つめ続けていた
ごはん食べよう
お風呂入ろう
学校おいでよ
私の声は届かない
ただあの掛け軸を飾った場所は
なぜかジクジクとカビが生え
リエごと、部屋を真っ黒にしていくのが見えた
アイ
アイ
アイ
不安に思いながら、リビングに下りて朝食をとる
ベーコンエッグをパンに乗せたところで
天気予報のためにつけてあるテレビが
騒々しい声を伝えた
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アイ
それはどう見ても、リエの家だった
モザイク混じりの映像は、 血を隠しているつもりなのか
真っ赤に染まっている
その中で、骨董品だらけの部屋が映った
中央に、夢で見た通り掛け軸が飾られている
アイ
たった一瞬、たった一瞬のことだ
だけどそれだけで充分気づいてしまった
あの掛け軸の周囲はモザイクだらけなのに
掛け軸だけは血で汚れていないこと
そして
一瞬映った掛け軸の生首が
恍惚と
笑みを浮かべていることに
椅子に座っていることもできず、床に崩れ落ちる
アレが、リエたちを殺したんだと震えが止まらなかった
その後、しばらく騒々しい日が続いたものの
結局町は日常に帰っていった
だけど私の心は重い
あの掛け軸が、今度はどこに行ったのか
私は それを考えずにはいられない
コメント
16件
全て楽しく読ませていただきました。短く綺麗に纏まった文章はとても読みやすく、独特の世界観に引き込まれました。 また、こういう表現の仕方もあるんだなぁっと勉強になりました。 ありがとうございます!
こんな所に大好物のホラー詰め合わせセットがあったなんて… 全話美味しく頂きました ごちそうさまでした!