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『君と僕の忌避進路』

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『君と僕の忌避進路』

69 - 白に染まる

♥

70

2023年11月05日

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どうして生まれてきたの

あんたなんて必要なかった

これが俺の頭の中に刻まれてる、一番古い記憶

家は昔からお金がなかった

母が昼夜問わず働いていたが、その金は全部生活費に溶けていく

その中でも一番金がかかるのが、俺の学校に通う為の道具代や給食費など

だから母はよく言っていた

誰のせいでこんな生活になってると思ってるの?

いなければもっと楽だったのに

こんなの、俺が謝ったってどうにでもなることじゃない

かといって、この世から消えたいとは思わなかった

怖かったから、自分で命を絶つのが

そんな日常が続いたある日を境に、母は性格が急変した

疲れのせいで常に苛ついていた母は、幸せそうな顔をして帰ってくることが多くなった

小学生だった俺は、何なのかわからなかった

でも、ある日に全てを理解した

その日、母が見知らぬ男を連れて帰ってきた

"青波さん"、この子が息子の彼方よ

母が"青波さん"と呼んでいたその人は、きっと母と恋人関係なのだろう

まだまだ小さく、未熟な俺でもそう理解できた

そして、その日から約1ヶ月後

母は笑顔でこう言った

彼方、新しいお父さんができるのよ

それからというもの、母は毎日幸せそうだった

俺に対して暴言を吐くこともなくなり、笑顔がどんどん増えていった

お金の心配もいらなくなって、俺は内心ほっとしていた

でも、その幸せは短いものだった

青波

君が悪いんだよ

青波

君が、僕のことを誑かすからこうなるんだ

いくら抵抗したところで、どうにもならない地獄を味わった

本当はすぐにでも母に相談したかった

でも、この生活を壊したらいけないと思いながら、何とか耐えていた

でも、耐えられるわけがなかった

彼方

母さん

何?

彼方

っ……

彼方

………実は……

洗いざらい、全てのことを話した

でも、母は今までに見たことのない表情をしていた

俺に対する軽蔑、まるで理解できないと言うような半笑いで

…どうして、そんなことを言うの?

彼方

っ嘘じゃない、本当に…

私の人生をめちゃくちゃにして、何がしたいの…?

彼方

そんなことしてない…!

お願いだから私の邪魔しないで!

彼方

っ………!

俺は、相談したところで無理なんだと言うことを知った

母と父が再婚してから1年後

父が事業展開の為、海外へ移住することにした

俺はここしか機会はないと思った

そして俺は、父が家を離れた日に

彼方

…母さん、お願いがあって

一人暮らしをすることにした

ただ、一つだけ失敗したことがある

俺は母に、俺が一人暮らしをしていることを父に言わないでほしいと伝えていなかった

その結果、父は日本にいる自分の部下に俺の護衛…

いや、護衛という名の"監視"を始めた

俺は友達から学校生活、さらには日常生活までも制限されることになった

折角離れられたのに、こんな仕打ちは絶対に嫌だ

そう思って、高校入学と同時に家を離れて、誰も俺のことを知らないような場所へ移った

高校に入学して、1年生の時はまともに通うことができていた

違う学校だった翔太とも仲良くなれて、少しずついい方向に向かっていた

はずだった

暁と出会ってから、俺はまた家と同じような仕打ちを受けた

何を言っても聞いてくれなくて、自由になんてさせてくれない

でも、俺は完全に諦めていた

だってそれが昔から普通だったから

それ以外の家庭生活を知らなかったから

……でも

"あいつ"と出会ってから、なぜか心が軽くなった

その理由は分からなかった、少し前までは……

真冬

…彼方さん!!

あいつが、真冬が助けに来てくれてから

真冬

弱くても助けにきたいって思ったから

まるで、闇の中から引っ張り出されたように

真冬

『僕自身』が、彼方さんと一緒がいいから…

俺は少しだけ、心が楽になった

心が軽くなったのは、今までの辛さを真冬が全部飛ばしてくれたからだと分かった

また少しだけ、明るい方へ進むことができる気がした

青波

あれ、彼方?

青波

帰りは僕が送るので、大丈夫ですよ

突然、あいつが学校に来た

青波

彼方、いいよね?

彼方

(帰ったと思ってたのに…)

真冬たちのところに行ったら、きっとあの人は俺以外にも危害を加える

助けを求められない、ここから抜け出せない

彼方

(なら、いっそ………)

別にいいよね、ここから逃げ出したって

ただ逃げる場所が現実じゃないってだけで、辛いことから逃げることは決して間違っていないんだ

彼方

(もう苦労したくないんだ…)

彼方

(もう、いいよね………)

そう思ってたのに

真冬

っ、彼方さん……!

彼方

っ……!

彼方

(なんで、いつも助けに来てくれるの)

彼方

(なんで、そんなに優しいの)

俺が何処かに消えようとすると、いつも止めてくれるのは真冬だ

真冬が笑っていれば、俺も自然と笑みが溢れてきて

真冬が優しく囁けば、ずっと忘れていた泣き方を思い出すことができる

そんな真冬が、俺を誘い出してくれた

真冬

一緒に逃げましょうか

彼方

え…?

真冬

僕たちのことを誰も知らないような、遠い遠いところ

真冬

"2人で逃げよう"

真冬が俺の目を見つめて、そう言えば

その誘いに、俺は乗る以外の選択肢はなかった

彼方

……うん

"2人"で、逃げよう

『君と僕の忌避進路』

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