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山都夏輝

でもさぁ、リュウ?

山都夏輝

何でご飯を食べないの?

リュウ

・・・・・

山都夏輝

まどか先生・・・

山都夏輝

凄い心配してるよ?

リュウ

・・・・・

クロ

死期が近いと言う事か?

リュウ

やはり猫の貴方には
分かるかしら?

クロ

ああ・・・

クロ

余命幾許もない
という感じだな

山都夏輝

しき?

リュウ

夏輝・・・

リュウ

私はね?

リュウ

もうすぐ死んじゃうの

山都夏輝

え!?

ルプ

病気でこざいまするか?

リュウ

私はね──

リュウ

もう16年以上生きてるの

リュウ

人間で言ったら私は
おばあちゃんなのよ

山都夏輝

おばあちゃん・・・

ハル

けど、医者に見せれば

リュウ

老衰ってヤツよ

リュウ

どうする事も
出来ないのよ

山都夏輝

そんなぁ・・・

ハル

けど、医者に
見せてみなきゃ
分からねーだろ?

ハル

俺だって昔
癲癇を発症したことが
あるんだよ!!

リュウ

癲癇?

ハル

けど、俺は医者のおかげで

ハル

こうして生きてる!

ハル

水脇先生っていう
超一流の獣医が
知り合いに居るんだ!

ハル

その人に見せれば──

リュウ

無駄よ・・・

リュウ

老衰は病気とは違う

リュウ

どうする事もできないわ

山都夏輝

リュウ・・・

クロ

しかし妙だ

リュウ

なにが?

クロ

老衰のせいで
余命わずかというのは
分かった・・・

クロ

たが、なぜ?

クロ

出された食事に
手をつけないんだ?

リュウ

・・・・・

リュウ

もうすぐ死んでしまう
私なんかの為に

リュウ

勿体無いわよ・・・

山都夏輝

リュウ・・・

リュウ

まどかは私の
食事代だけじゃない

リュウ

病院代とかも
色々やりくりしながら
工面してくれてる

ハル

・・・・・

山都夏輝

リュウ・・・

リュウ

まどかには、もっと
自分の為にお金を
使って欲しいの

リュウ

だから・・・

ルプ

しかしまどか氏は
勿体無いなど

ルプ

思ってないで
ございまするよ!

ハル

ああ!そうだ!

山都夏輝

そうだよ!リュウ!

リュウ

そうかもしれないけど

リュウ

私が・・辛いの

山都夏輝

リュウ・・・

リュウ

私は出されても
食べないのに

リュウ

まどかは
いつもいつも

リュウ

新しい食事を
私のために用意
してくれる

リュウ

そんなまどかを
見てるのが辛い・・・

山都夏輝

リュウ・・・

福原まどか

リュウがそんな事?

山都夏輝

リュウはまどか先生が
大好きなんだよ・・

山都夏輝

だからこそリュウは

山都夏輝

自分の為にお金を
使うんじゃなくて

山都夏輝

自分の為にお金を
使って欲しいって

福原まどか

リュウ!!

まどかはリュウに駆け寄り 抱きしめる

福原まどか

お金が勿体無いなんて

福原まどか

私・・思った事ないよ

リュウ

ニャーン

福原まどか

私はリュウに
いつまでもいつまでも

福原まどか

元気で居て欲しい

福原まどか

それだけ・・・

福原まどか

自分にお金を
使わないでなんて

福原まどか

そんな事言わないでよ

福原まどか

リュウ・・・

リュウ

ニャーン

リュウはまどかの腕から離れると

一目散に餌場へ向かい カリカリを食べる

福原まどか

リュ、リュウ・・・

山都大輝

まどか先生の気持ちが
リュウに伝わったんですよ

福原まどか

リュウ・・・

福原まどか

ぐすっ・・・

まどかはカリカリを食べる リュウの背中を優しく撫でる

山都夏輝

ぐすっ・・・

山都大輝

夏輝・・・

大輝は夏輝を抱き寄せる

山都大輝

サンキューな!夏輝

山都夏輝

パパ・・・

山都大輝

お前がリュウの言葉を
まどか先生に伝えて
くれたおかげで

山都大輝

リュウはご飯を
食べてくれる様になった

山都夏輝

うん・・・

福原まどか

山都さん・・・

福原まどか

夏輝くん・・・

福原まどか

ありがとうございました

まどかは大輝と夏輝に 深々と頭を下げる

山都大輝

俺じゃなくて夏輝に
言ってあげてください

福原まどか

山都さん・・・

山都大輝

まどか先生の力に
なりたいって最初に
言い出したのは

山都大輝

夏輝ですから・・・

福原まどか

夏輝くん・・・

福原まどか

本当にありがとう

山都夏輝

ううん・・・

山都夏輝

僕──

山都夏輝

まどか先生の事
大好きだから

福原まどか

ありがとう・・・

福原まどか

ぐすっ・・・

山都夏輝

まどか先生の力に
なれたかな?

福原まどか

ええ!充分よ!

福原まどか

夏輝くんが居なかったら

福原まどか

リュウの過去を
知る機会もなかったし

福原まどか

リュウの言葉を
聞くなんて事・・・

福原まどか

叶わなかった・・・

福原まどか

本当に感謝してる

福原まどか

ありがとうね!
夏輝くん!

山都夏輝

えへへ

福原まどか

それに山都さん・・

福原まどか

本当に申し訳
ありませんでした

まどかは大輝に頭を下げる

山都大輝

え!?

山都大輝

何を謝って
るんですか?

福原まどか

その・・先ほどは

福原まどか

ふざけないで
ください!と

福原まどか

声を荒げてしまって

山都大輝

ああ、その事ですか

山都大輝

まぁ、俺が夏輝の事を
ちゃんと見てあげれて
いなかった事は事実ですし

山都大輝

あんな状況で

山都大輝

猫の言葉を
理解出来るんです

山都大輝

なんて言われたら
誰だってふざけるな!
って思いますよ

福原まどか

山都さん・・・

山都大輝

ですから
謝らないでください

福原まどか

ありがとうございます

福原まどか

今日はありがとう
ございました

山都大輝

リュウに末永く
寄り添ってあげて
ください・・・・

福原まどか

はい・・・

山都夏輝

じゃあ!まどか先生!

山都夏輝

また保育園でね!

福原まどか

うん!またね!夏輝くん

山都大輝

じゃあ、俺たちはこれで

山都大輝

ホラ!お前らも
挨拶しとけ!

大輝に言われ クロ、ハル、ルプは まどかに会釈をする

福原まどか

ふふふ

福原まどか

猫に会釈される日が
来るなんて

福原まどか

思ってもいませんでした

山都夏輝

貴重な体験だね♫

福原まどか

ふふふ、そうね♫

山都夏輝

まどか先生とリュウ

山都夏輝

いい家族だね

山都大輝

ああ、そうだな

クロ

リュウも、あんなに
思ってくれる
飼い主に出会えて

クロ

幸せだっただろうな

山都大輝

なんで過去形なんだよ

クロ

みんはには悪いが

クロ

おそらくリュウは
もう長くはないだろう

山都夏輝

やっぱり・・・

山都夏輝

リュウは死んじゃうの?

クロ

今すぐに!という
訳ではないだろうが

クロ

近い将来・・・
そうなるだろうな

山都大輝

お前な・・・

山都大輝

せっかく感動的な
雰囲気で次の話に
行けるトコなのによ

クロ

たとえどんなに
元気だったとしても

クロ

今生の別れというのは
必ずやってくる

山都大輝

ま、まぁな・・・

ルプ

リュウ氏も自分に
死期が迫っている事を

ルプ

薄々勘づいていた
様子だったで
ございまする

山都夏輝

リュウ・・・・

山都大輝

まぁ、病気だったら
水脇先生に言えば

山都大輝

ワンチャン
どうにかなるかも
しんねーけど

山都大輝

老衰じゃなぁ・・・

ハル

やっぱり年齢には
勝てねーって事か?

山都大輝

そうなるなぁ・・・

山都夏輝

(クロたちも・・)

山都夏輝

(いつかは・・・)

夏輝は暗い表情で うつむく

山都大輝

どうした?夏輝?

山都夏輝

ううん・・・

山都夏輝

なんでもない・・

山都大輝

まぁ、まどか先生と
リュウなら大丈夫だよ

山都夏輝

ねぇ、パパ?

山都大輝

ん?どうした?

山都夏輝

いつかはクロ達も──

山都夏輝

・・・・・

山都大輝

クロ達も?なんだ?

山都夏輝

・・・・・

山都夏輝

やっぱ何でも無い

山都大輝

何だよそれ・・・

クロ

(夏輝・・・)

福原まどか

リュウ・・・

リュウ

ニャーン

福原まどか

私、リュウの気持ち

福原まどか

嬉しいかったよ

まどかはリュウの腹に 頬擦りをする

リュウ

ニャ!!

リュウは前足をピンと張り まどかの頬を遠ざける

福原まどか

なによ!いいじゃん!

リュウ

ニャ!!

福原まどか

リュウゥ〜〜〜

福原まどか

大好きだよぅ〜〜

まどかはリュウ気持ちは お構いなしと言った感じで リュウの腹に顔を埋める

リュウ

ニャーン!

リュウ

(まどか・・・)

リュウ

(私も大好きよ)

リュウ

(最期に私の想いを
伝えれてよかった)

リュウはまどかに 頭をこすりつける

福原まどか

リュウも大好きだって
そう言ってくれてるの?

リュウ

ニャーン

福原まどか

リュウゥゥゥ〜♫

福原まどか

大好き♫

その日の夜

夏輝は軽く食事を済ませたのち 早めに就寝した

しかし──

山都夏輝

う、うー・・・ん

山都夏輝

何の音?

夏輝は外からドアを何度も引っ掻く 音で目を覚ます

ガリ・・ガリ

山都夏輝

ん?

夏輝は不審に思いながらも ドアに近づき耳を澄ませる

クロ

夏輝!俺だ!

クロ

ドアを開けてくれ!

ドアの外から クロの呼ぶ声が聞こえてきた

山都夏輝

あ!クロだったんだ

山都夏輝

待ってね!今開けるから

山都夏輝

どうしたの?クロ?

クロ

いやな・・・

クロ

まどかの家から
帰ってきてからと
言うもの──

クロ

夏輝に元気が
無い様に感じてない

山都夏輝

・・・・・

クロ

何かあったのか?

クロ

話してみろ!

しばらく沈黙がながれた後

夏輝は瞳にうっすらと 涙を浮かべながら口を開く

山都夏輝

クロ達もいつかは
死んじゃうの?

クロ

夏輝・・・

山都夏輝

死んじゃうの?

クロ

・・・・・

クロ

そうだな・・・

クロ

人間だろうが猫だろうが

クロ

命という物には
限りがあるものだ

クロ

俺たちだって
いずれは死ぬさ

山都夏輝

そっか・・・

クロ

ヤマトや小夏

クロ

夏輝だって
その時が来れば

クロ

いつかは死ぬ

山都夏輝

そう・・だよね・・・

山都夏輝

でもやっぱり
死んでほしくないよ

山都夏輝

ぐすっ・・・

クロ

・・・・・

山都夏輝

クロ達も──

山都夏輝

パパもママも──

山都夏輝

みんな死んでほしく無い

山都夏輝

ずっとみんなと
一緒に居たいよ

夏輝は涙を流しながら クロを抱きしめる

クロ

夏輝・・・

夏輝の啜り泣く声が 聞こえる廊下で

大輝はずっと 立ち尽くしていた

山都大輝

(夏輝・・・)

山都大輝

(そうだよな・・・)

山都大輝

(今まで「死」なんて)

山都大輝

(身近に感じる事
なかったもんな・・・)

山都大輝

(ハルが癲癇を発症
したのだって)

山都大輝

(夏輝が産まれてくる
ずっと前だったしな・・)

大輝がしばらく沈黙していると

部屋の中から 夏輝の寝息が聞こえてくる

山都大輝

(ん?)

大輝は部屋の様子を確認する為 ドアを開く

ガチャ

山都大輝

夏輝?

クロ

夏輝なら寝たぞ

クロは夏輝の腹を 前足でポンポンと優しく叩く

山都夏輝

zzzzzzzz

山都大輝

・・・・・

クロ

おそらく
リュウに出会って

クロ

「死」という物を
身近に感じたんだろうな

山都大輝

だろうな・・・

山都大輝

俺も小夏も──

山都大輝

夏輝に「死」なんて──

山都大輝

教えた事
無かったもんな・・・

山都大輝

どうやって
教えるのが正解なんだ?

山都大輝

「死」って・・・

クロ

ヤマトはどうやって
親に教えて
もらったんだ?

山都大輝

んなの、とっくに
忘れちまったわ

山都大輝

つーか、ちゃんと
教えてもらったのかさえ
危ういトコだな・・・

クロ

使えないヤツだな

山都大輝

悪かったな!!

山都大輝

まぁ、とりあえず
夏輝は寝てるし

山都大輝

明日だな・・・

クロ

明日?

山都大輝

小夏に電話しなきゃ
なんだよ・・・

クロ

今日の件を話すのか?

山都大輝

ああ・・・

クロ

小夏は何と言うだろうな

山都大輝

怖い言い方すんなよ

山都大輝

まぁ、何言われても
仕方ねーからな

山都大輝

まぁ、今日は寝ちまおう

大輝とクロは 寝ている夏輝を起こさない様に 慎重に部屋から出る

深夜

まどかは夜遅くまで 事務作業に精を出していた

福原まどか

ふぅ〜・・・

福原まどか

終わった・・・

まどかがコーヒーを飲みながら それとなくリュウに視線を向けると

リュウはベッドの上で眠りについていた

リュウ

・・・・・

福原まどか

ねぇ?リュウ?

福原まどか

遊ぼうよ!

福原まどか

ホラ!ホラ!

まどかチェストから レーザーポインタを取り出すと

リュウの気を引こうと赤い点を動かす

リュウ

・・・・・

しかしまどかが いくらリュウの気を引こうとしても 眠ったままで反応がない

福原まどか

ちょっと!

福原まどか

無視しないでよ!

福原まどか

遊ぼうよ!リュウ!

福原まどか

ねぇったら!

まどかはリュウの体をゆする

しかしながらリュウは 全く反応しない

福原まどか

リュウ?

福原まどか

ねぇ?リュウ?

リュウ

・・・・・

福原まどか

リュウ!起きて!リュウ!

まどかは何度も何度も リュウの体をゆする

しかしリュウは起きない

リュウ

・・・・・

福原まどか

リュウ・・・

福原まどか

そんな・・・

福原まどか

嘘・・でしょ?

リュウ

・・・・・

福原まどか

そんな・・・

福原まどか

やっとリュウの気持ちに
気づけたのに・・・

福原まどか

こんなのって・・・

リュウ

・・・・・

リュウはまどかのベッドの上で 安らかな最期をむかえていた

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