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#ドラマ
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夕食が終わり
「ごちそうさま」の声が 食卓から消えると
家の空気がゆっくり変わり始めた。
凪は静かに皿を持って立ち上がる。
その動作ひとつひとつが
兄姉の機嫌を探るように 慎重だった。
凪の母
お母さんが優しく声をかける。
雨宮 凪
小さく返事をして
キッチンへ向かう。
背後で、椅子を引く音がした。
直人と莉乃が立ち上がった音だ。
その瞬間——
背中に感じる気配が変わった。
さっきまでの“いい子”の 気配じゃない。
昼間の、あの冷たい気配。
皿を置いた凪が振り返ると
直人と莉乃が
食卓の陰に入った瞬間 顔から笑みを消していた。
雨宮 直人
直人が低く言った。
雨宮 莉乃
莉乃が凪の真似をするみたいに わざとらしい小声で言った。
凪の心臓がぎゅっと縮む。
雨宮 凪
お母さんは台所の蛇口の音で 気づかない。
光希と希空は部屋へ 向かったところ。
今、この場には
“本当の兄姉”と凪しかいなかった。
雨宮 直人
直人が肩を押してきた。
雨宮 凪
凪がよろけると
莉乃がすかさず小声でささやく。
雨宮 莉乃
雨宮 莉乃
その声は笑っていない。
冷たくて、乾いていた。
お皿を重ねて運ぼうとした 凪の手が震える。
その震えを見て 直人がため息をついた。
雨宮 直人
雨宮 直人
莉乃も続ける。
雨宮 莉乃
雨宮 莉乃
凪は視線を床に落とした。
何か言えば、もっと悪化する。
でも黙っていても、胸が苦しくなる。
雨宮 凪
黙る凪に
直人は皿をわざとカランと 大きな音を立てて置いた。
雨宮 直人
雨宮 直人
直人が押しつけた皿は重く、 凪の腕が揺れた。
涙がにじむ前に……
音がした。
——ギィ。
廊下の床を踏む音。
誰かがこちらへ来る足音。
瞬間
直人と莉乃が表情を切り替える。
雨宮 直人
雨宮 莉乃
さっきまでの悪意が消え
完璧な“優しい兄姉”の表情。
凪の背中に冷たい汗が伝う。
そして
廊下の角から姿を見せたのは——
長女の希空だった。
雨宮 希空
雨宮 希空
その一言で、 凪の胸が大きく揺れた。
気づかれたかもしれない。
でも——言えない。
怖さと安心が入り混じったまま、 凪の心は静かに揺れていた。