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手術室

大学病院の手術室では ハルの癲癇手術 皮質焦点切除術が 執り行われており

たった今、脳の焦点 つまり癲癇の発症の原因を 切除し終わった直後だった

院長

よし・・・

院長

焦点の切除が
終わりました!

院長

これより頭蓋骨に
溜まった髄液を

院長

全て取り除きましょう

院長

それが終わったら
頭部の縫合をし

院長

手術は完了です

医者A

はい・・・

医者B

わかりました

院長

(ドクン・・・)

院長

(ドクン・・・)

医者A

・・・・・

医者A

先生?大丈夫ですか?

院長

はい・・・

院長

大丈夫です・・・

院長

(大丈夫だ・・・)

院長

(髄液を全て取り除き)

院長

(頭部の皮膚の
縫合が終われば)

院長

(手術は無事成功なんだ)

院長

(なのに何で・・・)

院長

(今になって
思い出すんだ・・・)

数年前

水脇動物病院

院長

宗像さん・・・

院長

申し訳ありません・・・

宗像雅恵

どうしてよ・・・

宗像雅恵

あなた言ったじゃない!

宗像雅恵

アキを必ず救うって
あなた言ったじゃない!

宗像透

おい!雅恵!

宗像雅恵

返してよ!

院長

・・・・・

宗像雅恵

私たちのアキを
返しなさいよ!

宗像透

やめるんだ!雅恵!

宗像透

先生は一生懸命
やってくれたじゃないか!

宗像雅恵

救えなかったら
意味ないじゃない!

宗像雅恵

アキは・・・

宗像雅恵

死んだのよ?

宗像透

そうかもしれんが

宗像雅恵

あなたは悲しくないの?

宗像透

そりゃ悲しいさ!

宗像透

だからって先生を
責めるのは間違ってる!

宗像透

そうだろ?

宗像雅恵

だって・・・

院長

・・・・・

宗像透

すいません先生

院長

いえ・・・

院長

私の力不足が
原因なんです・・・

院長

本当に・・・

院長

申し訳ありませんでした

宗像雅恵

う・・うぅ・・・

宗像雅恵

うわぁぁぁぁ

宗像雅恵

アキーー!

院長

・・・・・

数年前、癲癇発作により 病院に担ぎ込まれて来た 宗像夫妻の雄猫「アキ」

ある日の嵐の夜に 宗像夫妻の自宅の前で あまりの寒さで 震えて衰弱しきっている所を 宗像さんに拾われ

10年以上ものあいだ 我が子のように愛をそそがれ 育てられていた猫だった

子供を早くに交通事故により 亡くした宗像さんにとって アキくんは実の子供のように かけがえのない存在だった

MRIの診断により 脳の焦点は中枢神経から だいぶ外れた場所にあったため 切除は容易との判断を下し 私はすぐさま手術を施した

手術は順調に進み脳の焦点切除は 何事もなく無事に成功した あとは皮膚の縫合をすれば 無事に成功するはずだった

しかし、縫合中に容態が急変し 著しく衰弱していき アキくんは帰らぬ猫となってしまった

今思えばアキくんはシニア猫 つまり老猫だったから 体力的に限界を迎えた為に 手術の苦痛に耐えれなかったのだろう

だがあの時の私は 自らを責めるだけで そんな事を考えている 余裕なんてなかった

命を奪ってしまった その事だけが私の頭を支配していた

それ以来、私は 猫の癲癇手術をするのが 怖くなってしまった

また失敗し 命を奪う結果になりそうで たまらなく怖かった

手術を施して失敗して 家族に悲しみを与えるくらいなら 安楽死をすすめたほうが互いに良い 誰も苦しまずに済む そう考えるようになっていった

私は獣医を名乗る資格は 無いのかもしれない

それもそうだ 手術すれば救えるはずの命を やる前から諦めているのだから

家族の為などと言って 自分の非人道的な考えを 正当化しているのだから

結局は自分が家族から 恨まれたく無いだけだったんだ

そう・・あの時も 山都さん、風間さんが ハルくんを連れてきた時も

瞬時に癲癇手術により 焦点の切除が容易だと分かった

しかし、私は過去のトラウマにより 抗癲癇剤による治療が望ましいと 手術を先送りにしてしまった

今思えばバカだった 保身ばかり考えて最善という物を まるで考えていなかった

あの時すぐに 癲癇手術を施していれば ハルくんはこんなにも 苦しむ必要はなかったんだ

全て自分の甘さと 弱さが招いた結果だなんだ

救いたい

救いたいのに

なぜ今になって・・・

先生・・・

先生!

水脇先生!

大丈夫ですか?

水脇先生!

院長

はっ!

院長

はぁ・・はぁ・・

医者A

大丈夫ですか?

院長

は、はい・・・

院長

大丈夫です・・・

院長

(クソ・・・)

院長

(こんな時に・・・)

院長

(また俺は・・・)

医者B

やはり先生・・・

医者B

以前の・・・

医者A

やめないか!

医者B

あ、すいません

院長

いえ!大丈夫です!

院長

(そうだ・・・)

院長

(俺は誓ったんだ!)

院長

(山都さんに・・)

院長

(風間さんに・・)

院長

(絶対に救ってみせると
誓ったんだ!)

院長

・・・・・

ゆっくりと深呼吸をする

医者A

先生・・・

院長

(よし・・・)

院長

やりましょう!

院長

みなさん!

院長

チカラを合わせて
ハルくんを救いましょう!

医者A

はい!勿論です!

医者B

必ず救いましょう!

院長

えぇ・・・

ハルの手術に担ぎ込まれて すでに5時間が経過していた

山都大輝

(神様・・・)

山都大輝

(どうかハルを・・・)

大輝が長椅子に座り 肩を落としていると 一人の老人が話かけてきた

 

兄さん・・・

山都大輝

はい?

 

横・・ええかのう?

山都大輝

あ、はい・・・

山都大輝

どうぞ・・・

山都大輝

(なんだ?この爺さん)

 

よっこいしょ

 

歳をとると椅子に座るのも
一苦労でいかん!

 

あははは

山都大輝

(変な爺さんだな)

山都大輝

(でも何だろ・・・)

山都大輝

(どこかで見た顔だな)

 

兄さん・・・

山都大輝

はい?

 

家族が手術でも
受けとるんか?

山都大輝

え・・・

 

いや、なんとなく
そんな感じがしてな

山都大輝

え、えぇ・・・

山都大輝

そうなんです・・・

 

そうか・・・

 

そりゃ心配じゃな・・

山都大輝

まぁ、家族って言っても
猫なんですけどね

山都大輝

俺らからしたら
大事な家族ですから

 

俺らとは?

山都大輝

あ、あぁ・・

山都大輝

今彼女と同棲中で

 

そういう事か

山都大輝

今手術を受けてるのは
白猫でハルって言うんです

山都大輝

他には黒猫クロ

山都大輝

三毛猫のルプって猫の
3匹と暮らしてて

 

そりゃ賑やかじゃな

山都大輝

はいwww

山都大輝

もう毎日が
運動会って感じで

 

運動会かwww
そりゃいいな

山都大輝

俺・・・

山都大輝

ハルが苦しんでるのに
気づいてやれてなくて

山都大輝

こんな事になって

山都大輝

すげー後悔してるんです

 

・・・・・

山都大輝

このままハルの手術が
失敗したらって考えたら

山都大輝

つらくて・・・

 

大丈夫じゃよ

山都大輝

え?

 

お前さんが祈れば
神は味方してくれる

 

ハルの底力を信じるんじゃ

 

あいつはお前さんが
思ってる程ヤワじゃない

山都大輝

え?あいつ?

山都大輝

それはどういう・・・

 

おっと喋りすぎたな

 

歳をとりすぎると
喋り過ぎていかんな

山都大輝

・・・・・

 

わしはそろそろ
戻らんといかん

山都大輝

あんた一体・・・

 

あいつらを頼んだぞ

 

お前さんなら
信用できる

山都大輝

あっ・・・

山都大輝

ちょっと待っ

大輝が老人を呼び止めようとすると まばゆい光が大輝を包んだ

山都大輝

うっ・・

あまりの眩しさに 目を閉じる大輝

そして再び 老人がいた箇所に視線を戻すと その老人の姿は消えていた

山都大輝

居ない・・・

山都大輝

なんだったんだ?

山都大輝

あの爺さん・・・

山都大輝

なんか不思議な
爺さんだったけど

山都大輝

でもどっかで
会ったような気が・・

山都大輝

あっ!

山都大輝

たしかカマじいの
仏壇にあの爺さんの
写真が飾られてたような

山都大輝

・・・・・

山都大輝

まさか、あの爺さんが?

山都大輝

いやいや!ない!ない!

山都大輝

そんなんありえないから

山都大輝

死んだ人間が
目の前に現れるとか

山都大輝

漫画やアニメじゃねーんだから

山都大輝

そんなんありえねぇって

山都大輝

・・・・・

山都大輝

でもなんか
あの爺さんのおかげで

山都大輝

希望を持てたような
気がすんなぁ

手術室

院長は髄液を全て取り除いた後 震える手つきで ハルの皮膚の縫合をしていた

院長

(大丈夫だ・・・)

院長

(大丈夫だ・・・)

院長

(このまま・・・)

院長

(無事に・・・)

院長

(何事も無く終われば・・)

アキを必ず救うって あなた言ったじゃない!

院長

(くそ!!!)

院長

(思い出すな!思い出すな!)

院長

(今はハルくんに
集中するんだっ!)

私たちのアキを 返しなさいよ!

院長

(く・・・)

院長

(やっぱり俺には・・)

院長

(無理なのか・・・)

院長

(ここまで来て・・)

院長

(また取りこぼすのか?)

院長

(この小さな命を・・・)

院長

(やっぱり俺は・・・)

院長

(いいや!ダメだ!)

院長

(もう同じ過ちは
繰り返さない!)

院長

(もう絶対に!)

院長

(必ず救う!)

院長

(何としてでも!)

院長

(ハルくんが
こんな小さな体で
踏ん張ってるんだ!)

院長

(俺がそんな
弱気でどうする!)

院長

(医者である俺が
諦めてどうする!)

院長

(俺を信じてくれてる
人が居るんだ!)

院長

(絶対に救ってみせる!)

大輝!

大輝!

大輝!

風間小夏

大輝!起きろ!

バチン!

山都大輝

痛!っっっ!

待合室の長椅子で うたた寝をしていた大輝は 小夏の強烈な平手打ちで目を覚ました

山都大輝

なんだよ小夏

山都大輝

頭吹っ飛ぶかと思ったわ

風間小夏

私を怪獣みたいに
言わないでよっ!

山都大輝

!!!!!!

山都大輝

ハルは?

山都大輝

ハルの手術は!

大輝が慌てふためいたように 手術の表示灯を確認する

しかし表示灯は 依然として点ったままだった

山都大輝

まだか・・・

風間小夏

もうだいぶ経つよね

山都大輝

あぁ・・・

山都大輝

つーか小夏

山都大輝

クロとルプは?

風間小夏

居るじゃんココに

小夏が持ち運び用のケージふたつを 人差し指で示した

そのケージそれぞれの中には クロとルプが入れられていた

クロ

この中は窮屈だな

クロ

全くゆったりできない

ルプ

まるで見せ物で
ございまする

山都大輝

大丈夫なのか?
こいつら入れて

風間小夏

看護婦さんがね

風間小夏

ケージの中に入れるなら
病院に入れても大丈夫だって
ケージくれたの

山都大輝

あ、そっか・・・

風間小夏

だいぶ時間
かかってるね

山都大輝

ハルの命を救う
手術だからな

風間小夏

大丈夫だよね

風間小夏

ぐすっ・・・

山都大輝

小夏・・・

風間小夏

ハルちゃん・・・

風間小夏

助かるよね・・・

大輝は優しくそっと 小夏の体を抱き寄せる

山都大輝

大丈夫だ・・・

山都大輝

心配ないって

山都大輝

先生を・・・

山都大輝

ハルの底力を信じよう

山都大輝

な?

風間小夏

うん・・・

山都大輝

・・・・・

山都大輝

(小夏にはこう言ったけど)

山都大輝

(実際問題、俺も
不安で一杯だ・・・)

山都大輝

(出来ることなら
今すぐにでもこの場から
逃げ出したいくらい不安だ)

山都大輝

(先生とハルを
信じたいって)

山都大輝

(頭では思っていても)

山都大輝

(心がついていかない)

山都大輝

(ハルは俺に
大切なことを教えてくれた
恩人でもある・・・)

山都大輝

(まだあいつに
感謝の言葉を言えてないんだ)

山都大輝

(ハル・・・)

山都大輝

(どうか踏ん張ってくれ)

その時

パッ

手術灯のあかりが消えた

風間小夏

大輝!

山都大輝

ああ・・・

山都大輝

終わったみたいだな

風間小夏

ハルちゃん・・・

風間小夏

(お願いハルちゃん)

風間小夏

(生きてて・・・)

山都大輝

・・・・・

大輝と小夏が 手を合わせて祈っていると

手術室のドアが開き

院長が出てきた

To Be Continued

ばいりんきゃっと

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