時計台の下
ミライ
ようやく着いたけど
ミライ
もうほとんど目が見えなくなった
ミライ
ただ、カエデ来ればなんとかなるかも
ミライ
目が見えないのに不安じゃない
ミライ
夢のなのか現実なのか……
カエデ
お待たせ
ミライ
……カエデ
ミライ
……カエデか?
カエデ
うん
ミライ
どうしよう目が見えなくなったんだ
ミライ
救急車を呼んでくれ
カエデ
うん
ミライ
うんって早くなんとかしてくれよ
カエデ
……ミライ
カエデ
少しだけ話を聞いて
カエデ
実は……
カエデ
実はあなたはこの世界にいないの
ミライ
……え
ミライ
どうして
ミライ
どうゆうこと?
カエデ
ここは◯◯街病院の404号室
カエデ
タナカミライの部屋
カエデ
一ヶ月前の事故で大怪我を負って
カエデ
それからずっと植物状態
カエデ
この空間はバーチャルリアリティなんだ
カエデ
数分前から生死を彷徨っていて
カエデ
最後に連絡を取れる手段なの
カエデ
だから視界が狭くなっていて
カエデ
そのうち耳も聞こえなくなる
カエデ
最後にこれまでの日常を味わってほしくて
カエデ
最初の連絡の時に嘘をついた
カエデ
ごめんなさい
カエデ
本当にごめんなさい
ミライ
……そっか
ミライ
全く受け入れられないけど
ミライ
さっきから不安じゃないんだよ
ミライ
夢みたいだって言ってたけど
ミライ
本当に夢見たいな世界なんだな
ミライ
いつもの日常が始まっていて
ミライ
生きてるって感じがした
ミライ
安心したよ
ミライ
俺はあとどれくらいなの?
ミライ
あとどれくらいカエデの声が聞こえるの?
カエデ
もう…あ…分…くらい…
ミライ
あ、もう耳も聞こえないかもしれない
カエデ
聞…こ…える?
ミライ
かろうじてね
ミライ
良かった
ミライ
最後のひと時がカエデと出会った場所で
ミライ
カエデと一緒に居られるなんて
カエデ
私…嬉しかった…こん…形でも最…に喋れ…
カエデ
大学終わり…また会える…思ってた…に
カエデ
まさか…あの日…最後になる…
ミライ
大学終わりになんかあったんだ
ミライ
もう全く覚えてないや
カエデ
また…会える…ね
カエデ
これ…最後じゃ…よね
ミライ
うん、きっと会えるよ
ミライ
また会えたらどこかデートしよう
ミライ
行きたい場所たくさんあったよね
カエデ
うん…水族…も…物園…
カエデ
あと、最近話題…なってる…の場所…
ミライ
よし今後も予定で埋まってるな
ミライ
また今日みたいに当たり前の毎日が来たら行けるかも
カエデ
うん…た…して…ね
カエデ
今度…嘘…つかない…から
ミライ
うん、死ぬってこんな感じなんだ
カエデ
……え
ミライ
とっても暖かいんだ
ミライ
今まで味わったことがないくらい
ミライ
だから自然と怖くないんだよ
ミライ
カエデもそばにいるし
カエデ
……良…た…
カエデ
……
ミライ
もう耳も聞こえなくなってきた……
ミライ
さようなら……
ミライ
そして……
ミライ
……ありがとう