バタン、という扉の音にため息が出る
何を隠そう今日は私の誕生日である
そして、今私が逃げている相手こそ恋人で私の騎士である人だ
いつもなら夫婦と呼ばれる私達だけど
……今日は、私が会いたくなくて
その理由は……
そう言って、2人が目を合わせる
そして、覚悟を決めた顔でこちらを見てきた
任務、と言われ思わず仕事モードになる
そう言われ、1枚の紙を渡される
紙を見た感じ、私一人では少し多い感じだ
……できなくは無い
そう言うと、お二方は1人にかけるには過保護すぎる術を使う
……本当に、感謝しかない
言ってしまえば、部下の我儘に付き合ってくれているんだ
その上、表向きの仕事モドキすら与えてくれた
そう言って、不敵の笑みを浮かべる
今日という一日を、全力で逃げ切ってやる…!!
そう言って、術で創り出した武器を手に持ち任務へと赴く
今日だけは、彼に会いたくない
どうか、会いませんように…!!
神使様とオーナー様に見送られてから、早数十時間
思ったよりリストに載ってる人を順調に始末出来たので
今、目の前にいる人で最後だ
狙いを定め、引き金に指を置き何時でも発砲出来るようにする
そして……
響く重低音、響き渡る人々の悲鳴
それに満足し、リストの最後の奴にバツをつける
疲れた
けど、楽しかった
流石、オーナー様の隠し術
流石、神使様の加護
きっと私一人じゃ逃げきれなかった
さて、さっさと帰ろう
そう思い、近道の為にいつもとは違う道を通った
……今考えれば、それが間違いだったのかもしれない
人なんて殆ど通らない道を、楽しそうに歩く
腕時計を見ると、日付はあと30分足らずで変わる
……勝った
思わずにやけてしまう
他の方の力を借りたとはいえ、心に決めたことを貫き通すのが大好きだ
ノリノリで帰っていたら
コロン、という音が聞こえる
音の方を覗くと、そこには桃色の宝石が
見えた瞬間、銃でぶっ壊す
間違いなく、あいつの物だ
これは早めに帰った方がいいな…
そう思い、屋上まで飛んだ
見渡せば、辺りはもう真っ暗で
腕時計の針は、日付変更まで15分を切っていた
もう少しで、私の勝ち…
そう思った矢先、またコロンという音が響く
躊躇いなく撃とうと思っていた私は
……その宝石を見て、止まった
それは……彼の…
……負けた
この声と同時に撃ち抜かれる赤い宝石
笑顔で責められ、本気で逃げたくなった
しかし、足の速さで彼に勝てない
そんなこと無いんだけどな…
そう思って、自分の行動を振り返る
……あれ?私、ずっと逃げてたよな
卑怯にも他の方を巻き込んで
……嫌われてると思われてもおかしくないのでは?
あぁ…言ってしまった
いつも強気な私だからこそ
こんな、女々しい姿を見られたくなかった
なんだ、こいつ
いつもと様子が違くて…ふわふわする
そう言われ、白い箱を開ける
その中には、あの時と同じティアラがあった
正直、正直、めっちゃ恥ずかしい
……でも、なんでだろ
それよりも、嬉しい
そう言って、こちらに近づいてくる
愛おしそうな目で、こちらを見つめながら
そう言われ、頭に丁度いい重さが乗る
お礼を言おうとして、口を開こうとした瞬間
そのまま抱きしめられ、思わず息を飲む
そう言って、夜空を眺める
これが、私達の愛なのだ
姫と騎士でありながら
私達は、確かに愛し合っている
無性にそれを感じて
胸が張り裂けそうなくらい、幸せな気分に
この人の全てを、愛おしいと思ったのだった
コメント
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お嬢様、お誕生日おめでとうございます🎉✨ 騎士様から隠れながら仕事をこなす姿はかっこよくて流石お嬢様!!って思ったけど、ちょっと油断して騎士様に見つかってしまってからはいつものかっこいいお嬢様とは違って可愛いお嬢様で恋人にしか見せない姿なのが本っ当に素敵で……!!改めて騎士様のことを愛してることが伝わってきた💭 これからもお嬢様と騎士様が幸せに過ごせますように───。