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不在着信

不在着信

着信があったのは茉莉花のスマホ だった。

茉莉花

きゃっ!

茉莉花

非通知の電話!?

茉莉花

拒否……拒否しないと

茉莉花は半ばパニック状態でスマホを 操作した

茉莉花

止まれっ、止まってよ……

茉莉花

なんでっ……で、電源も切れな……

 

あらがぬまく

 

いごひまくいもお

瑠衣

ひっ……!

留守番電話が起動し、しわがれた声が 再生される。

私と奈々美は慌てて耳を塞いだ。

茉莉花

壊れろっ、壊れろよっ!!

茉莉花は半狂乱になって床や壁に スマホを何度も何度も打ちつけている

ドアの向こうから綾奈の笑う声が 聞こえた

綾奈

ふっ……

綾奈

ふふっ……

茉莉花

ざけんなよ綾奈!!

茉莉花

全部お前のせいだろ!!

不気味な老婆の声を掻き消すように、 茉莉花は大きな声をあげた

奈々美

茉莉花、落ち着いて

奈々美

ほら、止まったよ

茉莉花のスマホは真っ暗にひび割れて動かなくなっていた

私たちは綾奈の家を後にし、 手近なカフェに移動した。

瑠衣

……茉莉花、大丈夫?

茉莉花

大丈夫なわけないでしょ

茉莉花

私もこれから

茉莉花

綾奈みたいになるって思ってるくせに

瑠衣

……ほら、フラペチーノ来たよ

瑠衣

綾奈と同じ状態なのか、とりあえずこれ飲んで確かめてみて?

奈々美

今特に寒気とか無いんでしょ?

茉莉花

………

瑠衣

どう?

茉莉花

美味しい。

茉莉花

特に変な所はない、かな。

茉莉花

今のところ。

奈々美

良かったぁーー!

奈々美

そもそも、呪いって存在自体が眉唾なんだよね

奈々美

私たちに変な嫌がらせをしてるやつはいるみたいだけどさ

奈々美

呪いで人が死ぬなら、合法的に殺人し放題になっちゃうわけじゃない?

奈々美

綾奈だってさ、原因不明の奇病とかじゃないかな?

瑠衣

……病院に連れてってあげたほうがよかったかもね

茉莉花

……親が帰ってきたら連れてくでしょ

フラペチーノを一口飲むと、 茉莉花はやっと少し笑顔になった。

茉莉花

スマホ、壊して損したかな

茉莉花

修理代が高くつきそうだし

茉莉花

事情なんて言えるわけないから、親に怒られるだろうなぁ……はぁ……

茉莉花

うちの親、不注意で壊したなら自分で払え!とか言いそう……

先ほど徹底的に破壊されたスマホは、 完全にただの金属の塊と化している。

瑠衣

茉莉花んち、厳しそうだもんねぇ……

瑠衣

あ、そうだ。もし自分で払えとか言われたらさ、私半額出そっか?

茉莉花

え、いいの?

奈々美

さっすがお金持ちぃ〜

茉莉花

何か、悪いなぁ

瑠衣

いいよいいよ

瑠衣

私、皆と友達でいられて凄く幸せなんだ。

瑠衣

綾奈みたいに部活で成果を出したわけじゃないし、

瑠衣

茉莉花みたいに美人じゃないし、

瑠衣

奈々美みたいに成績が優秀なわけでもない。

瑠衣

何の取り柄もない上に、メンタル弱くていつも迷惑かけて

瑠衣

それでも気遣ってくれて、一緒にいてくれるのが嬉しいの。

瑠衣

これからも4人、一生友達で
いたい。

瑠衣

だから、これくらいはさせて?

茉莉花

瑠衣……

瑠衣

その代わり、綾奈の病気が治ったら、絶対に仲直りしてね!

茉莉花

……わかった。綾奈の具合が良くなったら私から謝りに行くよ。

奈々美

向こうだって、身体がしんどくて八つ当たりしちゃっただけだろうからね。

奈々美

治ったら、すぐ友達に戻れるよ。

カフェを出ると、外は既に日が 落ちようとしていた

茉莉花

瑠衣、ごちそうさま

奈々美

なんか流れで私まで奢ってもらっちゃってごめんね?

瑠衣

いいよ、茉莉花は呪われてなかったって確かめられたし

瑠衣

あとは綾奈の病気が良くなることを祈るだけだね。

茉莉花

そうだね。ちゃんと病院行ってるといいけど。

茉莉花

……ん?

奈々美

どした?

茉莉花

いや、なんか今スマホが振動したような気がしてさ

瑠衣

ああ、たまにあるよね、それ。

奈々美

ファントムバイブレーション現象って言うらしいよ

茉莉花

へぇー、名前あるんだね

茉莉花

でも、振動すると反射的に見ちゃう、よ……ね……

茉莉花

………………

笑いながら壊れたスマホを取り出した茉莉花の顔が、見る見る内に青ざめる

瑠衣

どうしたの?

茉莉花

こ、これ……

茉莉花は震える手でスマホをこちらに向けた。

ひび割れた画面には、メール受信の 通知と本文の内容が表示されていた。

件名:呪いのメール 「ママの呪い」

瑠衣

これって、綾奈の言ってた……

茉莉花

何なのよ、ふざけんなよ!

ドンッ

前が見えていなかったのだろう、 茉莉花は通行人の男性とぶつかって よろめいた

そのままバランスを崩し、近くに停車していたトラックの扉に頭をぶつける

男性は小さく舌打ちをして 足早に去っていった

茉莉花

痛ったぁ……

茉莉花

ふざけんなよマジで

後頭部を強く打ったのだろう。 不機嫌そうにさすっている。

奈々美

あっ……

奈々美

茉莉花、ネクタイ!!!!

茉莉花

……え?

信号が青になり、トラックが発進する

そこにもたれかかっていた 茉莉花の身体が後ろに倒れた。

茉莉花

きゃあっ!

よく見ると、茉莉花の身体とトラックの荷台扉がネクタイで繋がれていた。

先ほどぶつかった弾みで、ネクタイが挟まれたようだった。

茉莉花

やだ……取れないっ……

茉莉花

誰かぁぁぁぁっ!!

茉莉花

助けてっ……イヤァァァァ!!!

運転手は気づかずスピードを上げる。 茉莉花の姿はあっという間に遠ざかっていった。

茉莉花

ああっ、ぐっ、ゔぁ

茉莉花

がっあっ、ぎぎ

彼女はネクタイを外そうともがくが、歩道の上を引き摺られながら縊死しそうになっている

ゴガッ

数十メートル先で奇妙な音がし、 私達は走って追いかけた

瑠衣

……ま、り………か………?

奈々美

嘘っ……やだっ!!

電柱にぶつかって解放された茉莉花の身体は、首が折れてあり得ない方向に捻じ曲がっていた。

綺麗だった顔に苦悶の表情を浮かべた亡骸を見て、私は意識を失った‥‥

気がつくと私は庭園の中にいた

よく整えられた花壇に薔薇のアーチがある、小さいが美しい庭だ。

瑠衣

……?ここは……

ガシャン!!

背後で門の閉まる音がする。

瑠衣

(開かない……どうしよ、出られない)

アーチを抜けると、正面には大きな 洋館がある

瑠衣

( この家‥‥何処かで見た気がする…)

私は洋館の入口に歩み寄った

瑠衣

(あれ?なんだろ、足元に……)

瑠衣

(井戸?)

ふらふらと歩いていた私の足に、 石造りの小さな井戸が触れた。

瑠衣

(何故だろう、中が気になる……)

瑠衣

…………ヒッ!!

覗き込むと、中にいた人物と 目があった。

仄暗い井戸の中から、白装束の老婆が私を見上げていた。

瑠衣

何で……こんな、ところに……

老婆は何かを嘆くように両手で顔を 覆っている。

指の隙間から覗く目は怒りに満ちて 私をしっかりと見据えていた。

しかし口元は笑っているようにも見える。こちらを嘲るようににやにやと。

瑠衣

いっ、嫌っ!!

私は、あまりの不気味さにその場を 逃げ出し、屋敷に駆け込んだ。

屋敷の中は木製の家具と絵画や花が 飾られていた。

華美な部屋だが、人の気配はない

瑠衣

誰かいませんかー?

瑠衣

帰る方法を知りたいだけなんです……

耳を澄ますと、奥の部屋から水音が 聞こえてきた

瑠衣

(あっちは台所かな……)

瑠衣

(とりあえず陰から覗いてみよう)

台所には、エプロンをつけた 髪の長い女性が立っていた。

瑠衣

(よかった……人がいる)

瑠衣

(薄暗くてよく見えない……)

瑠衣

(もう少し近くに行けないかな)

明かりのない台所で女性の後ろ姿に 目を凝らす。

瑠衣

………!!

瑠衣

く、首、が……っ

瑠衣

あっ、ああ……

瑠衣

(まずい、声……)

グリンッ

女性は上半身だけで振り返った。

その首は奇妙な方向に捻じ曲がっていて、よく見ると締められた痕がある。

瑠衣

ヒッ、あっ、あぁ……

瑠衣

ご、ごめんなさい、許して……

彼女も老婆と同様に、顔を両手で 覆っていた。

指の隙間から覗く真っ黒な目は、 やはり何かに怒っている。

そして、口紅の塗られた赤い唇は、 にやにやと笑っていた。

瑠衣

きゃぁぁっ!!

私は一目散に逃げ出した。

瑠衣

はあっ、はぁ

私は階段を駆け上がって二階へ 逃げ込んだ。

寝室らしき部屋のドアが開いていた。

瑠衣

やだ、もうやだ、なんでこんな所に

瑠衣

ここはどこなの?何故私は……

瑠衣

……キャァッ!!!

ベッドの上にポロシャツの 男性が立っていた。

腹にナイフのようなものが刺さっており、どくどくと血を流している。

瑠衣

何なの……誰なの、あなたたち……

男は両手で顔を覆い、こちらを睨みつけながら口元だけで笑っている

瑠衣

(逃げなきゃ…早く、逃げなきゃ……)

思わず後ずさると何かにぶつかった。

震えながら、ゆっくりと振り返る。

何も見たくないはずなのに、身体が 勝手に背後を確認しようとする。

瑠衣

あ、あぁ……

そこには、頭から血を流した幼い 女の子がいた。

少女

…………

瑠衣

嫌、来ないで……

女の子は、血のついた大きな石を持っていた。

少女

あらがぬまく

少女

いごひまくいもお

老婆の声でぶつぶつと唱えながら、 少女はゆっくりと石を振り上げた。

瑠衣

ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!

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