春馬
大学に向かう途中の駅の
線路の真ん中に、
両足のない男が
腕だけで、這うように歩いていた。
春馬
春馬
物心ついた頃から、
この世の者ではないものが、見えていた。
幽霊、死神のようなもの、
土地神と思われる存在、
山神にも出会ったことがある。
春馬
春馬
見える、という能力を持て余したまま、
俺はまもなく、20歳になる。
春馬
俺は大学帰り祖父の家に来た。
祖父
祖父
春馬
春馬
祖父
祖父には霊感は無かったが、
昔から、直感の強い人だ。
春馬
春馬
祖父
祖父
祖父
春馬
祖父
春馬
祖父
春馬
祖父
春馬
祖父
祖父
祖父
春馬
俺は子供の頃から霊感があったせいで、
人はいずれ死ぬ、と認識するのが他人より早かった。
だから、なりたいものも、
将来の夢も、
未だにはっきりしない。
春馬
春馬
春馬
祖父
祖父
春馬
春馬
春馬
春馬
春馬
祖父
春馬
春馬
春馬
祖父
春馬
祖父
祖父
春馬
祖父
祖父
春馬
春馬
春馬
母
母
春馬
春馬
母は、昔から俺に霊感があることが気に入らず、
そのことでよく父と揉めたそうだ。
それが原因で両親は離婚した為、
父方の祖父に会った話はできない。
祖父は、俺の能力を昔から尊重していたから、
当時同居していた母とは、衝突しがちだった。
母
春馬
母
春馬
母
春馬
数日後
春馬
白い、蛇のような生き物が
大学の授業中、教授の足元に現れた。
春馬
自分以外に見える人がいないため、
見えているものが何なのか、判定ができない。
それが、いい存在なのか、
近寄ってはいけないものなのか…
春馬
春馬
その日の夕方
祖父
春馬
祖父
祖父
祖父
祖父
祖父
春馬
春馬
祖父
春馬
祖父
祖父は函館生まれだ。
就職する時に都内に出てきてからは、
ずっと関東で生きてきた。
祖父
春馬
祖父
春馬
祖父
春馬
祖父
祖父
春馬
祖父
こうやって、大学帰りに
祖父と会話をする時間が
何よりも楽しい。
ずっと、この時間が
続けばいいのに…
数週間後
真夜中
母
母
母
母
春馬
春馬
春馬
春馬
母
母
春馬
つい先日、電話で話をしたばかりだった。
その時は、元気そうだった。
春馬
母
春馬
春馬
春馬
母
母
信じられない
信じたくない…
こんな話
俺は大学をしばらく休み、
通夜と告別式に参加した。
母
母
春馬
祖父が死んだ実感が、一切ない。
父
春馬
父
春馬
父
春馬
父
父
春馬
春馬
父
父
父
春馬
父
父
春馬
父
父
春馬
春馬
春馬
春馬
気持ちの整理がつかぬまま、
告別式が終了した。
告別式の終わった夜
春馬
心が、痛い。
春馬
春馬
春馬
春馬
春馬
死んで、ほしく無かった
春馬
春馬
春馬
祖父
春馬
春馬
祖父
祖父
春馬
春馬
春馬
祖父
春馬
春馬
祖父
春馬
祖父
春馬
春馬
祖父
春馬
祖父
春馬
祖父
祖父
春馬
春馬
祖父
祖父
祖父
春馬
祖父
祖父
祖父
ジリリリリリリ
春馬
春馬
春馬
母
春馬
春馬
春馬
春馬
春馬
朝食後 外に出て、いつもと違うことはすぐに理解できた。
春馬
春馬
春馬
春馬
昨日まで見えていた、この世のものではないもの達は、
一切、俺には見えなくなっていた。
春馬
春馬
そのまま駅まで向かい、
電車に乗り、大学にもたどり着いたが、
不可解なものは、一切見えなかった。
6月30日
母
春馬
母
母
母
春馬
春馬
母
春馬
春馬
春馬
春馬
母
母
春馬
春馬
母
母
母
春馬
春馬
母
母
母
春馬
母
母
春馬
母
母
母
母
春馬
母
春馬
春馬
母
母
春馬
母
ああ、できるとも。春馬ならな。
春馬
母
春馬
春馬
春馬
20歳の 俺の誕生日。
母と、離れて暮らす父に祝われ、
亡くなった祖父からは、
“恐ろしいものが見える目”だけを奪われた。
春馬
春馬
普通の人と同じ“目”だ。
それが、こんなにも嬉しい…
母
春馬
春馬
母
春馬
春馬
母
おじいちゃん、
本当にありがとう
俺はもう、必要以上にこの世のものではないものを、恐れなくて済む。
これでようやく、
ゆっくり、将来について考えることができそうなんだ。
春馬
母
これからも、
そばで見守っていてね、
おじいちゃん。
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