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夕方の相談室。窓の外には茜色の空。3人とも沈黙気味で座っている。
蓮司(ふと)「なあ。俺たちって、何なんだろうな」
遥「は?」
日下部「……何の話だ」
蓮司「いや、ふと気になっただけ。
このメンツ、普通に考えたら一緒にいるはずなくね?」
遥「……まあ、たしかにな。
てか、おまえら、俺のことどう思ってんの?」
日下部「急だな」
蓮司「お、それ聞いちゃう? じゃあ俺から言っていい?」
遥「なんかムカつくけど、どうぞ」
蓮司 → 遥
蓮司「遥のことはさ――“地雷畑の上でタップダンスしてるやつ”って感じ」
遥「どんな例えだよ」
蓮司「見てるこっちはヒヤヒヤするけど、当の本人は“え、何が?”って顔してる。
怒ったり笑ったり、急に黙ったり。
感情で爆発しそうな癖に、中心にいるのは“空っぽ”っぽい」
遥「……ほっとけ」
蓮司「でもさ、そこが面白いんだよな。
普通じゃない。だから興味ある。
“なんでこいつ生きてるんだろ”って、時々マジで思うし」
遥「……褒めてねえよな、それ」
日下部「褒め方が変なんだよ、蓮司は」
日下部 → 蓮司
日下部「蓮司は……他人を試すやつだ」
蓮司「ん? それもまた微妙な言い方だな」
日下部「わざと踏み込んで、わざと傷を見せさせて……
それでも壊れない相手を、探してる気がする」
蓮司「……うわ、なんかバレてる」
日下部「でも、見てる方向は冷静だ。
蓮司の言葉には毒があるけど、嘘はあまりない」
蓮司(笑って)「まあ、嘘ついてもバレるからね、この部屋じゃ」
遥 → 日下部
遥「日下部のことは……うーん、
“本当は怒鳴ってほしいのに、ずっと黙ってるやつ”って感じ」
日下部「……どういう意味だ」
遥「言いたいことあんだろ? なのにいつも我慢して、真面目ぶってる。
でもさ、ちょっと踏み込むと、めちゃくちゃ優しいのが透けて見える」
蓮司「あー、わかる。“不器用すぎて損してる代表”って感じ」
遥「だからたぶん、俺が泣き出したら、一番黙って隣にいてくれるの、日下部だと思う」
日下部(視線を逸らして)「……そうかもしれない」
日下部 → 遥
日下部「遥のことは、正直、わからないことが多い。
でも――わからないまま、放っておけない」
遥(ちょっと照れて)「は?」
日下部「たぶん、俺が“壊した”部分が、まだ残ってる気がするから。
全部、戻せなくても……せめて、隣にいるくらいはできると思ってる」
遥「……やっぱおまえ、変なやつ」
蓮司 → 日下部
蓮司「で、俺から見た日下部は……
“沈む前に誰かを支えちゃうやつ”。
自分が限界でも、“立ってなきゃ”って思ってるタイプ」
日下部「……そう見えるか?」
蓮司「見える。あと、遥と違って“普通”を知ってるからこそ、苦しいんだろうなって思う。
“戻れない”こと、わかってる人の目をしてる」
日下部「……おまえも、よく見てるな」
蓮司「まあ、趣味なんで。人間観察」
遥(ぽつり)「俺たち、マジでバラバラだな」
蓮司「だから集まるんじゃない? バラバラだから、壊れないのかも」
日下部「……繋がってないようで、同じ場所にいる」
遥「“わかんねえけど、いてもいい”って感じか。
それくらいがちょうどいいのかもな」