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夕方の相談室。遥は少し遅れて来る。
最初は蓮司と日下部の二人だけ。
蓮司(窓辺に腰かけながら)「……なあ、日下部」
日下部(椅子に座ってノートを見ている)「何だ」
蓮司「おまえさ、遥のこと、“守りたい”って思ってる?」
日下部「……思ってる、と思う。少なくとも“放ってはおけない”」
蓮司「へえ。
でも、おまえが黙ってる間に、あいつ壊れてくかもしれないよ?」
日下部(ぴくりと眉を動かす)「……それは、おまえも同じだろ」
蓮司(笑う)「違うね。
俺は“壊れるかもな”って思って、それでも見てるだけって決めてる。
おまえは、“救いたい”って言いながら、触れもしない」
日下部(低く)「おまえに言われる筋合いはない」
蓮司「はは、来た来た。そうやってすぐムキになる」
日下部「おまえがふざけてるだけだ。遥にとって、それがいいことだと、本気で思ってるのか」
蓮司「あいつ、バカだからな。
真面目な顔されると、“期待されてる”って思って自爆する。
だから俺は、“ふざけた大人”のフリをしてんの」
日下部「フリで済ませるな。
ふざけるなら、責任もて」
蓮司(急に真顔になって)「――それ、全部自分に言ってんだろ?」
日下部「……何?」
蓮司「怜央菜ちゃんと、何があったのかは知らない。
でもおまえ、遥を見るとき、“贖罪”がにじみ出てる。
そんな目で見られたら、あいつ息苦しくて当然だろ」
日下部「……っ」
蓮司(続けて)「おまえの“黙って側にいる”ってのは、
実は“逃げてる”だけなんじゃないの?」
日下部(立ち上がりかけて)「言いすぎだ、蓮司」
蓮司(じっと見つめて)「言われたくなかったら、やれよ。
俺みたいなクズに遥を渡したくないんだろ?
だったら、おまえが先に手、伸ばしてやれよ」
(しばし沈黙)
(そこへ、遥がドアを開けて入ってくる)
遥「……あれ? なに、空気やっば。喧嘩?
つーか、蓮司、なんかした?」
蓮司(ふっと表情を戻して)「ん? 何も?
ちょっと真面目な話してただけ。な、日下部?」
日下部(一呼吸置いて)「……ああ、そうだな」
遥「なんか、おまえらの“真面目”って信用ならねぇんだよな……」