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それからの5日間はあっという間に過ぎた。


海斗はレコーディングに入る前のスケジュール調整で多忙を極めていた。

CDジャケットの撮影、音楽雑誌のインタビュー、そして新たにCMソングの打ち合わせ等バンド活動以外の仕事を次々にこなし

ていく。


一方美月も、仕事の合間の空き時間に作品作りを始めていた。

海斗へプレゼントするネックレスは、悩んだ挙句地球照をイメージしたデザインにした。

美月が撮った地球照の写真を待ち受け画面にする程、海斗は地球照がお気に入りだったのでそれをモチーフにする。

そしてロックバンドのボーカルに似合うよう少しハードなデザインにして作り始めていた。


パーティーには、亜矢子と二人で料理を作っていく事も伝えた。

海斗はケータリングサービスで用意するからと言ってくれたが、多忙な海斗にそこまでさせるのは申し訳ない。

美月は二人で持って行くので大丈夫ですと念を押す。

すると海斗は俺が誘った側なのに申し訳ないとかなり恐縮していた。


そして土曜日が来た。いよいよパーティーの日だ。

この日美月は少し早めに目覚めた。

パーティーは午後四時からなので早起きしなくても大丈夫だったが、なぜか楽しみで目が覚めてしまった。

まるで遠足の日の子供みたいねと自分の事を笑う。


軽く朝食を済ませてから掃除洗濯などの家事を一通り終えた後、いよいよ料理を作り始める。


美月が今日作ろうと思っていたのは、


ベーコンとアスパラのキッシュ

ローストビーフ

エビとブロッコリーとアボガドのサラダ

ジャガイモの冷製スープ


だ。悩みに悩んでこの四種類に決めた。


亜矢子は息子亮の世話があるので作るのが大変だろうと、美月は亜矢子に無理して作らなくていいよと伝えた。

その代わりに来る途中で美味しいパンとおつまみを買って来てと頼む。

すると亜矢子は、


「美月助かるわ、ありがとう。でも作るって言っちゃった手前、焼くだけの簡単なスペアリブとマッシュポテトくらいは持って

行くね」


と言ったので、おそらくこれだけの料理があれば充分だろう。

美月はなんだかワクワクしてきて、楽しそうに料理を始めた。


四品目のキッシュをオーブンに入れてほぼ全ての準備が終わった時、インターフォンが鳴った。


(誰だろう?)


そう思いながら美月がドアを開けると、そこには海斗が立っていた。


「なんかいい匂いがするんだけど…」


海斗はそう言って中を覗き込む。

美月はびっくりして言った。


「どうしたの?」

「望遠鏡を取りに来たよ」

「あっ!」


美月は小さく叫んだ。美月は料理の事で頭がいっぱいで望遠鏡の事をすっかり忘れていた。


「忘れてただろう? 用意してくれたら車で先に運んでおくよ」

「すっかり忘れてた! ありがとう」

「中に入ってもいい?」

「もちろん、どうぞ」


海斗が中に入ると、そこは小さなダイニングキッチンだった。

手作り風のカウンターの上にはいくつかの料理が既に完成していた。

ドアを開けた瞬間、いい匂いがした理由はこれだったのだ。


使いやすそうに整理整頓された小さなキッチン。カウンターの横には円形の小さなダイニングテーブルがあり、椅子が二つ置い

てある。

テーブルの上には、可憐な花が入った花瓶とノートパソコンが置かれていた。

その時海斗はカウンターの上の作りたてのローストビーフを目ざとく見つけて言った。


「おっ! 味見したいなぁ」


その言葉に、美月はローストビーフの端を切り落として皿に入れ、手作りソースをかけてから「どうぞ」と言ってテーブルの上

に置いた。

海斗は、椅子に座ると「どれどれ」と言って食べてみる。


「うまいっ!」


海斗はあまりの美味しさに感嘆の声をあげた。

そこでもうちょっと食べたいといった顔をしていたが、美月はぴしゃりと言う。


「残りは後でね」


海斗は残念そうな顔でがっかりしていた。


「望遠鏡は向こうの部屋なの」


美月は奥の部屋に入って行く。

海斗も美月に続くと、その部屋にはベッドとソファー、アンティークチェスト、デスクがあった。

デスクの上には彫金で使う道具がきちんと並んでいる。

そしてチェストの上には美月が好みそうな素朴な雑貨がいくつも飾ってあった。

そこに桜貝が入った小瓶があるのを見つけた海斗は、思わず微笑む。


窓は優しい色合いのインド綿でカバーされ、その柔らかな布を通して優しい光が部屋に差し込んでいる。

照明器具もアンティーク調のもので部屋の雰囲気と調和している。

そこはアパートの中の部屋とは思えないほど隅々までセンス良くまとめられていた。


「居心地が良さそうな素敵な部屋だね」


海斗が褒めると、


「ありがとう」


美月は恥ずかしそう礼を言った。

そして分解してベッドの下に置いてあった望遠鏡を引っ張り出すと、


「これなの」


と言って海斗に渡した。


「あ、あとカメラとパソコンも持って行っていい?」

「いいけれど、何に使うの?」


美月の話では、SNSの天体写真グループに撮った写真をすぐにアップする為らしい。こういう天体イベントがある時は、皆撮っ

た写真をリアルタイムでアップするのが習わしだそうだ。


「じゃあ、これは全部俺が運ぶから、君は料理に全集中で!」


海斗がふざけたように言うと美月はクスクスと笑いながら、


「ありがとう」


と言って料理の続きを始めた。


海斗は車まで何度も往復して機材を運んだ。運びながらご満悦のようだ。

それもそうだろう。初めて美月の部屋に入り彼女の暮らしぶりを覗く事が出来たのだ。嬉しい訳だ。


その時、美月が慌てて階段から降りてきて言った。


「これも先に持って行ってもらっていい? 冷蔵庫で冷やしておいてくれると助かります」


美月は海斗に密閉容器に入った冷製スープとサラダを渡した。


「了解!」


海斗は荷物を運び終えると、車でマンションへ戻って行った。


アパートに残った美月は、残りの料理を仕上げて容器に入れすぐに持って行けるよう準備した。

時計を見るとちょうど15時半になろうとしていたので美月は着替えてからメイクを直し、その後荷物を持ってアパートを出

た。


海斗のマンションへ向かって歩いていると、ちょうど曲がり角で亜矢子夫婦と合流した。

すると亜矢子の夫の浩が笑顔で挨拶をする。


「美月ちゃん、久しぶりだね!」

「浩さん、ご無沙汰しています。すごく久しぶり!」

「美月ちゃんのお父さんの告別式以来かな?」

「そうです。その節は色々とありがとうございました」


浩とはもうかれこれ10年以上の付き合いだ。

亜矢子がOL時代に浩と付き合い始めてすぐに紹介されたので、それ以来ずっと兄のように慕っている。


「美月、今日は楽しみだねー」


亜矢子がルンルンして言った。


「あれ? 亮君は?」

「有名人の高級マンションに行くのに連れて行けるわけがないわよー。だから今日は実家で見てもらってるの。その方がじじば

ばも喜ぶしね」


そこで浩も言った。


「初対面だし、最初は大人だけで……ね」

「有名人の自宅に入れるっていうだけで、私もう気がおかしくなりそうだわ!」


亜矢子が叫ぶように言ったので思わず美月は笑った。


「僕も緊張するなー!」


浩まで大袈裟に言う。


「浩と沢田さんは年が近いから話が合うでしょ、きっと」

「そうだといいなー」


そして三人は海斗のマンションへ入って行った。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

5

ユーザー

緊張もあるけど3人ともワクワクですよね~😆 海斗さんは美月ちゃんにますますベタ惚れですね!🤭

ユーザー

2人の会話に敬語がなく自然やった🤭💖 お料理上手にグッ💘 お部屋のセンスにググっ💘 美月チャンへの想いが止まらへんね🤭💖💖💖 ぁあ〜ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。🌕️スーパームーンパーティー✨楽しみぃ⤴️⤴️⤴️🍀🍀🍀

ユーザー

美月ちゃんは遠足に行く子供のようにウキウキして早起きし、海斗さんも 美月ちゃんのお部屋初訪問&手料理お味見でニッコニコ....😆💓🎶 スーパームーンパーティー🎉楽しみだね~✨🌕️✨♥️ 二人の距離が また更に近づきますように🙏🌠

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