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感情が声色にでないよう、ゼナ博士の返事を待たず僕は通話を終了した。
二秒か、三秒。間を開けて――、僕は深呼吸をする。
感情を切り返ろ。誰の役にも立たない感傷に浸る前に、今、自分がやらなきゃいけない仕事を思い出せ。
そう、シロテブクロだ。
あの見るからに無害そうな怪異をどうするか、レポートをまとめ組織の連中に見解を伝えねばならないのだ。
僕は少し考えこむ。
ゼナ博士の言葉が妙に引っかかる。
存在に対する責任、と言う言葉……。
昨日、キミカにはきつめに釘を刺しておいたとは言うものの、あのシロテブクロという怪異から何ら脅威を感じなかったのも事実だ。
と言うか、悪意と言う感情を抱いたことさえないのではないか、とさえ思えた。
ちらり、と僕は机の上――パソコンの隣に置いてある箱を見る。
特殊な塗料で黒く塗られ、金色の筆文字で真言が書き込まれた手のひらサイズの箱。
できれば、街中であんたを使うのは避けたいんだけどな。
しかし、いざと言う時に備え、身を守る手立ては用意しておかなければならない。
とは言え……。
思考が出口の見えない迷路に迷い込む。
と、軽い頭痛を覚え、僕は額に手を当てた。眉間には深い皺。子どもの頃からの癖で長考状態になると僕は無意識のうちに身体のあちこちを強張らせてしまうのだ。
僕は深く息を吐き、チェアーの背もたれに大きく上半身を傾ける。
「ま、何にせよあいつが発生した背景を知る必要があるな……」
そう呟いた時、腹の鳴る音が聞こえた。
そう言えば今日はまだ、昼飯をすませてなかったっけ……。
確か、このネカフェの近くにハンバーガー屋があったはず。
もう一度大きくため息をつき、僕は椅子の背もたれにひっかけておいたデイバックをつかみ取る。そして、その中に箱を――塚森家に伝わる秘術を用いてこしらえた外法箱を突っ込んでいた。
#和風ファンタジー
#伝奇