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安藤◯信さん✨ニヒルでイケメンな俳優さん似ですね😊👍 それとウエディングドレスはプロの意見ではなくて「凪子さん」だけの意見を聞きたいのでは〜❣️⁉️🤭
その時、凪子の表情が一瞬翳ったのを信也は見逃さなかった。
「どうかした? 何かあったのか?」
「ううん…なんでもないわ!」
「隠すなんて随分と水臭いじゃないか! 俺は過去にお前の恋愛相談まで聞いてやっていたんだぞ……」
「フフッ、それには感謝しているわ!」
「話して楽になるかもしれないぞ? 言ってみろよ!」
信也はそう言ってコーヒーを口に含む。
「浮気よ…」
「浮気? 旦那がか?」
「まだ確定じゃないけれど、女が『匂わせ』をしてくるのよ…」
「『匂わせ』? どういう?」
「夫のワイシャツに香水を擦りつけて来たり、車のシートの角度をずらしたり…よくある安っぽい手よ」
「確かに安っぽいな…でも、だったら大した女じゃないんだろう?」
「うん…でも、なんかムカつくのよ、そのやり口が!」
「ふーん、で、どうするんだ?」
「徹底的に闘うわ!」
「ハハッ、そうくると思ったよ」
信也は笑いながら、また一口コーヒーを飲む。
「でもまずは、ちゃんと調べて証拠を掴みたいの」
「興信所、紹介してやろうか?」
「あら、ツテがあるの?」
「ああ、あるよ。俺も以前酷い目にあったからなぁ」
「ああ、アレね! あなたの子供を妊娠したーとかいうやつね!」
「うん…結局調べたら別の男の子だったけれどな。俺は避妊でヘマなんてしないからおかしいと思ったんだよ」
「フフッ、あの時は災難だったわね! でもね、大丈夫。親友の旦那さんが弁護士なのよ。だから興信所はそこへ頼むわ」
「そうか! だったら色々頼りになるな! 証拠を掴んだ後は? 別れるのか?」
「黒だったら別れるわ!」
「これまた潔いねぇ…でも、旦那に未練はないのか?」
「それがないから不思議なのよ。もっとショックを受けたり取り乱すのかなって思ったんだけど、そういうのが全然ないの。
これってどういう事?」
「ハハッ、そんなの俺に分かる訳ないだろう? で? 相手の女はどこの奴?」
「同じ会社! 派遣の女!」
「ヤバいな、そいつ、凪子にロックオンされちまったのか! でも派遣ならそのうちいなくなるんじゃないか?
放っておけよ!」
「それは無理! 妻のプライドよ! 人のものを欲しがって横取りして優越感に浸りたがる女には、鉄槌を下さないと!」
「おーっ、こわっ! 凪子に睨まれたら終わりだな! でもほどほどにしろよ。じゃないとお前が傷つくんだからな…」
その言葉を聞いた凪子は、思わず信也の顔を見る。
(私が傷つく?)
「何をポカンとしているんだ? とにかく、お前はこうと決めたら突き進んで自分を犠牲にする所があるからな…
だからもうちょっと自分を大切にしろって言ってるんだ!」
「ん、分かってる…」
そこでプライベートな話題は終了した。
そこからは、凪子が持ってきたデザイン画のラフスケッチを
信也が一枚一枚チェックしていく。
信也は長い脚を組んでゆったりとソファーに座っている。
今日の信也は、細身のデニムに白いTシャツ、その上にはグレーの麻のカーディガンを羽織っていた。
信也は、ゆるくパーマをかけた髪を時折かき上げながら、デザイン画に細かいダメ出しをしていく。
それを凪子はしっかりとメモに記す。
信也がパーマをかける理由は、『楽だから』。ただそれだけらしい。
身長が182cmあり、スタイルの良い信也は顔もモデルのような端正な顔立ちだ。
くっきり二重に彫の深い顔立ちは、
遅咲きでブレイクしたモデル上がりの安藤利信という俳優によく似ている。
そんな魅力に溢れた信也と凪子がこうして男女を超えた友人関係を続けられているのも、
仕事を通じて互いにリスペクトし合い、必要以上にお互いのテリトリーに入り込まないというルールを
守っているからだろう。
凪子は、昔からプレイボーイの男には本気の恋はしない主義だし、信也も仕事関係の女には手を出さない主義だ。
双方、きっちりと境界線を守ってきたので、こうして公私ともに良い関係を続けていられるのだった。
全てのデザイン画のチェックを終えると、信也が聞いた。
「コーヒーもう一杯飲むか?」
「うん、いただく!」
「せっかくだからプリンも食うか!」
信也はそう言うと、おかわりのコーヒーとプリンを持って来てくれた。
プリンは、凪子の手土産だ。
今評判の行列が出来る店のプリンを一口食べた二人は、
「「とろけるっ!」」
と同時に言い、思わず声を出して笑う。
そして、絶品のプリンを食べながら信也が言った。
「今度さ、うちでウエディングドレスも始める事になったんだよ」
「えっ? そうなの? 去年からパーティードレスを始めて順調だとは思っていたけれど、いよいよウエディングドレスも?」
「そう……でさ、今度意見を聞かせてもらってもいいかな?」
「もちろんいいわよ。でも、あなたの恋人とかガールフレンドに聞いた方が手っ取り早いんじゃない?」
「素人はダメだよ。やっぱりプロの意見が欲しい!」
「そういう事ならいいわ」
「じゃあ、今度時間が取れたら連絡するよ!」
「オッケー!」
凪子はそう言ってプリンを食べ終えるとコーヒーを飲み干した。
「そろそろ会社に戻らなくちゃ。じゃあ今日はありがとうございました」
「おうっ、お疲れ」
「じゃあ失礼しまーす!」
凪子は食べ終わったプリンの容器とコーヒーカップをキッチンのカウンターまで運ぶと、
信也に手を挙げてから玄関へと向かった。
そしてすぐにドアが閉まる音がした。
「あいつ…旦那が浮気しているっていうのに、随分と元気だな…」
信也はそう思いながら、最後の一口をスプーンですくい口へ運んだ。