TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

無名の灯2

一覧ページ

「無名の灯2」のメインビジュアル

無名の灯2

25 - 第25話

♥

21

2025年07月08日

シェアするシェアする
報告する

暗がりのなか、蓮司の指先が肌の上を撫でていた。服の布地越しなのに、そこだけが異物のように熱く、ざらついて感じられる。


(やめろ、って……言えよ)


頭の奥で誰かが叫んでいるのに、声は出なかった。

ただ、吐く息がひどく浅くて、胸の奥で小さく詰まる。


手首を押さえられた。

ゆるやかな力。でも、逃げようとすれば、確実に止められると分かる力加減。


爪の先が、首筋にかすった。

びくんと肩が跳ねた。

──反応してしまった、と思った。


(ちがう、ちがう……)


喉の奥が熱い。

なにかを吐き出したくて、でも吐けなくて、

ただ奥歯を強く噛みしめた。


身体のどこかが、震えていた。

どこかが、もう慣れてしまったように、受け入れようとしていた。


(俺の身体が……勝手に)


それがいちばん気持ち悪かった。

他人の手を受け入れようとする自分の皮膚が、骨が、呼吸が──


「ほら、もう逃げない」


蓮司の声が、皮膚の裏に染み込むように響く。


「壊してほしいんでしょ、どうせ」


笑ってる。

優しい声色で、いちばん冷たいことを言う。


「おまえのこういうとこ、ほんと、すぐ反応するよな。おもしろいくらい」


また触れられる。

今度は腹の下。布の上から、輪郭をなぞるように。


跳ねそうになった。

でも、動けなかった。


そのまま、自分の内側に向かって、どこまでも沈んでいく感じ。


(お願いだ、壊すなら──壊してくれ)


(全部、なくしてくれ)


そう思っていることすら、嫌だった。


この作品はいかがでしたか?

21

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚