テラーノベル
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『らだぁ、テスト100点ばっか!! すっげー!!』
『ちょっ、し、静かにしろってば…!!』
小学何年生の頃だっただろうか。もうはっきりと覚えていないけれど、きっと高学年ではなかった。低学年の、まだほんの2年生とか3年生の頃だった気がする。
『何で? みんなに自慢すればいいのに』
あの時のらだぁは、いつも満点ばかり取っていた。まあでも、それでも小学校のテストなんて8〜9割はとっておかないと将来困るだろう。
それで自身はと言えば、6〜7割程度だった。もう少し頑張れば良かったものの、どうも追い上げが効かなかった。
『嫌だよ、恥ずかしい。それにそんなすごくないから』
だから、どこか決定的な違いがあるんだと自身は小さい頃から思っていた。ただ、違いがありすぎてわからなかった。
何を伸ばすべきで、今は何を一旦置いておくべきか……小さいなりに、難しかった問題だ。いや、きっと大人になった今でも難しい。
『恥ずかしくないよ』
でも、やっぱりあいつは決定的な”夢”があった。それでいて、あいつのどこか反発したい気持ちも、子供心ながらに見えていた。
きっと、苦しかった。
『だって、らだぁが頑張った証拠じゃん』
その道のりを越えるためには、きっと、”夢”が必要だった。どんな夢でも良かった。
教師になるでも、心理学者になるでも、オリジナルのお菓子を作りたいでも、夢を与える立場になりたいでも。
どんな大雑把な夢でも、きっとそれは世界のどれよりも素敵なものだから。
『みんなよりもたくさん勉強して、たくさん予習と復習ってやつをしたんでしょ? だったら、恥ずかしがるようなものじゃないじゃん』
───もし過去に戻れたとして、あの選択が正しかったと言えるのだろうか。
自身が思うに、それを答えるためにはきっと、エンドロールまでを見なければ分からないことだ。
『……天乃に褒めて欲しくて』
『へ?』
ふと言われたその言葉が、どうも胸の奥を温かくした。瞬時に溶けていく氷が、こうも脆かったのかと気づいたようだった。
『……ううん、何でもない』
だだ、その事実をもう少し早く知っておきたかったと、あれほど強く思った日はなかった。
なぜか、なんて、自分にはとうに分かり切っている。
(……俺も、らだぁに褒められたかったな)
低学年ながらにそんなことを思っていて、大人ぶりが下手くそな自分がこうも笑えるとは思わなかった。
───あの日の放課後にやるべきことをやるのだと、すでに決めてしまっていたのだから、そう思うのも仕方ない。
……………
「絵斗兄やん、すんませんけど荷物持ってくれます?」
「ああ、全然大丈夫! もっと刑事を頼りな!!」
子供の手には少し大きい本を、片手に収める。
思うように動く体がどうも自分の体じゃないようでいまだに慣れない。特に、首から上の動きが。
(…あんま動かせないしなぁ)
勢いよく首を振ってしまえば傷口が開くと、お医者さんに忠告されたばかりだ。
ここに立てている時点で奇跡なのだから、無駄な行動はしないよう気をつけているつもりだ。
(…………苦しい、ねえ)
呂成太に言われた、”苦しい”とは、俺なんかよりももっと辛い人のことを指す。
例えるならば、そう───らだぁ、とか。
けれど、確かに。覚えられていないのは少しだけ苦しいかもしれない。
でもそれよりもいいことがあれば、辛いことなんて瞬時に吹き飛んでしまうものなのだ。
(らだぁはきっと、思い出さない方がいい)
それならばきっと、忘れていること自体が、”それよりもいいこと”なのだ。
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コメント
1件
うわあああ…第4話、胸がぎゅってなったよ😭💕 子供時代のらだぁと天乃くんのやりとり、めっちゃ尊い…!「天乃に褒めて欲しくて」って、あの照れくさそうな感じがもうエモすぎるよ〜!! 今の天乃くんが「俺もらだぁに褒められたかった」って思うシーン、切なさと温かさが混ざって泣ける…。 「忘れてること自体がいいこと」って台詞、深いなあ。2人の関係性がじわじわ沁みる回だったよ🌸✨