ホームセンターから保育園まではすぐだった。
岳大は保育園の前に車を横付けにしてくれたので、優羽は車を降りてすぐに園舎に入る。
「すみません、森村です。遅くなって申し訳ありません」
優羽が大きな声で叫ぶと、奥から保育士が出て来て優羽に言った。
「大丈夫ですよ。流星君おとなしくいい子にしていましたから」
保育士がにこやかに答えるその後ろから、
流星がものすごい勢いで走って来て優羽に抱き着いた。
「お迎え遅くなってごめんね」
「ううん、だいじょうぶだよ。ぼくちゃんとおりこうにまっていたからね」
流星はそう言いながら、そのつぶらな瞳にはうっすらと涙が滲んでいる。
今まで遅くなった事など一度もない優羽が遅れて来たので不安だったのだろう。
園児が誰もいない中一人寂しく待たせていたのかと思うと、優羽は切ない気持ちで一杯だった。
そして流星をギュッと抱き締めながら「ごめんね」ともう一度言った。
「さあ帰りましょうか。先生にご挨拶して。先生、ありがとうございました。さようなら」
「せんせい、さようなら!」
「流星君さようならー」
流星は途端に笑顔になり、優羽の手をしっかり握ったまま元気に挨拶をした。
手を繋いだ二人が玄関を出ると、すぐ傍に岳大が立っていた。
どうやらずっと二人の様子を見ていたようだ。
岳大を見た流星は嬉しそうに岳大に駆け寄る。
「たけちゃんもおむかえにきてくれたの?」
「おりこうに待っていたんだね、偉いぞ! 今日はたけちゃんの車で帰るからね」
「たけちゃんのくろいくるまにのれるの? わーい!」
岳大の言葉を聞いた流星は、飛び跳ねて喜んだ。
それから優羽と流星は岳大の車の後部座席に乗り、二人がきちんと座った事を確認すると岳大は車をスタートさせた。
そのまままっすぐ山荘に帰るものと思っていた優羽は、車が違う道を走り始めた事に気づく。
その時岳大が言った。
「道の駅でソフトクリームを食べてから帰りましょう」
岳大の言葉を聞いた流星は「やったー!」と大喜びした。
優羽は岳大の予定が心配になり、
「お時間大丈夫ですか? お仕事関係の方がお待ちじゃないんですか?」
すると岳大は笑いながら言った。
「今日はもうすることはありませんよ。打ち合わせは終わりましたから」
岳大は全く問題ないという風に言った。
そして、三人が乗った車は町外れにある道の駅へ向かった。
道の駅に着くと閉館まではあと30分だった。
買い物や食事を終えた人達が建物から出て駐車場へ戻って来る。
その合間を縫って岳大は駐車場に車を停めた。
この道の駅は、優羽が東京へ行っている間に出来たので優羽はまだ来た事がなかった。
しかし岳大は何度か来た事があると言った。まるで岳大の方が地元の人間のようだ。
車から降りた三人は建物へ向かう。
流星は初めて訪れる道の駅キョロキョロと興味深げに見回している。
「ソフトクリームの前に、中を見てみますか?」
「いいんですか? 私今日始めて来たのでちょっと覗いてみたいです」
優羽は嬉しそうに言う。
そこで三人は建物に入って行った。
建物の中はフロアの中心部分の天井が吹き抜けになっており、その下はマーケットになっていた。
この地域に住む作家の工芸品や地元婦人部の方の手作り品、そして地の美味しい物が所狭しと並んでいる。
山葡萄のつるで編んだカゴやちりめん細工の人形、陶器や木彫り細工などが並んだ店を、
優羽は興味深げに見ていった。
しばらくして、手を繋いでいたはずの流星がいつの間にかいなくなっている事に気付く。
夢中でマーケットを見ているうちにうっかり手を離してしまったようだ。
優羽が慌てて辺りを見回すと、流星は岳大と手を繋ぎ少し先の角の店を見ていたのでホッとする。
優羽は一通り店マーケットを見て歩いた後二人と合流した。
すると流星の手には何かが入った紙袋が握られている。
「流ちゃん、それどうしたの?」
「これ? たけちゃんがかってくれたの! きでできたでんしゃなの!」
流星は満面の笑みで答えた。
優羽はびっくりして岳大に言った。
「すみません。お土産まで買っていただいて」
「いえいえ気にしないでください。これは流星君と友達になった記念なので」
そう言って笑った。
「よし! じゃあ閉館になる前に急いでソフトクリームを食べるぞ」
岳大がそう言うと、
「やったー!」
と流星が飛び跳ねて大喜びをする。
そして二人は手を繋いで外の売店へ向かって歩き始めた。
コメント
4件
既に岳大さん流星くん親子だよね🧑🧑🧒
流星くん🥹ほんっまに素直で可愛い🥹 いつもおりこうさんにしとるご褒美🍦🎁 良かったね(*´艸`*)💕
私もそう思いました〜🥹 ホントの親子みたい🤎🩵🩷 流星くん大喜びでしたね〜( ☝🏻^∀^ )☝🏻オマケのソフトクリーム付きだし いつか、ホントの親子になるといいな〜